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物語

 夜。

 流れる雲が月を見え隠れさせる、静かな夜。

 魔界の民がMareNostrum(我々の海)と呼ぶ、地球では地中海にあたる海。その上空には星と雲と、大きな鳥のような影がある。

 星の海を漂うように、ずんぐりむっくりした大型機が雲の上を南東へ飛んでいた。

 それは魔界の飛翔機とは明らかに造りが違っていた。魔界のどの飛翔機より巨大で、外装は美しく滑らかで、翼の形状も洗練された感がある。

 静かな夜とは裏腹に、機内の細長い空間は騒がしい。

 特にその影が海から陸の上空へ差し掛かった時、一際騒がしさが増した。


「……地上からの攻撃、ありません。敵飛翔機も離陸してきません」

「ハッキングとジャミングによるレーダー妨害工作、順調です」

「左舷40mm機関砲、105mm榴弾砲、装弾完了。

 各機とも鳥人・サキュバス・妖精各降下兵員準備完了」

「ミーティア全機、攻撃態勢に入りました」


 エルフやゴブリンのオペレーター達が様々な報告と指示を飛ばす。

 機体中央部には透明な板が立ち、そこには魔界南方の地図が描かれ、各所にメモやクリップやピンが取り付けられている。

 その地図はアベニン半島、旧皇国領。


 その大型機は多くの随伴機を従えている。

 中型の飛翔機が十機以上。小型のミーティアやその改造機は百機近いかもしれない。

 魔王軍空軍の大編隊が、夜の闇に乗じて目標地点へ向かっていた。


 指揮機である大型飛翔機、その内部には小部屋があった。

 地球製音楽再生機から大音量の音楽が流される室内。そこに通信機と向かい合う男が居る。

 まだ若い男は、大規模な軍事作戦を控えているとは思えないような、緊張感の無い顔をしている。

 それは、画面に映る幼子に頬を緩ませる裕太。

 彼はリィンが抱く幼子へ手を振っていた。


「それじゃね~、ララぁ~、よい子でおねむするんだよぉ~」

《ほら、パパにおやすみの挨拶しなさい。

 それじゃ、ユータ。無事に帰ってきてね。ケガしちゃダメよ》

「うん、分かってる。

 ララはお願いするね」


 まだ十代なのに既に子煩悩なパパをしている裕太は、画面の端へ下がっていく妻と子へ手を振り続けている。

 だが画面の反対側からお腹をぽっこり大きくしたフェティダが出てくると、慌てて頬を元に戻した。


「おほん、それで、だ……オグル様は上手く迎撃してくれたんだね」

《ええ。使節団は目を丸くしてましたわ》

「これで魔界を未開の発展途上国とかバカにする連中も黙らせれるね。

 後の交渉もやりやすくなるかな」

《任せて下さいな。

 地球の科学、たっぷり吸い上げてあげますわ》

「それと、僕の地位は上手く隠してくれた?」

《ええ、それはキョーコさんが上手くやってくれました。

 あなたは引退したことになってますわ》

「そりゃ良かった。

 地球の日本人が未だに魔王軍中枢にいるなんてばれると、後々やっかいそうだからね」

《そうですね。故郷で人質を取られても嫌ですし。

