用語集
物語も後編に入り、単語が増えてきました
ここで整理のためにも単語集を挟みます
①アンク
自立型術式形成人工積層宝玉。
外見は、直径1mくらいの半透明で硬質の巨大なガラス玉三つを三角形に並べた様な物。それぞれの玉は、僅かに触れるか触れないかくらいの所でひっついている。
皇国内の教会にも同様の形状の物体が置かれ、崇拝されている。だがそれらはレプリカであり置物に過ぎない。
膨大な魔力を消費するが、極めて高度な演算が可能。ある程度自立的に思考し、術式を形成して魔法を行使できる。
オリジナルはピエトロの丘にあり、改良型が量産体制にある。その一つがインターラーケン戦役で魔王軍に鹵獲された。
②インターラーケン
魔界中央に位置する巨大山脈。
地球におけるアルプス山脈に対応する。だが全く同一の地形ではなく、例えばジュネヴラは地球のジュネーブより500~600m高地に位置する。
その中央には広大な盆地があり、妖精達の暮らす里がある。現在は第十二子トゥーンが領主として治めている。
あまりに険しい峰が連なり、気温は低く空気は薄い。不用意に立ち入る者は魔王一族であっても命を失う。
セドルン要塞の入り口が存在する。
③エルフ
魔界北方の洋上に浮かぶダルリアダ大陸に暮らす種族。
外見は人間族に近い。背が人間族より高く耳が長い。賢く長命と名高い。
皇国から逃亡してきた実験体達を受け入れ、その強大な力をもって魔界平定を目指し、学者・官僚・軍師として仕える。軍師達の集まりは円卓会議と呼ばれている。
魔王第二子ルヴァンを統治者として受け入れた。彼の統治下、キュリア・レジスという都市を築き学術を発展させ、巨大図書館兼博物館セント・パンクラスを建設する。
ダルリアダは位置的には地球のイギリス、キュリア・レジスはロンドンに相当する。
技師集団であるドワーフとは、極めて仲が悪い。
④オーク
二足歩行する豚型知性体。
他種族と比較すると知能は高くない。大方の個体は魔法も使えない。力も強くない。寿命も短い。だが性格は素直で穏やか、とにかく多産で病気に強く何でも食べれる丈夫な消化器官を持つ。
これらの特徴から農夫として優秀であり、農奴として他種族の所有物扱いをされてきた。通貨や食料にもされた。
とにかく数が多く従順なことから魔王軍では歩兵として採用され、その圧倒的数から事実上の主兵力となっている。
兵としての活躍と農夫としての優秀さを認められ、現在では第八子リバスの庇護を受け、ルテティア南方の沿岸地域を中心として国家を築いている。
巨人族と仲が良い。
⑤巨人族
基本は人型だが、頭に角を生やし膨れあがった筋肉で覆われた巨体が特徴的。魔力はほとんどないが、巨体と筋力でそれを補う。
エストレマドゥーラ半島、その付け根に存在するパンプローナ山脈で主に暮らしている。
巨体とパワーを生かして土木建築を請け負うが、普段は放牧を生業としている。家畜は巨大な牛や熊といった、他種族ではとても飼えないモンスター並みの生物も多い。
現在は第六子であり第四王女、ティータン=パンプローナを女酋長と認め受け入れている。というよりは萌えている。
概ね穏やかな性格で、他種族との関係は悪くない。特にオークと仲が良い。だが巨獣の放牧には広大な放牧地が必要なため、決して土地を巡る諍いが無いわけでもない。
⑥ゴブリン
人間族より小柄で皮膚は緑色、声は甲高く耳障りな種族。魔法に長け目が良い。
元々はインターラーケン山脈南方のアベニン半島の中央にあるロムルスに暮らし、金貸し・両替商・行商を生業としていた。
四十年以上前、ナプレ王国の国王と契約を交わし、資金援助の見返りに街道の整備と警備・発行通貨の整理・商売敵の始末などを依頼した。
だがナプレ国王はゴブリンからの資金を用い半島南部の小国を次々と侵略征服。敵対する者は人間族も他種族も区別無く苛烈な虐殺と粛正を行った。
