用事
全てが始まったのは蒸し暑い夏の日のことだった…
東京の小さなアパート
外の太陽の日差しは眩しく蝉がせわしく泣いていた
そんな世界と切り離されているかのような静寂と薄暗さが部屋にはあった
薄暗い中だがカーテンの隙間から入ってくる日差しのおかげでわずかながら部屋の中の様子がわかる
食い散らかしたゴミなどが見えた
ゴミ屋敷…には程遠いがまぁ酷い
ベッドでは1人の青年が大きないびきをかきだらしない格好をして寝ていた
「ぐがーっ…んがっ…………」
不意にいびきが止んだ
青年はゆっくりと目を開く
しかし起き上がろうとはしない
しばらく天井を眺めたまま動こうとはしない
静かに時だけが過ぎていく
ようやく青年は起き上がり伸びをした
「はぁー…」
青年はすぐ横にあった時計を見た
午前11時47分…もうすぐ昼だ
「またこんな時間か…最近は起きるのが遅すぎるな」
次はテーブルの上を見た
昨日飲み食い缶ビールと柿ピー
そうだ
昨日は友人と遅くまで家で飲んでたんだ
そんなことを思い出した
その時確か友人は何かを言っていた…とても大切なことだった気が…
「そだっ!」
思い出した
この後12時に一緒に出かける予定があった
気づいたら時計は11時50分…あと10分くらいで友人はここに来る
早く準備をしなければ…
とか思っていたらピンポーンとチャイムがなる
確実に友人だ
来るの早すぎだわ とか思ってももう遅いとりあえず無視し準備に専念する
服を適当に出し必要な道具をバッグに入れる
ものを食べる余裕はないがせめて歯磨きくらいはしておこうと思いちゃっと磨く
ちょくちょくドアの向こうから
「勇太ぁー」
と自分の名前を呼ぶ声とチャイムの音が聞こえる
今さらだが青年の名前は木村 勇太という
それすらも無視しようやく勇太は準備を終え玄関のドアを開けた
いきなりドアが開いたことで友人-中本 俊次は驚いた
勇太の息はきれハァハァと言っていた
「ど、どうしたんだよ…」
俊次はまだ動揺していた
「ハァ…済まん……じゃ行くか…ハァ」
息切れが直らない
相当なスピードで準備をしたから仕方ないと言えば仕方ない
腕時計で時間を確認してみると
11時58分
なんとか間に合っただけ良しとしよう