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風呂!

「……ここが、お風呂?」

「……見事に、お風呂ねえ」

「確かにお風呂だ。

 しかも、混浴だねえ。

 おまけに若い男女ばっかり」

「ええ、間違いなく混浴露天風呂よ。

 これが新聞のTV欄なら、『欧州混浴露天風呂殺人事件! 華麗なる女子大生と冴えない高校生が駆け抜ける、美しきアルプスの大自然と愛憎劇!』とか、長ったらしいタイトルが付くところだわ」

「華麗かどうかはともかく、そういうのって大方が題名詐欺なんだよな」

「そのタイトルでこれを見せたら、視聴者のオッサン達が激怒するわね」


 思わず頷いてしまう。

 僕らはジークリンデさんとデンホルムさんにお風呂への案内をお願いした。

 で、トコトコと連れられて歩いてきたのは、まあ確かにお風呂と言えばお風呂だ。

 日本でもあるよなあ。男のロマン、混浴露天風呂。

 目の前では、確かに男女が裸で風呂につかってる。


 ただし、砂風呂だけど。

 おまけにネコさん達限定だよ。

 これが『美少女にネコ耳猫シッポ』とかだったら萌えるんだろうけど、あいにくこの世界の猫人間さん達は、そんな萌える姿じゃなかった。本当に二足歩行する巨大猫。

 さらに言うなら混浴といっても、インターラーケンにいるネコさんは、ほとんどが兵士だから、ほとんど男ね。

 全身毛むくじゃらのネコさん達が、砂に首まで埋まったり砂浴びしたり、砂地の横にワラの山を置いて、その上で丸まって昼寝してたり。


 町はずれの草原の中、どっかから持ってきたらしい綺麗な細かい砂場が広がってて、そこには沢山のネコさん達がノンビリくつろいでた。

 いやまあ、確かに猫って砂地で砂浴びするよね。

 それに濡れるのも嫌うよな。

 んでもってここのネコさん達は二足歩行の人間サイズな巨大ネコだけど、やっぱり猫の耳と尻尾があるし、毛皮だし。

 日本人も砂風呂とか好きな人は好きだよなー……。


「って、違うでしょ違うでしょこれー!

 僕らは人間なの、ネコさん達のお風呂には入らないの!」

「ちょっと、ジークリンデさん。

 お風呂はここしかないの?」


 姉ちゃんに見下ろされるジークリンデさんは、テヘヘ、とでもいう感じでちょっと肩をすくめて小さな舌をペロっとだす。

 うう、むっちゃ可愛い。

 思わず日本語で言っちゃったけど、意味は通じたらしい。デンホルムさんはプイッと背を向けてスタスタと歩き出した。

 ちょっと先に行ってから、チラリとこちらを振り返る。ついてこい、という意味らしい。



 次に連れてこられたのは、川。

 流れがとくにゆったりしてて水深の浅い場所。ちょっと離れた場所には飛び込むのにピッタリって感じの大きな岩。

 で、やっぱり若い男女が入り交じって、全裸で、泳いでた。

 標高1000mと高地にあるけど、やっぱり今は夏。午後の熱い日差しの下で泳ぐのは最高だろう。

 うん、まあ、水風呂とも言えなくもないか。夏場だから水でも大丈夫だし、風邪もひかない思う。


「うーん、どちらかというと、ヌーディストビーチってやつ?」

「ユータ、嬉しいでしょ?