 使節団の対応は私達に任せて下さい》

「そうするよ。

 でも無理しちゃダメだよ、もうすぐ予定日なんだから。

 少しでも何かあったら、誰かに代わってもらってね」

《そうするわ、あなた》


 おほんおほん、と、いきなり彼の左右から咳払い。

 彼の後に控えていたのは禿頭の老エルフ、サトゥ。それと白い帽子を被るラテン系の元フランス外人部隊隊員、アルトゥール。

 彼らと裕太の三名は、そろって紺色と暗褐色を基調とした夜間用戦闘服を着込んでいる。

 アルトゥールはニヤニヤと笑いつつも裕太を拙い魔界後でたしなめた。


「シレイカンどの。

 もうすぐ始めますので、そのへんで」

「あ、うん、そうだね。

 それじゃフェティダ。お腹には気をつけて」


 通信機を切った裕太は椅子から立ち上がり、軽く頬を叩いて緩んだ顔を締め直す。

 そしてアルトゥールとサトゥを伴って部屋を後にする。

 音楽をがなり立てるラジカセは、ボタンを切られないまま放置された。しかもスピーカーを壁に向けたまま。



 部屋を出た裕太は畿内を見回す。

 機内の魔王軍兵士のうち手の離せる者は素早く敬礼。

 機体奥で手の離せないものも、チラリとアイコンタクトをする。それは一番奥に設置された礼拝所に似た空間の中で座禅を組む子供たち。魔力炉の子供たちだ。

 その中にいる黒髪少女、シルヴァーナと目が合う。

 素早く笑顔を交換し、再び顔を力ずくで真顔へ戻す。

 彼はさらに上達した魔界語で、朗々とした声で全軍の指揮を執った。


「魔王軍アベニン半島派遣部隊総員へ告ぐ。

 派遣軍司令官ケイナミーリュダ将軍の名において、現時刻を持って状況を開始する!

 ネフェルティ飛翔隊隊長へ通達、ミーティア編隊は直掩機ちょくえんきを除き、爆撃せよ!」

《にゃにゃーだにゃー!》


 ケイナミーリュダと名乗った裕太の命令を受け、ミーティア編隊を指揮するネフェルティ王女の陽気な返事が返ってくる。そして大型飛翔機の護衛機のみを残し、大編隊が急降下を開始する。

 高度を一気に落とした各機の胴体下部から黒く楕円形の物体が幾つも切り離される。

 それらは不気味な風切り音をあげ、地上へと落ちていく。


 爆炎。

 広大な丘の各所で炎が吹き上がり、続いて黒煙が立ち上る。

 同時発生した火災に街並みが浮かび上がる。

 豪奢な邸宅が、巨大な橋が、白亜の城が、整った街並みが爆風で破壊される。

 突然のことに飛び起きた人間たちが通りに飛び出し、悲鳴を上げ、助けを呼ぶ間もなく絶命する。

 一気に急降下したミーティア全機からの一斉爆撃。街は一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図へと塗り替えられた。


 高度を落としたのはミーティアだけではない。

 指揮機と、随伴する中型機も高度を落としている。

 裕太が乗る指揮機の左側には二つの砲門が飛び出していた。どちらも巨大だが、一つは細長い砲、もう一つは比較的太い大砲のようなもの。

 眼下に地上の火災と混乱を確認した指揮機、その二門の砲も地上へ狙いを定めた。


  ズムッ!


