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プロローグ
カラン・・・
ちょっとした手の動きに反応した琥珀色のバーボンの内を泳ぐきらきらと光る氷とそれを包むガラスとがぶつかり合い、透き通った音を響かせた。
僕の隣の席には、さっきまでいた君のぬくもりがまだ残っている。
ついに僕は一人。
そう、また、・・・独り。
僕はこれから君なしの生活を始めよう。
ただ、戻るだけだ。君と出逢う以前の日々へと。
だけど、なんでだろう。今、僕は、君との思い出ばかりが頭をよぎる。
君の存在さえ知らなかったあの頃が、なんだか、とっても味気なく、奇妙な喜劇のようにしか感じない僕がいる。
僕はこれからどうやって生きていったらいいのかな。
今はそうしか思えない。
だけど、きっと僕は色を取り戻すだろう。
君という惑星をなくした地球(僕)を照らしてくれる新しい月が現れる、それまでの辛抱だから・・・。