第4話 レモンケーキと約束
午後の授業は、黒板の文字を気が付いたらノートに書いていた。
いつもなら先生の話も書いておくのに、白い部分が目立っていた。
お昼から変だな、私。
気が付くと放課後のチャイムが鳴っていた。
スマホを開くとさきちゃんからLINEが来ていた。
「今日は一緒に帰れる?昇降口で待ってるね♡」
私はすぐに返信した。
「すぐ行くね」
急いで荷物をまとめた。
教室を出ようとしたときに谷口くんが声をかけてくれた。
「佐々木さん、また月曜!」
少し頭が晴れた気がするけど、濁っている気がした。
「またね」
気が付いたら口にしていた。
昇降口に着くと、さきちゃんが待っていた。
「あ、まいちゃん。早く帰ろ~」
「まだ考え中みたいだね......」
最後は小さく言っていた。
「おまたせ。考え中......?」
「独り言だから気にしないで。今日はどっか寄ってく?」
さきちゃんは少し誤魔化すように答えた。
「うん。いつものカフェでケーキ食べたい」
甘いものを食べれば、少しはこの感じもなくなるかな。
「いいね。それじゃ行こ~」
さきちゃんは私の手を引っ張りながら、駅前のカフェに向かった。
カフェに向かう途中も、さきちゃんは話をしてくれたけど、
お昼のことを気が付いたら思い出しちゃって、上の空でしか答えられなかった。
お店に着くと、いつもの席に通してもらった。
木の匂いと、日が心地よく当たって、お気に入りの席だ。
さきちゃんは早速メニューを開きながら聞いてきた。
「まいちゃんは、今日は何にする?」
メニューには、いつものショートケーキや、チョコレートケーキ、
季節のケーキなどが載っていた。
「......今日はレモンケーキと、アッサムティーにしようかな」
「いいね~。私はガトーショコラとマンデリンのホットにしようかな」
そう言って、さきちゃんは店員さんに注文してくれた。
店員さんが離れたのを確認して、さきちゃんは聞いた。
「まいちゃん、お昼からいつもよりぼーっとしてるけど、どうかした?」
正直に言っていいよって、優しい目をしていた。
私は少しずつ話した。
「なんとなく、声は聞こえるんだけど、うまくわからない感じ、なんだよね......」
「うん、それで?」
さきちゃんは頷きながら、続きを聞いてくれた。
「どうしてか、お昼に、谷口くんたちと話してたことを、思い出しちゃって......」
「うん。まいちゃんは何を思い出しちゃう?」
「......? 何をって?」
わからなくて、さきちゃんに聞き返した。
「まいちゃんは、谷口くんたちとの会話の、どこが思い出しちゃう?」
私は何を思い出しちゃうか、思い浮かべた。
谷口くんたちが遊びに行ってること?
昨日女の子のグループと遊びに行ったこと?
それとも......
私はぽつぽつと言った。
「谷口くんが笑っていたことと......それと、女の子を親し気に呼んでいたこと......?」
さきちゃんは、頷きながら聞いてくれた。
「うん。そうだよね。まいちゃんはどうしたい?」
「どうしたい......?」
「うん。谷口くんが笑っていたこと、女の子を親し気に呼んでいたことが気になるんだよね?」
さきちゃんは確認を取るように聞いた。
どうしたいか考えていると、ケーキが来た。
「食べながら考えてみよっか」
さきちゃんはガトーショコラの写真を撮ると、幸せそうに頬張った。
私も自然と写真を撮ってから、レモンケーキを頬張った。
レモンのさっぱりとした酸っぱさが、口に広がった。
少し頭の靄が晴れた気がした。
谷口くんにあの笑顔見せてもらいたいな。
名前も......
さきちゃんの方を見ると、ニコニコしていた。
「どう?まいちゃん。思いついた?」
心臓の鼓動がうるさくなった。
私は顔を見られたくなくて、レモンケーキに目を落としながら深呼吸して、答えた。
「谷口くんに笑顔見せて欲しい....それと、名前も......」
「名前も、どうして欲しいの?」
さきちゃんは意地悪く言ってきた。
少し心臓の鼓動が早くなった気がする......
どう答えようか固まっていると、さきちゃんは優しく言ってくれた。
「私はまいちゃんのこと、絶対応援するから。私には正直に言っていいよ?」
私は、自然と握った指に力が入りながら、小声で答えた。
「名前で......まいって、呼んで欲しい......」
私は顔が熱くなったのを誤魔化したくて、少し震えた指で、アッサムティーを口に含んだ。
「言えたね、まいちゃん。休み明けたら、谷口くんに言ってみよっか。私もついて行ってあげるから。」
月曜日のことを思うと、また心臓の鼓動が、早くなった気がした。
レモンケーキは、さっきよりも甘く感じた。
読んでくださり、ありがとうございます。