 機体を揺るがす振動と重低音。

 大砲が火を噴くとともに、榴弾が地上へ撃ち出される。

 そして、一際巨大な大爆発が柱の列を吹き飛ばした。

 着弾した地上施設はコロネード(colonnade:回廊のような列柱の並ぶ建物)で囲まれた円形広場、その一角。

 皇国国教会総本山たる聖シモーネ大聖堂の正面広場だ。

 広場や柱を飾っていた布地が燃え、混乱に包まれる大聖堂を不気味に照らし出す。

 その砲はM102、アメリカ製の105mm榴弾砲。


 さらに連続して凄まじい砲撃音が機体を揺らす。

 もう一つの細長い砲、ボフォース40mm機関砲が1㎏近い重量の砲弾を連続で大聖堂へ叩き込む。

 機体は左へゆっくりと旋回し、機体左側に設置された砲門は大聖堂とその周辺を照準に収め続ける。

 その機体は魔王軍アベニン半島派遣部隊指揮機、正式名称はAC-130H。

 ロッキードC-130ハーキュリーズ輸送機に重火器を搭載できるように改造した対地専用攻撃機。


 着々と穴だらけにされる大聖堂。その周辺の建造物も榴弾を次々と受けて崩壊していく。

 それを指揮機の窓から見下ろすサトゥは、深いため息をつく。

 全部隊の地上攻撃を指揮する司令官へ、砲撃の合間に話しかけた。


「全く、酷い有様です。

 ユータ殿は歴史と文化に理解ある方だと思っていましたのに」


 サトゥの言葉に、裕太は口に人差し指を当てるゼスチャーをする。

 そして老エルフの耳に口を寄せて呟いた。


「僕のことは、魔王軍内ではケイナミーリュダ卿と呼んでくださいってば」

「あら、盗聴器でしたらラジカセとかいう機械で封じたではありませんか」

「あれひとつとは限らないんです。

 オグル頭取の目でも見落としが無いとは限らないので」

「分かりましたわ、ケイナミーリュダ卿。

 ですが、大聖堂とピエトロの丘への無差別攻撃については分かりません。

 貴方は芸術の価値を知らないわけではないでしょうに」


 戦争のために作られた兵器の中。

 サトゥはケイナミーリュダ卿こと裕太へ、爆撃によって破壊される文化財の価値を訴える。

 訴えられる方は渋い顔だ。彼とて文化財の価値を理解していないわけではないのだから。



 彼らの乗り込む機体、AC-130H。

 これが魔界へ送られた援助物資。アメリカからの軍事支援。

 魔界の政権が安定しないと回廊を安定して開設できない。これはアベニン半島の人間族に対してだけでなく、魔族全体への統治についても言える。

 だから地球側は魔王一族の統治を支援する。軍事的にも。

 スエズ運河を守るためにエジプトの独裁政権を支援し続けた構図と同じだ。


 ただ、力で異種族を抑え込むのは愚作の極み、力は支配者を暴君とする、というのは初代魔王からの教え。地球製品の無制約な流入は大規模な魔力消失汚染地帯を生じる。

 これは現魔王ラーグンも理解している。

 なので軍事支援に関しては指揮機としてのAC-130H一機といくらかの銃火器のみ受け入れた。また電子機器は魔界側には使える者がほとんどいないので、レーダーやエンジン含めて大方を外してもらってある。

 機体に魔力推進器を取り付け、術式は地球の物質で作られた機体そのものには触れないように配置し、二門の武装は全て手動で稼働するように予め改造してもらった。

 魔界側も技術革新が進んでいるとはいえ、やはり地球とは自然科学分野では一世紀近い技術力の差が存在する。このため地球製火器は威力・射程・速射性・命中精度・使用者の安全性までも桁外れ。

 その銃口の前に、大聖堂は早くも崩落した。


 この軍事支援はアメリカをはじめ安全保障会議理事会の承認も得ている。

 地球人に極めて近い皇国の民へ銃口が向けられることなどは百も承知。だが、そのことに良心の呵責などあるはずもない。

 安全保障理事会の常任理事国は、元々が世界屈指の武器輸出国で、人間同士で殺しあうのが日常業務だ。

 ちなみに贈られたAC-130Hは盗聴器付き。

 製造元のアメリカの仕業だろう。魔界の動向を調べ弱みを握るためなら、司令官室に盗聴器を仕込むくらいは造作もないこと。

 もちろん魔界側もその程度のことは予想済み。引き渡された機体は隅々までオグルと部下たちが調べ上げた。

 見つけたは良いが、機体の最重要構造内部に埋め込まれており、無理に壊したり取り出したりすると機体が壊れる仕掛けになっていた。

 その報告を受けたラーグンは笑顔で「ラジカセで壁の中の盗聴器へ四六時中音楽を聞かせよう」と指示した。


 そんなわけで、裕太は未発見の盗聴器を警戒し、魔王軍の将軍として動くときはケイナミーリュダ卿と名乗ることにしていた。

 実は魔王軍内部でも金三原裕太というのは発音しにくく、ケイナミーリュダ卿が半ば通り名として浸透していた。本名を知らない者の方が遥かに多い。なので魔王軍の将軍としては好都合でもあった。