 若い女の裸なんて、生で見たことないでしょうから」

「……あれを見て嬉しいと思えるほど変態じゃないよ」

「あら、犬耳に犬シッポよ。萌えるでしょ?」

「どこが」


 今度はイヌさん達だった。こちらも二足歩行の巨大犬。

 うーむ、イヌさん達も全裸で、見事な毛並みから水滴をしたたらせてる。

 ネコさん達と同じで、全身毛むくじゃら。あれじゃ僕ら人間から見ると、服を着てるのと大差ないし。

 やっぱり大方が兵士らしく、ほとんどが男。オス、というのは失礼な気がする。

 そんなわけで、犬の兵士達が川で泳いだり、河原でプルプルと全身震わせて水を飛ばしたり、魚を焼いてたり。

 川の中程を見てみれば、ちゃんとみんな犬かきで泳いでた。

 その光景、まさに犬。犬の群れが水浴びだか水遊びだかをしている。

 ちょっと離れた所では、二本の角を生やした巨人が布で体をゴシゴシこすってるのも見える。

 んー、確かに今は夏。それでいい気もするんだけど。


「姉ちゃん、もしかしてお湯につかるっていう習慣が無いのかな?」

「つか、外でマッパとかイヤよ。

 ちゃんとしたお風呂はないのかしら」


 デンホルムさんにガイドブックでacqua calda(湯)を指さしてみる。

 フワフワと飛び回るジークリンデさんと何か一言二言、言葉をかわす。

 クルクルと小鳥みたいに飛び回ってから、蝶の羽を僕らに向けて街の方へ飛んでく。

 ちょっと先に行ってから、なんか手招きらしき動作をしてる。ついてきて、ということらしい。

 姉ちゃんは不機嫌そうに首をひねってる。


「なーんか、わざと遠回りしてるような気がするんだけど、からかってるのかしら?」

「かもね。

 でももしかしたら、示した単語の意味が地球のイタリア語と少し違ったのかもしれないし。

 ていうか、僕らの入る風呂がどんなのか、ここの人達には分からないんじゃ?」

「んなモン、熱い湯を頭からざっぱーんに決まってるじゃ……というわけでもないか、今までのを見ると」

「街の案内ついでで、どの風呂が好きか実際に見せて確認してるんだと思う」

「それにしても、信じられないわ。

 なんで男女が裸で一緒に……でもないわね」

「だよねー、イヌさんネコさん達は、もともと毛むくじゃらで服着てるようなものなんだから。

 服自体、もともと着ても着なくても、どっちでもいいのかも」


 そんな風に異世界観光気分で街へ戻っていく。

 ところで、今は街の人達は僕らをジロジロと珍しげに眺めたりしない。

 チラリと不思議そうな視線を向けるけど、すぐに自分の仕事へと戻っていく。

 さすがに慣れたか、危険はないと安心したんだろう。


 時折、子供の妖精を建物の影に見かける。

 妖精達は主に森にいるので、その子供を街中で見かけるのは少ない。それに、こちらと視線が合うと、すぐ慌てて引っ込んでしまう。

 好奇心旺盛だけどシャイで恥ずかしがり屋な子供達らしい。





「うーむ、これぞまさに風呂って感じだね」

「高い煙突に、入り口には布がかかってて、確かにお風呂って雰囲気だわ」


 もう夕方、街の店は閉店の準備に取りかかってる頃、ようやく僕らも入れそうな外観の風呂屋に連れてこられた。

 平屋の石造りで、壁には漆喰みたいなのが塗られてる。

 ちゃんと屋根や壁に覆われてて、高い煙突から煙が上がってる。

 煙突の下にはボイラーというか、釜みたいなのが路地の奥に見えてる。その周囲には黒い石みたいのが積まれてる。石炭か炭かな。

 目の前の排水溝には暖かめの水が僅かに湯気を上げて流れてる。

 うん、これは期待大。


「よしよし、んじゃ熱い風呂に入ろうかな~」


 思わず鼻歌がでそうなほどウキウキ気分で入り口の布をめくった。

 が、何か違和感がある。

 入り口の奥に見えるのは、天井近くにある通気口兼窓からの光りに照らされた、脱衣場。

 壁には何段もの棚があり、何かの草で編まれたカゴも並んでて、まさに脱衣場。

 しかし、違和感がある。


 よーく観察をしてみる。

 今、脱衣場に人はいない。

 外の店も閉める準備をしてたから、この風呂屋も日暮れと共に閉めるんだろう。つまり閉店間際で、今から風呂に入る人も僕ら以外いないわけか。

 入り口に番台らしきものもない。お金を徴収する人もいない。出入りも入浴も自由の公衆浴場なのかな?

