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それぞれの戦い①

今回は少し短めです!

誤字脱字ご注意願います

魔導戦艦 《レギュオン》を護衛する第一機動護衛艦隊は現在、高知県から南へ200キロ沖の太平洋を進んでいた。


艦隊は、護衛対象である《レギュオン》を中心に、補給艦と輸送艦を取り囲むように護衛艦が布陣している。ヘリコプター搭載護衛艦の《かが》や、各護衛艦からは、SH-60Kがひっきりなしに離着陸を繰り返し、哨戒任務へと就ている。


また、それでも哨戒ヘリの数が少ないため、輸送ヘリであるV-22 《オスプレイ》に対潜兵装を装着し、同じく哨戒を行わしている。


数日前、中国軍の原子力潜水艦が太平洋に出没している、との情報は得ていたため、用心に越したことはない。


「平和だな。さっさと東京へお送りしたいのだが……」


「油断は禁物です艦長、潜水艦サメはいつでも海中から我々の足を噛みつこうか様子を伺うものです」


「分かった。哨戒ヘリ各機に、対潜警戒を厳とせよと伝えよ」


「了解しました」


艦隊の前方50キロメートルを飛行するSH-60Kが投下した対潜水艦用捜索機器であるソノブイが、不審な音源を探知した。


「おい、今なにか反応したぞ?」


「確認します……ソノブイNo.2が音源を探知しています」


「投下地点の方位、距離を報告しろ!」


「艦隊進行経路から方位0-2-0、距離40キロ!」


「スモークマーカー投下!」


潜水艦がいる海域に向けて、特殊な煙幕を焚くマーカーを投下する。投下されたマーカーから、肉眼でも確認できる赤色のスモークがもうもうと上がる。


この潜水艦発見は、すぐに艦隊旗艦であるイージス艦 《あかほ》のCICへと報告される。


『こちら哨戒ヘリ1、中国潜水艦と覚しき音源を探知』


「!?」


「艦長?」


「位置はどこだ?」


『艦隊前方40キロ、水深400メートルを潜航中』


「了解した。引き続き哨戒を続けてくれ」


『了解、通信終了』


さてと、と一息ついた篠崎は、艦長席から立ち上がると、通信士から無線を受け取る。


「第一機動護衛艦隊総員に告ぐ、こちらは旗艦 《あかほ》の艦長篠崎だ」


篠崎は無線機を握り、真剣な顔つきで口を開く。


「艦隊前方に潜水艦を発見した。総員、合戦用意、対潜戦闘準備にかかれ」


「聞いたな?総員戦闘配置につけ!」


永倉が復唱し、隊員たちは駆け足で持ち場へと急ぐ。永倉も、砲雷長である塚本と共にヘルメットとベストを着用しに行く。


ふと、永倉が横を見ると、塚本がずっとロッカーの写真を眺めていた。それは、地元に残した自分の家族の写真であった。


「永倉さん」


「ん?なんだ、写真なんかに入り浸りして」


「こんな噂聞いたことあります?冷戦期のキューバ危機、海上封鎖したアメリカ海軍に対して、ソ連の原子力潜水艦が核魚雷を撃とうとしたってこと」


「まさか、中国原潜にも核魚雷が搭載されているって、お前は言いたいのか?」


「もちろん憶測に過ぎませんが、今は戦争中です。誰が何をしても許される」


「憶測は限界を知らない。常に最悪の事態を想定しておくものだが、無駄な心配は無駄な浪費だ」


「分かりました」


戦闘準備を整えた永倉と塚本は艦橋へは戻らず、戦闘指揮所であるCICへと向かった。


CIC、またの名を戦闘指揮所(Combat Information Center)と言う。現代の軍艦における戦闘情報中枢のことである。レーダーやソナー、通信などや、自艦の状態に関する情報が集約される部署であり、指揮・発令もここから行う。また、航空母艦においてCICに相当する部署は、CDC(Combat Direction Center)と呼ばれる。


《あかほ》のCICは、同時に捕捉・追跡可能な目標は128以上といわれ、その内の脅威度が高いと判定された10個以上の目標を同時迎撃できるイージスシステムの中枢でもある。


