第14話 フードコートと約束
しばらく、しゅんくんとレシピを見ていた。
たまにしゅんくんが、「これおいしそう!」とか、「まいちゃんは作ったことある?」と言ってくれた。
そのたびに、私はなんだかくすぐったくなったけど、嫌ではなかった。
そんな会話をしていると、スマホの通知音が聞こえた。
Lineグループで、鈴木くんが参考書を買ったことを言っていた。
私としゅんくんがお店から出ると、鈴木くんが袋を手に持って待っていた。
「谷は何か買ったのか?」
「特には!」
しゅんくんは手を広げて、何も持ってないってアピールをしていた。
面白くて、私は頬が緩んだ。
「ふーん。面白そうなのはあったか?」
「美味しそうなお菓子のやつがあった」
「へー。谷がお菓子の漫画読むなんて珍しいな」
しゅんくんが、少し首を傾げてから答えた。
「漫画じゃなくて、レシピを見てたんだ~」
鈴木くんは目を見開いていた。
しゅんくんも楽しそうだったのが、なんだか嬉しかった。
「おまたせ~」
鈴木くんが何かを言おうとしたけど、さきちゃんの声が先に聞こえた。
齊藤くんも、さきちゃんの後ろから来ていた。
さきちゃんは私たちを見渡して、口を開いた。
「何の話~?」
「別に......それよりそろそろ昼にしないか?」
鈴木くんはぶっきらぼうに答えた。
一瞬、さきちゃんが私の目を見てから答えた。
「そうだね~。フードコート行く?」
「そうしよう!俺ラーメン食べたい!」
しゅんくんは、フードコートの方に向かいながら言った。
私も、しゅんくんたちの後について行った。
歩きながら、さきちゃんが隣に来た。
「なんか楽しそうな感じだったけど、面白いことあったの?」
さきちゃんは小声で聞いてきた。
「鈴木くんが、しゅんくんに”面白い本なかった?”って聞いてただけだよ?」
私も小声で答えると、さきちゃんは私の顔をじーっと見た。
「まいちゃん嬉しそうだね」
言われて気がついたけど、頬が緩んだままだった。
さきちゃんに見られるのが気まずくて、必死に戻そうとしたけど、上手くいかなかった。
その間も、さきちゃんは私の顔を見てニコニコしていた。
フードコートに着くと、さきちゃんが口を開いた。
「私と谷口くんが席とって待ってるから、みんなは先注文してきてよ」
なんだか胸のあたりがモヤモヤした。
理由はわからなかったけど、少しだけ落ち着かなかった。
私が立ち止まっていると、さきちゃんが小声で話しかけた。
「大丈夫、谷口くんを取ったりしないから。ちょっと聞きたいことあるだけだから」
「......っ、べ、別にしゅんくんは私のじゃないし......」
心臓が、うるさかった。
自分で言っておきながら、胸の奥が少しだけ、引っかかった。
さきちゃんに顔を見られたくなくて、私も注文しに行った。
心臓はまだうるさいのに、さっきより少しだけ安心していた。
ほんとうに、どうしたんだろう......
レジに並んでいる間も、さきちゃんたちがいる席の方を、気づくと何度も見ていた。
なんでこんなに気になるんだろう......
さっきまで安心してたはずなのに、落ち着かないな......
並んでいる時間が少しだけ長く感じた。
呼び出し機を受け取って、さきちゃんたちがいる席に向かった。
気がついたら、少し早歩きになっていた。
席に戻ると、さきちゃんが私に気がついて口を開いた。
「あ、注文終わった?私たちも言ってくるね」
さきちゃんは立ち上がって、私の隣に来ると小声で言った。
「そんなに心配しないでいいから、ね?」
さきちゃんの声が温かかった。
なんで私は心配してたんだろう......
しばらくしても、このモヤモヤはなかなか消えなかった。




