第一戦 -ぼっちであることを嘆くかどうかは自分次第-
こちらは第二話になります。
―憂欝だ。
「はあ」
こんな溜息をついたら友達か何かが「どうかした?」なんて話かけてくれるのがベタのはず。
「はあ」
「………」
結果、誰ひとり気にかけてもくれなかった。
わざわざ二回も溜息ついたのに。周りの奴らも僕が溜息を二回ついたことは分かっているだろう。
いや、こんなことになったのは、もとをただせばあいつの―皆川拓の―。
―ここは少年士官養成学校日本学園高等部、通称「士官学校高等部」
中等部から大学部まで存在するのだが、現在僕は高等部に在学している。
名前の通り、この学校は将来、士官となる優秀な軍人を育成する学校である。これも、米国による提案であり、各国と協力して学校を運営している。
高等部は、中等部からエスカレーター式で進学する者も、一般の公立中学から進学する者もいる。
とはいっても、まだ4月。入学して一週間しか経過していないのだが。
そして数年前、目まぐるしい兵器開発の中、「ムーヴメンター」という兵器が開発された。
それは、陸上をスケートのように駆け抜け、装着することで身体能力の向上を計ることが可能な、革新的な兵器であった。
しかし、戦争は起こらなかった。米国は兵器を様々な国と共有し、互いに友好的な関係を築くことに成功したのだった。
それにより、戦争は長らく起こっていない。国際連盟にも日本は参加し、平和維持活動に努めている。
各国と協力することにより、平和で強力な国軍を生み出すことに成功したのだ。
そして、今に至る。
まあ、説明はこの辺で切り上げさせてもらうが、とにかく僕は孤独だった。
士官学校といっても厳粛なのは制服の見た目と規律ぐらいで、教室での雰囲気は一般の高校とさほど変わらない。
…だからこそ、ぼっちが存在するんだが。
「はあ」
本当に憂欝だ。
一緒に入学試験を受けたはずの親友、皆川拓はまさかの落第。付き添いのつもりで受けた僕が合格してしまったのだ。
学費も政府が支給され、全寮制という、貧しい家庭に生まれた僕にはどうにかして食らいつきたい待遇だったため、結局入学してしまったのだが。
皆川は今頃、地元の青森の公立高校に通っていることだろう。
「次の時間の軍事教練では小銃の扱いを学習する。小銃を持つのは初めてだと思う。だから気を引き締めて訓練に臨め!」
「「はい!」」
まあ、こんな体育会系の雰囲気は否めないが。
それにしても、もう小銃の扱いを学ぶのか。
正直、楽しみだ。だが、あいつがいればもっと楽しいはずだったのに。
「さっさと着替えるか」
僕は一人呟き、更衣室に重い足取りで向かうのであった。