第13話 本と約束
ボールペンを買ってから、少し店内を歩いていると、スマホが震えた。
鈴木くんも、欲しかったの買えたみたいだ。
お店の外に出ると、みんなが集まっていた。
「次どこ行く?」
みんなを見ながら、さきちゃんが言った。
「どこでも!」
しゅんくんが楽しそうに答えた。
「答えになってねーから。俺はあと本屋行きたいかな」
鈴木くんが呆れながら言った。
「よし、本屋行こう!」
しゅんくんが前に出て、歩き始めた。
歩いていると、さきちゃんが隣に来て口を開いた。
「さっき、何か買った?」
「うん。ボールペン買ったよ」
そう答えながら、さっきの言葉を思い出して、頬が緩んだ。
「見せて見せて!」
バッグからボールペンを取り出して、さきちゃんに見せた。
「あ、かわいい!そういえば、谷口くんもレジに並んでたよね?」
一瞬、心臓が跳ねた。
「そ、そうなんだ......」
あの後、しゅんくんも同じの買ってたんだ......
それだけなのに、なんだか嬉しくなっていた。
さきちゃんが、私の顔をじっと見てから、少しだけ口を緩めて言った。
「まいちゃんが犬の買うのって珍しいね」
「そ、そうかな......?」
猫とかハリネズミが多かった気がするけど......
なんで目に留まったんだろう。
「そっか。そっか~」
さきちゃんは、どこか楽しそうに言った。
本屋に着くと、鈴木くんが口を開いた。
「俺は参考書のとこ行くから、みんなは好きに行ってて。また終わったら連絡するから」
「真面目だな~」
しゅんくんは、どこか他人事のように言った。
「谷、お前も来るか?そろそろ受験考えないとだろ?」
「まだ1年あるし、俺は別のとこ行こっかな」
そう言って、しゅんくんは漫画のコーナーに行った。
斎藤くんは、小説コーナーに行くみたいだ。
「私はファッション誌見てこようかな。まいちゃんはどうする?」
「レシピ本見てこようかな」
さきちゃんに答えて、レシピコーナーに行った。
次は何を作ろうかなって考えながら、お菓子のレシピを見ていた。
なんとなくしゅんくんの方を見ると、まだ漫画コーナーで漁っているみたいだ。
なんで目で追っちゃうんだろう......
そんなことを思っていると、しゅんくんと目が合った気がした。
すぐに、レシピに目を落とした。
心臓が、うるさかった。
必死にレシピを読もうとしたけど、集中できなかった。
そうしていると、近づいてくる足音が聞こえた。
「まいちゃん。どうかした?」
さっきよりも、心臓がうるさくなった。
なんとなく気まずくて、レシピを見ながらしゅんくんに答えた。
「な、なんでもないよ......」
「あ、そう?気のせいか......あ、まいちゃん、お菓子の見てるんだ!」
しゅんくんの声は、いつもみたいに楽しそうだった。
「......うん。作れそうなのないかなって」
「どんな感じ?見せて!」
そう言いながら、しゅんくんが私の隣に来た。
少しぎこちないまま、しゅんくんに見えやすいように本を傾けた。
隣にいるだけなのに、なんだか落ち着かなかった。
「あ、これ美味しそう!」
ページをめくっていると、しゅんくんが指をさした。
小さいチョコタルトだった。
レシピを軽く目で追った。
型も家にあるし、そこまで難しくなさそうだった。
「よかったら......今度、作ってくる?」
しゅんくんの顔を、そっと見上げながら言った。
「いいの?食べたい!」
しゅんくんの顔が眩しくて、目を逸らした。
「......うん」
私は、小さく頷いた。
なんだか、胸が温かかった。