 そしてその行動も軍の利益と理論に基づく。

 よって、サトゥの小言は彼の耳に痛く、その苦言に従うわけにはいかない。


「おっしゃりたいことは理解しています。

 ですが、皇国国教会は統治のため五十年ほど前に捏造されたものにすぎず、歴史的文化的価値はありません」

「いいえ。

 あの機能的かつ優美な街並みをごらんなさい。

 あれらに価値を見いだせないほどケイナミーリュダ卿が愚かな方だとは思っていませんよ」

「創造には破壊がつきもので、大事の前の小事です。

 まず地上の軍事施設を破壊しないと地下の工廠へ突入できません。

 あなたをこの機に乗せるだけでも大変な譲歩なのをお忘れなく」

「その支配者の詭弁によって全てを失いかけた方の言葉とは思えませんわ」


 サトゥはそれ以上言葉を続けなかった。

 ただ深い深いため息をつくのみ。

 老女の学者エルフが言うことも理解できる。が、だからといってこの作戦は手を抜くことができるものではない。

 裕太としては、せめてケイナミーリュダ卿として最速で目的を達することが精いっぱいだ。



 サトゥと裕太が問答をしている間にも作戦は進行する。

 爆弾を落として身軽になったミーティアが、建物から飛び出してきた人間たちを狙い撃つ。

 垂直離着陸機の自由自在な機動を生かし、着実に兵士と兵器を潰していく。

 AC-130Hからの砲撃が巨大な石造りの建造物を粉々に打ち砕く。その砲弾は地球からもたらされたものであるため、着弾と炸裂と共に飛散した弾の粉塵がピエトロの丘の魔法兵器を機能停止させていく。

 高度を落とした中型機から飛び出していく妖精・鳥人・サキュバスの翼ある種族。爆弾とAC-130Hからの砲撃で地上施設を破壊し、ミーティアが大まかな対地攻撃を加えた後、彼らが地上制圧の仕上げをしていく。

 さらにはリザードマンなどの一般兵士も降下し始めた。アダルベルトをはじめとしたフォルノーヴォ家の人々から得られた情報に従い、工廠への直通路を目指し突入していく。

 