ナプレ国王によるロムルス侵攻を察知したゴブリン達は全ての資産を携えて逃亡。一時は魔界各地をさすらう流浪の民となった。
魔界統一時、魔王に財務官として登用される。報酬として魔王に魔界北方の浅瀬を埋め立ててもらい、第二の故郷としてブルークゼーレを建設する。
現在では第十子オグルを頭取としてブルークゼーレ銀行を起業、魔界経済を牛耳る。このため他種族からの反感も大きい。
海上都市ブルークゼーレは地球のブリュッセルに相当する。
⑦ドワーフ
人間族より背が低くガッチリした筋肉質。男女とも凄まじい剛毛、ヒゲ胸毛スネ毛。
種族としては大地信仰をしており、毛を剃らないのは宗教上の教義に基づく。
明確な領地は無く、魔界各地に鉱山と工房を有し、職能集団を基礎とした共同体を築いている。
各小集団が群雄割拠の魔界で自立した生活を営めるのは、ドワーフが極めて高品質の宝玉を生産加工出来るため。
種族としての魔力値は平均的ながら、それを補う高品質の宝玉と屈強な肉体による高い戦闘力を持つ。
性格は、とてつもなく頑固一徹で気難しい。だが同時に信義に篤く情にもろい。このため他種族との軋轢は多いが、信頼も信用もされている。
宝玉のみならず木工・石工・建築などに大きな力を発揮するため、他種族からの侵攻を受けることは少ない。
現在は第三子フェティダの下に各親方元締めが集い、寄り合いを結成している。
学者集団のエルフとは古来よりのライバル関係。
⑧人間族
地球のホモサピエンスとほぼ一致する。人種としては白人が多いが、黒目黒髪の東洋人系も存在する。
アベニン半島に暮らし、体力・魔力とも平均的。かつては多数の小国を形成して他国他種族と小競り合いを繰り返す平凡な種族に過ぎなかった。
四十年以上前、ゴブリン族から資金援助を受けたナプレ王による半島南部の統一と、その後継者による北部の小国併呑により、統一国家である神聖フォルノーヴォ皇国を成立させる。
国教としてアンクを崇拝する皇国国教会を設立する。
現在の首都は皇都ナプレ、王宮はその三万ヤード北にあるカゼルタ宮殿。
皇国の技術力は他の魔族に比して不自然に高く、他種族の完全抹殺を目指す著しい排他性と相まって、極めて謎の多い国家体制へと変貌した。
魔界とはインターラーケン山脈と東西の要塞を挟んだ冷戦状態が長く続き、交流は完全に途絶えている。
⑨宝玉
術式が描かれたもの。通常はコランダムなどの鉱物結晶に描かれる。
かつては結晶表面にしか描けなかったが、皇国では技術革新の末に結晶内部にまで描き込むことができる。
また、皇国では人工的に宝玉を製造する技術も確立している。
これらの技術により巨大立体術式形成が可能となり、皇国の国力は革命的に向上した。アンクはこの二つの技術から生まれた、魔力式スーパーコンピューター。
⑩暴走
この世界での暴走とは、思考や感情の制御を失い魔力が制御不能な状態に陥ったことを表す。
魔力は強い意志から生まれるため、思考や感情の暴走と共に本人の制御能力を超えた魔力が発生することになる。
術式によって制御されなかった魔力は体外に漏れ出すが、その際に魔力に触れた物体に無秩序な変化をもたらす。
大方は破壊・腐敗という形で現れ、術者の肉体を破壊して死に至らしめ周囲を破壊し尽くす。
暴走を止めるには術者の脳を一時的に思考停止させること、つまり眠らせればいい。一般の暴走なら素早く手を打てば止められる。
だが魔力炉の子供達の場合、漏れだし触れる物全てを破壊する高濃度の魔力に阻まれ、常人には近寄ることすら困難を極める。抗魔結界を用いるか、強力な魔力で身を包まない限り停止させられない、
⑪魔力炉
アンクのエネルギー供給源。
魔力は知性体の意思より生まれ、一部の宝玉と生命体内部にしか大量には貯蔵できない。このため知性体をエネルギー源としている。
