閑話 約束とティラミス
窓から入る光で目が覚めたけど、なんだか寝覚めが悪かった。
昨日は寝るまで、あの変な感じのことばかり考えていた。
時計を見ると、いつもより早い時間を示していた。
なんとなく気分がすっきりしないまま、準備を始めた。
今日は、さきちゃんと遊ぶ約束の日だ。
クローゼットから、今日着る服をなんとなく決めた。
昨日のお出かけの服は、あんなに決めるのに時間がかかったのにな......
その流れで、フードコートのことを思い出してしまった。
なんなんだろう、これ。
別に、さきちゃんのことが嫌いなわけじゃないのに。
考えても、うまく言葉にならなかった。
気がつくと、準備は終わっていた。
いつもより、なんだか時間がかかっていたみたいだ。
もう出ないといけない時間になっていた。
外に出ると、少しだけ肌寒かった。
さきちゃんの家に着くと、さきちゃんは外で待っていた。
「まいちゃん、おはよ~」
「......おはよ」
なんだか声が出しにくくて、小さい声になった。
「今日はどこから行く~?」
さきちゃんは、じっと私の顔を見ながら言った。
「......さきちゃんが、行きたいところからで、いいよ」
さきちゃんに見られているのが気まずくて、目を逸らした。
「そっか~。ならカフェからでもいい?昨日いっぱい歩いてまだ疲れちゃっててさ~」
私は小さく頷いて、さきちゃんについて行った。
カフェに着くと、いつもの席に座った。
さきちゃんは、メニューを見ながら口を開いた。
「今日は何にする?」
メニューを見て、ちょっとだけ考えてから答えた。
「ティラミスと、アッサムミルクティーにしようかな」
「それじゃ、私はいつものにしよっと」
店員さんを呼んで、さきちゃんが注文してくれた。
私はそれを、ぼんやり眺めていた。
ゴールデンウィークの宿題の話をしていると、ケーキが来た。
いつもみたいに話せていたはず......
でも、どこか少しだけ、うまく笑えていなかった気がした。
さきちゃんが、自分のアッサムティーを一口飲むと、口を開いた。
「何かあった?」
さきちゃんの目は優しかった。
言葉を探していると、さきちゃんが続けて言ってくれた。
「ゆっくり、思ったことを言っていいよ」
私は、一度喉を潤してから話した。
「昨日から、なんか変な感じで......少し落ち着いたって思っても、またすぐ変な感じになって......」
「......そっか。昨日のいつくらいからかな?」
私は、少し思い出しながら言った。
「......午前中は、いつも通りだったと思う。......お昼くらいから?」
「お昼に何かあった?」
さきちゃんの言葉で、あの変な感じが、またした気がした。
言葉に詰まっていると、さきちゃんが少しだけ考えてから続けてくれた。
「たぶん、それが気になってるんじゃないかな?」
「......そう、なのかな?」
まだ、うまくわからなかった。
さきちゃんはまた、少しだけ考えてから言った。
「......なら、少し落ち着いたなってときは何かあった?」
私は、思い出しながら答えた。
「......たしか、ゲームコーナーで遊んでるときとか、だったと思う」
「うん。そのときはどう思ってた?」
「えっと......楽しくて、なんだか、温かかった、と思う」
リズムゲームをしていた時のことを、思い出しながら言った。
なんで、あのときは平気だったんだろう......
考えていると、さきちゃんは小さく口を動かした。
「少しはよくなったね。これなら明日、楽しめそうかな」
小さく何か言ったみたいだけど、うまく聞き取れなかった。
なんとなく、朝よりは軽くなった気がした。
その後は、明日の服の話をしながらティラミスを食べた。
甘いのに、少しだけ苦かった気がした。