 刻一刻と制圧され無力化されるピエトロの丘と皇国国教会、そして聖騎士隊。

 だがある時点から魔王軍兵士の進撃が鈍る。

 地上施設の制圧が大方終了し、次は工廠へ突入しようかという段階で、頑強な抵抗にあっていた。

 工廠までは狭い通路ゆえ大軍が動けず、地の利は人間側にあり、なおかつ無理に突撃すれば通路を爆破して埋められてしまう。

 地球の武器やガスで魔力や術式を消去しながら進んでいるが、時間がかかりすぎる。

 なおかつ、魔王軍の前に立ち塞がる戦士がいた。

 指揮機の内部にネフェルティの声が響く。


《ケイナミーリュダ卿、勇者が出たんだにゃー。

 すっごい重装備で、マグナム弾もスナイパーライフルの7.62mm弾も通じにゃいみたい。

 道を塞がれちゃって進めにゃいよ》

「了解、そろそろ出るとするよ」


 重々しい内容の報告を陽気に軽く報告された裕太は貨物室の扉を目指す。

 その後ろをアルトゥールがついていく。


「シレイカン、まさか自分がデる気かい?」

「もちろん」


 その言葉にアルトゥールは、大げさに肩をすくめて顔をしかめる。


「ヘイヘイ、ボーイ。

 シキカンが最前線に立つなんてバカな話、聞いたこともないぜ」

「いや、魔王軍では良くあるんだ」

「ハケン軍参謀として言わせてもらうぜ。

 いきがったルクリュ(Recrue:フランス語で新兵)は長生き出来ないぞ」

「勇者は速やかに倒さないと、被害が拡大して士気が低下し指揮も混乱するからね。ぐずぐずしてると周辺の大公達が介入してくるかもしれない。

 僕が出て、一気にカタをつけるるしかないんだ。

 ついでに前線指揮もやってくるよ」


 参謀の戒めにも司令官は意見を変えない。

 言うだけ無駄と理解したアルトゥール参謀は、もう一度肩をすくめて鼻を鳴らす。

 裕太は貨物扉前に立ち、左右のリザードマン兵士へ扉の開放を命じた。


「待って!」


 扉を開け放たんとする直前、少女の声が貨物室に響く。

 彼が振り返れば、そこには魔力供給陣から抜け出してきたシルヴァーナがいた。

 木の板を敷いた貨物室の床を駆けてきて、不安に満ちた瞳で夫を見上げる。


「また行っちゃうの?」

「大丈夫、今度はすぐに帰ってこれるから。

 必ず工廠奥に捕まったままの子供たちを助け出してくる」

「でも、だって、魔力が……」

「それも大丈夫だよ。見て」


 優しく微笑んだ裕太は目を閉じ、意識を集中する。

 すると、瞬時にして魔力の衣が彼の全身を覆った。マントも軽やかに翻る。

 青く澄み渡る光が貨物室に満ちる。

 それは明らかに一年前、ルテティアやインターラーケンで見せた最盛期の彼の姿。最も魔力に満ち溢れた状態だ。


「この一年、みんなが休ませてくれたおかげで、完全に魔力を回復させることができたよ。

 全てはこの時のため、工廠を攻略し魔力炉の子供たちを救出するためさ」

「つったって、無限暴走を無くしたのに、以前みたいに戦えるわけじゃないだろ?」

「確かに、長丁場は無理だね。

 でも、魔力蓄積量自体は変わってないから、十分戦えるよ。伊達に『魔王へ転生した』なんて吹聴してるわけじゃない。

 僕の体は、今やラーグン陛下にも匹敵する魔力で満たされてるよ」


 自信に満ち溢れた言葉。

 その笑顔にも一点の曇りもない。

 だが夫の魔力を目にしても、幼妻の不安は消えなかった。


「……必ず、帰ってこいよ」

「約束する。

 必ず生きて帰ってくる。

 魔力炉の子供たちも、みんな助け出すからね」


 夫は妻と一瞬だけ口づけを交わす。

 そして部下たちに命じ、扉を一気に開け放させる。

 とたんに流れ込んできた突風にシルヴァーナの長い黒髪が広がる。

 彼女が風に目を閉じた一瞬で、裕太の姿は貨物室から消えていた。

 燃え盛るピエトロの丘、その赤い光の合間に青い輝きが飛び去っていく。

 翼を広げた裕太は、速やかに工廠への直通路を目指し急降下する。

 貨物室の扉にすがりついたシルヴァーナは、風にあおられながらも眼下を飛ぶ夫へ叫んだ。


「絶対帰ってこいよー! 絶対だぞー!

 無事に帰ってこないと承知しないんだからなー!」





 妻の声を背に、彼は大気を切り裂く。

 立ち上る黒煙をすり抜け、そのままの勢いで崩れかけた尖塔を蹴り飛ばす。

 傾いていた塔は、ゆっくりと地上へ倒れていく。そして地面や建物を押しつぶして粉々に砕ける。

 聖騎士の小部隊がその下敷きとなり、瓦礫の中に消えた。

 その瓦礫の上にフワリと降り立った裕太は、ピエトロの丘で戦うすべての者に聞こえる声で、高らかに宣言した。


「我はケイナミーリュダ将軍!

 魔王が握る一振りの刀なり!

 さあ、狂気に溢れた狂信者よ、我欲に溺れた簒奪者よ、我が前に立つがよい。

 全て等しく血の花へと変えてやろうぞ!」


 瞬間、戦場と化した丘が興奮と歓声で、恐怖と悲鳴で、戦意と雄叫びで沸き立つ。

 魔王軍兵士たちは歓呼と歓喜をもって迎え入れ、聖騎士達は呪詛と呪文で迎え撃つ。

 爆炎と黒煙に包まれた夜の戦場に、青く輝く闘神は降り立った。





 彼の物語は、その後も長く続くこととなる。

 魔界転移に始まり工廠攻略まで続く対皇国戦は、その序章に過ぎない。

 遥か未来、遠く星の彼方まで語り継がれる冒険物語は、まだ始まったばかり。



   『パラレルParallelo!』  完


本編終了!


あとは、これの一時間後に最後のおまけ、「どうでもいい設定資料集」をお送りして、すべて終了となります。

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