 脱衣場のあちこちには、タオルみたいなものが畳んで置いてある。タオルも自由に使って良いのか。

 幾つかのカゴには衣服が入ってる。……うーん、店員らしき人がいないから、荷物を盗まれたらイヤだな。

 けど、どうも違和感は消えない。正体も分からない。

 なんだろう、何がおかしいんだろう。


「……女湯は、どこよ……」


 後ろから、絶望したかのような姉ちゃんの声。

 振り返れば、悲しみと怒りと絶望でワナワナと震える姉。

 言われて気が付いた、脱衣場をもう一度見直してみて、さっきから感じていた違和感の正体も分かった。

 脱衣場も、奥の風呂へ続く扉も、一つしかない?

 ということは、なんてことだ、信じられない、でもここって間違いなく、アレだ!


「こ……混浴!?」


 頭の中でファンファーレ。

 レベルアップかレアアイテムゲットしたかのようなBGMが鳴り響く。

 脳内に薔薇色の展開が高速展開!


 あの細身で背の高いエルフのお姉さん達。

 白い鳥の翼や黒いコウモリ羽の奥様達。

 ちっちゃくて可愛い妖精達。

 ついでに毛深いドワーフやブタ頭や緑の小人のおばさん達、は要らない。

 そんな白い柔肌の、あるいは日に焼けた小麦色の、巨乳や貧乳や美乳や微乳や母乳や牛乳や練乳や豆乳やなんやかんやが。

 そそそそれどころかかか、大きなお尻や細い脚や引き締まったウェストやすべすべした背中や、やや、ししかもも、あああそこそことかかががっ!?!?

 ぼぼぼぼ僕のめめめめ目の前ええええでででででっっっ!?


 い、いや、落ち着け落ち着け。

 ここは軍事拠点への中継地点。いるのは男の兵士達が大半。

 でもって妖精達は森で暮らしてる。ここへは兵士達や行商人相手の商売に来てるだけだろう。

 つまり、街に人間タイプの女性は少ない。

 でも待て待て、ここには女性の技術者や魔導師らしき人もたくさん居た。

 それに夜になっても妖精さんがあちこちの家を出入りしてる姿は何度も見てる。街に暮らしてる妖精も多いんだ。

 そそれに森ではお風呂を沸かすのは家事いや火事の危険が大きいし大きいよウン、森の中で川や泉に降りて水浴びなんて、この前の巨大狼に襲われるとかありうるから、街まで来て風呂にはいるよね入るよね入るよねったら入るよね。

 つつつ、つまり、期待は、していいよね!? よねよねっ!!?!


 血走ってるであろう目で、脱衣場に置いてあるカゴを見る。

 そこには、確かに今現在入浴中であろう、うん、人達の服が、ゴクリ、入ってる。

 目を細めて見てみると、そのカゴの中には、スカートとか、花飾りらしきものがあったり……!?

 い、今も、女の人が、にゅにゅにゅ入浴中なのかああああああああああああああああああああああああああ。


「まさか……混浴しろって、ユータと一緒に入れって……そういうんじゃ、ないでしょうね……?」


 天国への階段を全力で駆け上り中な僕と、地獄へ真っ逆さまな様子の姉ちゃん。

 この姉と二人で風呂って、子供の頃以来だな、てかヤだな。

 で、でもでも、今まで見たイヌさんネコさん達は混浴してた。はは裸でみんな一緒にに川や砂場ででっくくくつくつろいでててっ!

 そうだ、そうだそうだ、この国では混浴がスタンダードなんだなウンウン。さっすがヨーロッパは進んでるね性に関してはオープンですね。

 それじゃしょうがないなしょうがないな。


「いやあ、でおもお、郷に入り手は郷に従えっていうしねえ~。

 それじゃしょうがないや、んじゃ、では入ろうか」


  ゴスボカペキボコズドベ


 思いっきりドツキ回された。

 痛い、けど、腹が立たない。これから始まるファンタスティックでヘヴンおぶヘヴンなシチュエーションに比べれば、何も気にならない。

 むしろ気持ちいいと言ってやれるぜ。


「あんたなんかと、つか男と入れるか!