「報告!現速度あと五分で目標海域に接近!」


「艦隊陣形をレギュオン中心に単横陣にしろ。進路そのまま、速度を25ノットに減速しろ」


「進路そのまま25ノット、ヨーソロー」


「レギュオンから通信、我、旗艦隊の指示に従うと」


「了解した。進路そのまま、速度を我が艦と合わせてくれと伝えておけ」


「了解!」


艦隊は魔導戦艦 《レギュオン》を中止に、横一列に並ぶ。砲雷長の塚本が、無線を手に取り声を張り上げる。


「対潜戦闘用意!前部VLS15番、諸元入力」


「了解、入力開始します」


砲雷科の隊員が、火器管制装置に対潜ミサイルの発射位置などの諸元を入力する。


「入力完了しました!VLS開放!発射秒読み10秒前!」


誰もが心の中で時を刻んでいる中、塚本は篠崎に向けて口を開く。


「撃ちますよ、艦長?」


「構わん、責任は私が取る」


「分かりました。撃ちーかたー始め!」


「発射!」


塚本の指示で、《あかほ》の前部甲板にあるVLSの蓋が開放され、凄まじい音を立てて対潜ミサイルのアスロックが発射される。


「アスロック、目標ポイントへ向け飛翔中…………目標ポイントへの着水確認しました!」


「自律追尾開始!」


「Mk45、目標捕捉。目標までの距離300!」


「中国原潜より魚雷発射音確認!」


欺瞞魚雷デコイです!Mk45、目標を逸れ、魚雷に急速接近中!」


ソナー員が耳を澄ます。


「破裂音確認、されど水中圧壊音確認されず」


「外れました」


ソナー員からの報告に、篠崎は少しも表情を変えず、むしろ「やはり、簡単には殺らせてくれないな」とぼやいていた。


「中国原潜から多数の反応!ミサイルが発射されました!」


「対空戦闘用意!取り舵20度!第二船速!」


「とーりかーじ!ヨーソロー」


篠崎の的確な指示で、艦隊は左側へと進路を変更する。


「砲雷長!各艦とミサイルを迎撃せよ!」


「了解!」


「敵対艦ミサイルのシーカー波を探知、ロックされています」


「発展型シースパロー発射準備!」


「各艦に最適迎撃目標を割り振りました!」


「後部VLS解放、イルミネーターリンク!インレンジ5秒前! 」


「4.3.2.一斉発射サルヴォー!」


VLS搭載の護衛艦から3発ずつ発展型シースパローが発射される。4隻の護衛艦から一斉発射された発射型シースパローは、艦隊に向けて迫る対艦ミサイルへと飛翔する。


『第一目標撃墜、第二目標6接近中』


「護衛艦、CIWS右舷AWWオート、撃ち方始め!」


「撃ちーかたーはじめっ!」


《あかほ》の右舷に展開していた《はやて》《りゅうじょう》《ふるたか》の近接防御兵器であるCIWSが、シースパローが撃ち漏らした残りの対艦ミサイルを撃墜する。


「もう一度攻撃だ!」


「了解!再度アスロック発射準備!」


「哨戒中のSH-60Kとのリンク完了!」


「よし、今度は外すなよ……撃て!」


再び、《あかほ》からアスロックが発射される。先ほどの《あかほ》による単艦誘導とは違い、潜水艦の直上を飛行する哨戒ヘリの誘導により、デコイを回避する。


「命中まで5、4、3、2、1……圧壊音確認!」


「報告!1610、敵潜水艦撃沈!」


「艦長、自衛艦隊司令部より通達。国連から日中両部隊に停戦命令が発令されました」


「わかった。全艦に通達、対空・対潜・対水上見張りを減となせ、我々はこれより戦闘を中止するが、攻撃があった場合のみ反撃を許可する」


一方、《レギュオン》の艦橋で、初めての異世界の海軍の戦いを間近で見ていたシヴァやルーラは、目の前で繰り広げられる異世界の戦いに目を奪われていた。


あの発射されたものはなんだ!


巧みな操船技術、それに主砲を使っていない!


艦橋は異世界の軍艦に対する疑問で溢れかえっていた。


興味を示したのは、《レギュオン》の艦長であるシヴァも同じだった。


我々の戦いより、彼らは20年以上先を行っている。


彼の頭には目の前の戦闘が、自分たちが持つ戦闘技術の20年先を行っていると言う事でいっぱいだった。艦橋にいたシヴァやルーラ、その他の水兵たちの思うことはただ一つ。


彼ら(カイジョウジエイタイ)を敵に回すべきではない。


「あれが、彼らの言っていたミサイルですか?」


ルーラが、垂直に発射される白い光の矢を見て口を開く。


「恐らくな。彼らは、魔法ではなく科学の力を持って、その戦いを確立させている」


「もしもの話、我々セルジュオン連合海軍がカイジョウジエイタイと戦った場合、勝率は?」


「ゼロに等しいだろう。彼らは、我々の目視外から攻撃することが可能だ。確かに、我々は彼らの敵が放ったミサイルと言う兵器を撃墜したが、あれは偶然だ。3発以上も撃たれていたら、間違いなく海の底だっただろうな」


「ニホンの能力、恐るべしです」


「いや、これで安心できる。彼らと手を組めば、あの帝国を退けることも、何の苦労もないだろうな」


「では、我々がしっかりと職務を果たさなくてはなりませんね」


ルーラはそういうと、目の前のイージス護衛艦 《あかほ》を、双眼鏡で眺める。


「本国は何と?」


「我々の交渉がうまくいけば、陛下自らこちらの世界へとやってくるらしい」


「えっ、陛下自らですか?」


「あぁ、聞く話によれば国は切羽詰まっているらしい。シルベリアを占領した帝国軍は、ディーヴァ海峡を渡ってユリシーズへと侵攻し始めたらしい。あそこを獲られると、我々は敗戦へまた一歩近づくことになる」


「ならば、急いでトーキョーと言う街に着かなければなりませんね」


「彼らがいれば道中は安全だろう。それまで任務に集中しようとしよう」


そう言ったシヴァは、少しも艦橋を離れて甲板へと出る。母国の葉巻を手に取ると、ゆっくりと口へと加える。


彼は、これから始まるであろう異世界を巻き込んだ戦争に、不安を感じながらも、日本に対する確かな期待を抱いていた。

次話は、与那国島での水陸機動団と中国軍との戦いを書こうと思います。

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