閑話 市松模様クッキー 後編
手を洗ってスマホを見ると、さきちゃんからLINEが来ていた。
「今日はなに作ってるの?できたら写真送って~⋆⟡」
胸の奥が、少しだけ温かくなった。
「あと2時間くらいでできるから、もうちょっと待ってて」
そこまで送って、少し迷った。
お昼休みのこと、さきちゃんに話そうかな......
「今日谷口くんたちに、カップケーキ食べてもらったんだ おいしいって言ってくれて嬉しかった」
しばらくすると、さきちゃんから返信が来た。
「まいちゃんが私以外にお菓子あげるのめずらしいね なにかあったの?」
何度か打ち直して、送った。
「谷口くんたちが、私の食べてるカップケーキに興味持って、食べたいって言ってきたからあげただけだよ」
すると、すぐに返信があった。
「ふ~ん そうなんだ~ なにか面白いことあったら教えてね~⋆⟡」
変な勘違いされてそう......
面白いことなんて、ないのに......
ここで、あげる約束しちゃったの言ったら、からかわれそうだし今度言おう......
そう思って、私は時間をつぶすために部屋に戻って宿題を片付けた。
宿題が一段落すると、いい時間になっていた。
「そろそろ仕上げ頑張ろう」
そう口に出しながら、キッチンに戻って、オーブンの予熱をした。
予熱をするときの、この独特な音を聞くと、もう少しで焼くんだって気がして、
少しだけわくわくしていた。
生地を冷蔵庫から取り出して、ココアとバニラを交互にして、市松模様になるように整えた。
合わせ面には、残しておいた卵白を塗ってくっつけた。
これで、バラバラになりにくいはず......
その後に周りにチョコ生地を巻いてあげた。
「ここまでは順調。あとはきれいに切って......」
等間隔で切り終わると、ちょうどよくオーブンの予熱が終わった。
クッキングシートを天板に敷いて、生地を並べた。
生地を落とさないように、気を付けながらオーブンに入れた。
入れ終わった瞬間、少し息が漏れた。
いつもは焼いている間は別のことをしてるのに、今日はオーブンの前を、行ったり来たりしていた。
どうして、こんなに気になるんだろう......
何度も作ってるはずのに、なんでだろう。
そんなことをしていると、オーブンから甘い匂いがしてきた。
体は自然と耐熱マットの準備をしていた。
準備が終わって少し待つと、オーブンが時間を教えてくれた。
私はいつもより、ゆっくり扉を開けた。
甘い匂いに包まれながら、出来を確認した。
「うん、できてそう......あとは火が通ってるか確認して......」
爪楊枝で確認したけど、大丈夫そうだった。
落とさないように気を付けて、耐熱マットに天板を運んだ。
できたてを試しに一つとって、息で冷ましてから口に含んだ。
バニラとココアの香りが鼻に抜けておいしかった。
ちゃんと、喜んでもらえそうかな......
しばらくすると、粗熱を取り終わった。
さきちゃんに見せる用のクッキーを何枚か分けて、残りは冷蔵庫に入れた。
お皿にきれいに置いて写真を撮った。
「さすが私、見た目も完璧のはず」
また、「おいしい」って言ってくれるかな......
さきちゃんに写真を送りながら、少しわくわくしている私がいた。
よろこんでくれるといいな......
それでも、胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。
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