 あたしはそんなに軽くて安い女じゃないのよ!」

「い、いやまあ、言いたいことは分かるけど。

 でも他に風呂は無いみたいだし。

 ここでしばらく暮らすしかないんだったら、ここの風呂も慣れないといけないよね」

「あんた、何をへらへらと、鼻の下伸ばしながら言ってンのよ……」

「え?

 い、いや別に? 別に別に?

 僕はなーんにもやましいことは考えていませんともホントほんと」


 ドゲシッと、案内の二人が目を丸くするような勢いで、もっぺん殴られた。

 んでもって姉ちゃんはジークリンデさんの腕をつかんで、ドスドスとガニ股で遠ざかる。


「あ、姉ちゃーん、どうしたの、風呂は入らないの?」

「うるせーっ!

 勝手に入ってろ!

 あたしは洗濯してくる!」


 そう叫ぶと、何を言われたのか分からずキョトンとしたジークリンデさんを引っ張って、姉ちゃんは去っていった。

 残ったデンホルムさんは、腕組みして小さく溜め息。

 ワガママばかりで困ったヤツだ、とでも言いたげ。

 僕はワガママなんて言いませんよ、この世界に住む人々の風習には最大限の敬意を払い、自らそれに従って生きていくショゾンですとも。


「ねね、姉ちゃんはせせ洗濯おを先にすするそうなんでっ!

 ぼぼぼ僕はお風呂にはは、入って来ますんねっ!!」


 日本語が通じないとか頭から吹っ飛んで、ビシッと敬礼を残し脱衣所へ突入。

 何かデンホルムさんが言おうとしてたような気もするけど、もうどうでもいい。

 ああ服を脱ぐのももどかしい、オマケに手が震える。

 自分の鼻息だけで手にしたタオルも吹き飛びそうな勢いだ。

 脱衣場から奥へと続くドア、そのノブに手をかける。

 ドアの隙間からは既に風呂場の湿った熱気が漏れてくるのが分かる。


「こ、こっこおこの奥に、し、神秘の世界が、男のろろロマンが……!

 いい、いや、これはこの世界の風習だから、決して変態行為でもなんでもないから!

 やっぱり、その世界の風習に自分から溶け込んでいく勇気が無いと、やってけないもんね。

 そうそう、そうだよ、異世界の住人とだって肌と肌の付き合いをすれば、言葉は通じなくても心が通じ合うんだよ!」


 し、心臓がバックンドックンと破裂しそうだ。

 喉がカラカラなほど緊張してる。

 代わりに手はじっとりと汗で湿ってる。

 落ち着け、慌てるな、そう、こういうときこそ理性的に、紳士的に。

 涼しい顔で、普通にナンデもないかのようにハイルのだよ。

 そう、私は風呂に入りに来ただけの、何の変哲もない地球人。決して女性の裸体をジロジロと眺めに来たのではない。

 で、でも、目の前に女性がいたりすれば、ああ、挨拶くらいはするし、かか、体を洗いながら、『どこからいらしたの?』『ええ、地球の日本っていう、小さな島国からですよ』なんて何気ないくぁいわを、ああ言葉が通じないか、でもぜじぇじぇ、じぇすちゃあでも使って、じっくり時間をかけてて……!


「お、落ち着け、落ち着けオレ……。

 あくまで地球人として、日本人として、恥ずかしくない、立派な紳士を振る舞うのだぞ……。

 た、たとえ目の前にき、きょ、巨乳のお姉さんがいても、まずは目と目で挨拶するのだ……!