だが通常の生物一体が体内に有する魔力量では絶対量が足らない。多数の術者を集めても、各自のコンディションに左右され安定した運用は出来ない。そもそも大量の術者をアンク運用にかき集めるのは、かえって非効率だった。
このため、魔力炉は当初、『集中力を高める』ための装置だった。だが被験者の魔王は魔力を暴走させ研究所を破壊し、他の実験体を奪取して逃亡してしまう。
次に開発された新型は、『対象を故意に暴走させ、漏れだした魔力を吸い上げる』という手段だった。
⑫妖精族
インターラーケンに暮らす魔族。
体格は大きくても日本の小学生高学年程度、背中に七色の光を放つ蝶の羽を持つ。
羽は魔法で生み出した擬似的な存在。何かに触れることも引っかかることも破れることもない。妖精の肉体を飛行させる力を生む。
妖精族は総魔力量自体は少なくないものの、その大半を羽を維持し飛行することに特化して消費している。そのため他の魔法は一通り使えるが、弱い。
肉体的にも魔力的にも直接的戦闘には向かない。そのため、これまでは他の魔族が侵入出来ないインターラーケン山脈内で他種族と接触をほとんど持たず暮らしていた。
魔王の魔界統一時、『自由自在に飛行できる、小柄で狭い場所にも入れる、頭も並み以上』等の理由から侍従や執事として勤めないか、と魔王から勧誘され、勤務することになった。
基本的に貧乏。
⑬リザードマン
古代から連綿と続く二足歩行型爬虫類。
リザードマンという名前はエルフが便宜的に使用する総称。実際には種族内でさらに細かく分類することが出来る。これは他種族も同様。
全身をウロコに覆われ、縦長の瞳孔を持ち、まぶたは下から上に開閉する。表情筋が無いため無表情。血液は青い。
より下位の爬虫類や竜と深く交流することができる。
また、種族全体としては古代の化石化した恐竜を崇める神竜僧院本山高僧会によって信仰上の統一がなされている。
このため竜騎兵を始めとした強大な軍事力と組織力を背景に、アベニン半島とは海を挟んだ対岸のパンノニア平原を中心とした巨大帝国を築いている。
現在は第一子ラーグンによる世俗面からの統治も受け入れ、彼の指揮下で巨大都市アクインクムを建設した。
冬眠はしない。
⑭ワーウルフ
二足歩行の狼。この名称もエルフが使用する総称がそのまま広まったもので、実際には多種多様な分類が可能。
リザードマン生息域より北方の、氷原地帯に近いポルスカ地方で遊牧生活を営んでいた。
魔力は高くないが肉体的には頑強で耳は良く、嗅覚が極めて優れている。また規律を重んじ、全種族中最高の統率力組織力を持つ。
ゆえに兵士・警官として最高の素質を秘めており、事実として魔王城近衛兵や魔王軍中核、各都市の警備を担当する。
現在は第七子ベウルがワーウルフ族全体を治める長として認められている。
ちなみに第七子はベウル=ポルスカという名を有しているが、ワーウルフ族は遊牧民であるため定住して街を築くことはなかった。
日々、ワーキャット族の適当さにムカついている。
⑮ワーキャット
魔界最南方、ワーキャットが多く住むエストレマドゥーラ半島に暮らす猫型知性体。
性格も基本的に猫。大きな群は作らず狩猟採取生活を営んでいる。群をなし組織的に動くのは獅子の一族のみ。
魔力はさほどではないが、とにかく反射神経に優れる。夜目が利き聴覚も魔界随一。
性格は、野心の欠片もなく昼寝大好き。魔王にはご飯やお金をくれるから従ってる。このためワーウルフ族とは真逆の意味で信用されている。
種族全体で「ワーウルフって暑苦しくて細々うるさくて、やだニャー」と思ってる。
エストレマドゥーラ半島は地球ではイベリア半島に相当する。
それでは一週間後より後編、起承転結の転を開始します
次回、後編プロローグ
『教皇』
2011年10月7日00:00投稿予定