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ネゴシエーション①

久しぶりの投稿で、設定がおかしくなっている場合もあります。あらかじめご了承ください。また、少し短い内容となっております

「東京湾だ!」


第一護衛機動艦隊に所属する護衛艦の乗組員たちは、久しぶりの帰港に心を震わせていた。しかし、彼らの母校である横須賀港のある東京湾はいつもと違っていた。


東京湾の至る所に、海上自衛隊や米第七艦隊のイージス艦や駆逐艦が浮かんでいる。空には埋め尽くすほど多くのヘリが飛び交い、陸には何万という人だかりができている。海岸沿いには、万が一に備えてか陸自の10式戦車や96式多目的誘導弾システムが配備されていた。


そう、彼らの目的は異世界からやってきたと言われる魔導戦艦 《レギュオン》であった。報道陣や野次馬で溢れかえった港は、出動した神奈川県警機動隊と海保の職員によって何とか押さえ込まれていた。


艦橋から双眼鏡でその様子を見ていた篠崎は、予想外の事態に少しパニック状態となる。


「そ、想定外だった。こんなに大事になるとは……」


「それもそうでしょう。何せ、異世界からやってきた戦艦ですよ?見ようとしない方がおかしいです」


「さて、どうする?米国は、正式な交渉が約束されているから手を出して来ないと思うが……」


「なら、思いっきり乗り込みましょう。艦隊司令部からも、特に命令に変更はありませんし」


それでもなぁ、と篠崎がぼやいていると、衛星電話からホットラインで着信が届く。


「第一護衛機動艦隊旗艦 《あかほ》の篠崎です」


『おぉ君か。私だ、御堂だ』


電話の相手は、海上自衛隊自衛艦隊司令部の司令官、御堂みどう晴夫はるお海将だった。


「御堂司令。現在、我々はセルジュオン諸王国連合海軍の魔導戦艦 《レギュオン》を東京湾まで護衛いたしました。これからの指示をお願いします」


『任務ご苦労、その戦艦とやらは横須賀港に入港の許可を得ている。逸見岸壁へと誘導してくれ。それと、中国との正式な停戦命令が国連から通告された。第一機動護衛艦隊の諸君には、少しの間羽を休めてもらうことになる』


「了解しました」


『では頼んだよ』


御堂との電話を切った篠崎は、通信員に《レギュオン》との交信を命令する。


『こちら《レギュオン》、ルーラ中佐です』


「《あかほ》艦長の篠崎です。これより、貴艦には前方200メートル付近に見える岸壁へと接岸してもらいます。よろしいでしょうか?」


『了解しました』


《レギュオン》は通信を終えると、逸見岸壁へ向かって進み始めた。全長260メートルほどの巨艦が、ゆっくりと岸壁へと接近する。その姿は、半世紀以上前の日本海軍の戦艦、《大和》に似ていた。


操船員の巧みな操船で、《レギュオン》は難なく接岸へと成功する。《レギュオン》に続いて、《あかほ》を先頭に第一機動護衛艦隊の護衛艦も接岸していく。


篠崎と永倉は約1ヶ月ぶりの内地へと足を踏み出す。横を見ると、《レギュオン》の搭乗口に向けて基地のタラップが向かっているのが見えた。しかし、《レギュオン》の乗組員はタラップの使用を拒否した。


どうやって降りてくるのか気になった永倉は、そこで思わぬ光景を目にする。なんと、戦艦自体が神秘的な青色に輝き始め、搭乗口から地面に向けて、階段のように五角形の光が現れる。乗組員たちはその光を踏み台に、地面に降りてきた。


「ナガクラ二等海佐、驚きましたか?」


「ルーラ中佐?いや、驚いたもなにも、どうやってあんな事が出来るのか興味が湧きます」


「あれは、魔導戦艦自体が持っている固有の魔力によって作動するものです」


「てっきり、アニメで見た無敵のバリアを持つ戦艦をイメージしましたよ」


「あ、アニメ?」


「こちらの世界で放映されているテレビ番組というものです」


「ぜひ、機会があれば見せていただきたい」


「いいでしょう。約束します」


二人がそんな話をしていると、パトカーに護衛された何台かの黒塗りの車が彼らの前へと移動してくる。中から現れたのは、現職の内閣総理大臣である岸辺正志、官房長官の木下純博、防衛大臣の梶原向陽、シルベリアの女王であるハイエルフのルーシア、ダークエルフで衛士のエルシアだった。


彼らの姿を見た海上自衛官、そしてセルジュオン連合海軍将兵たちは一斉に敬礼する。


「女王陛下よくぞご無事で!」


「その声はシヴァ・レームティン大佐か?こうして顔をあわせるのは観艦式以来かのぉ?」


「ご無事で何よりです女王陛下、我ら将兵一同、ご健全な姿を見て安心いたしました」


「ふむ、感謝するぞ大佐」


シヴァはおもむろに懐から筒を取り出す。それを受け取ったルーシアは、中に入っているのが宮殿からの親書であることが分かると、驚愕の表情を浮かべる。それが何か分からない岸辺は、ルーシアに問いかける。


「失礼を承知でお聞きします。ルーシア陛下、それは一体?」


「これは我がセルジュオン連合諸王国の最高位であるシアン様の親書であるのだが、特別なものでな。署名を入れれば魔法の力で陛下を呼ぶことができる」


「総理、御拝見を」


「うむ……」


ルーシアから親書を受け取った岸辺は、その内容をじっと見つめていた。暫くして、ルーシアに口を開く。


「署名は、どんな筆記用具でも構いませんか?」


「うむ、なんでも構わない」


岸辺はそれを聞き、胸ポケットにしまっていた万年筆を取り出し、自分の名前を書き込む。名前を全て書き終えると、親書が光り輝き、岸辺の手からひとりでに離れた。


空中に浮かんだ親書は細かく分かれ、そして光る鳥のような形を作り出す。鳥になった親書は、西に向けて飛び去った。


「驚いた、これも魔法か」


「妾も見たのは初めてじゃ、シアン陛下、高度な魔法である使い魔を使うとは、よほどの事とお見受けできる。急がねば……」


「総理、親書には何と?」


梶原が問いかける。


「ここに署名をした翌日、交渉のために日本にやってくると書かれていた」


「では、またあの転移門から現れる可能性が?」


「大有りだ。九州付近に展開している護衛艦隊は?」


「先島諸島で作戦を終えた第一護衛艦隊が、佐世保にいます。私にお任せしてもらえませんか?」


「分かった。頼むよ」


岸辺はそう言うと、ルーシア達と共に車へと戻っていく。梶原は、第一機動護衛艦隊の貴艦 《あかほ》艦長の篠崎の元へと近づく。


「篠崎さん。第一護衛艦隊は使節団を浜松まで護衛してもらいます。そこから、第一機動護衛艦隊に任務を移行し、再び横須賀まで護衛してもらいます」


「分かりました」


「では、今日はゆっくりとお休みになってください。《レギュオン》の皆様は、歓迎会のご用意ができています。後ほどお迎えが来るので、暫くお待ちください」


そう言った梶原は、岸辺達の待つ車へと戻っていった。

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