 決して、首から下をジロジロ見るなんて失礼なコトを、そんなハレンチなことを、しては、いいい、いけないぞ……!」


 呼吸を力ずくで落ち着ける。

 ササッと髪を整え、オホンオホンと咳払い。

 そして、意を決してドアを開け放ち、混浴風呂への記念すべき第一歩を――。





――お姉さん達が居た。

 お嬢様と言えそうな、小柄な妖精の少女らしき人もいる。

 壁から流れ出る水を頭から浴びる、白い翼の中年女性っぽい人もいた。

 天井を支える石のアーチの下、ベンチに並んで腰掛けて黒いコウモリ羽を手入れしてるらしい、もの凄い美女達もいる。

 大きな石造りの浴槽に腰までつかってるのは、長い金髪と銀髪のエルフ女性。

 そこに、男の姿はなかった。

 全員、女だ。

 入浴中の、女。


 浴室へ入ってきた僕と鉢合わせしたのは、脱衣場の扉から見て右の壁にあるドアから出てきた妖精の女の人。

 日本人で言うなら小学生高学年くらいの身長しかない彼女は、脱衣場から入ってきたばかりの僕を、不思議そうに見上げる。

 その人と、僕の目が、交差する。

 しばし、時間が止まる。


 その妖精さんの視線は、最初は真正面を向いていた。

 だから、丁度タオルで隠された、僕の腹から腰辺りを見ていたことになる。

 そこから視線を上げてきて、僕と目が合った。

 再び彼女の金色の目が下へ下がり、僕の下半身へと向く。


 小柄な彼女を見下ろす僕の目には、最初から彼女の全身が映ってる。

 どうやらサウナから出てきたらしい彼女は、妖精にとってはかなり大きなドアから漏れてくる湯気に身を包んでいる。

 そして湯気の中から見えてくるのは、汗と蒸気に濡れた彼女の体……を、包んでいる布。

 彼女の全身はすっぽりと、布で覆われてる。

 それは『バスタオルを体に巻いている』というような、日本ではお馴染みの入浴シーン、では、なかった。


 妖精の女性は、服を着ていた。


 それは白くて薄い布地。

 タオルを簡単に巻いている、というような物ではなく、ちゃんとした服の形状をしている。

 もちろん薄い、簡単な作りだけど、確かに服だ。

 言うなれば、ノースリーブの白い肌着と、同じく白いショートパンツを履いてるようなもの。

 赤いショートヘアに金色の瞳をした妖精の女性は、服を着てサウナに入っていた。


 白い翼の中年女性は、薄い白のワンピースを着たまま水を浴びていた。

 ベンチに並んで腰掛けるコウモリ羽の美女達は、黒のタンクトップと黒のショーツを着てた。

 浴槽に腰までつかったエルフ女性も、ビキニみたいな水着みたいなのを身につけている。

 浴室にいるのは、全員、女性。

 薄いとはいえ、ちゃんと服を着た女性。

 ということは、裸なのは、僕、一人……。


 横に立ってる妖精の女性が、剥き出しなままの僕の下半身を、お尻を見る。

 じーっと見る。

 そして、頬を赤らめて、そっと横を向いた。

 浴室の奥ではクスクス笑う黒い羽の美女達、呆れてヒソヒソとささやき合うエルフ達に、ちょっと呆然としてからプッと吹き出し大笑いし出す白い翼の女性。

 その大笑いを合図にしたかのように、浴室の多くを占める妖精の女性達が、キャハハハハッ、と楽しげに笑い出す。


 硬直して、思考が停止して、動けない僕の肩を、後ろからつつく人がいる。

 ギコギコとぎこちない音を立てて振り向けば、あまりにも冷たい視線で見下ろしてくるデンホルムさん。

 いつのまにか彼も、彼女たちと同じ薄い服に着替えてた。

 ピッと小さく人差し指で指す先には、脱衣場のあちこちに畳んで置かれていたタオルみたいな物……て、あれを着て入れって意味だったのかあああああああっっ!!!



 思考が停止した僕。

 全身、硬直して動けない。

 全裸で女性達の前に堂々と立ってしまった。

 地球では失踪者として死亡扱いされそうな僕は、このパラレルワールドでも社会的に死んでしまった。

 父さん母さん姉ちゃんごめんなさい、僕はもうお終いです。


 股間を隠していたタオルがはらりと落ちる。

 ああ、ホントにまっぱになっちゃった。

 あーもーどーでもいいや……なんか悟りの境地に達しちゃった気分……。


はぁ~びばのんのん♪


このままユータ君は社会的死者としてどろっぷあうとしてしまうのでしょうか。


それとも石を投げられる人生を強く歩むのでしょうか。



次回、第五章『飛空挺墜落事件』、第一話


『勉強開始』


2011年4月7日01:00投稿予定

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