閑話 約束と服
クローゼットの前で、何度目かのため息が出た。
明日着ていく服がまだ決まっていない。
明日は、ゴールデンウィークの約束の日だ。
いつもなら何を着るかすぐ決まるのにな。
私はスマホを手に取って、さきちゃんにLINEを送った。
「明日何着てく?」
クローゼットの前で立ち止まっていると、スマホが震えた。
「これ~ あといつものスニーカー」
写真にはアイボリーのパーカーと黒のショートパンツが写っていた。
見慣れた、さきちゃんの格好だ。
どう相談しようか迷っていると、またスマホが震えた。
「まいちゃんはお悩み中?」
「うん...... どれがいいかなって、迷ってて......」
「これいいかなって候補はある?」
いくつか引っ張り出して並べてみた。
どれにしようか決められなくて、結局三つ残った。
そのまま写真を送った。
すぐに返信が来た。
「どの辺で悩んでる?」
「カジュアルもいいかなって思うけど......なんか、かわいいのとか大人っぽいのも気になって......」
「まいちゃんは、どうして悩んじゃってるかわかる?」
「わからないけど......なんか、ちゃんとしたいなって思って......」
気がつくと、スマホを強く握って返信を待っていた。
返信が来るまでの時間が、少しだけ長く感じた。
「まいちゃんは、誰にちゃんと見られたいんだろうね?」
ドキッとした。
誰に、なんだろう......
何度も打っては消してを繰り返していると、スマホが震えた。
「ま、今はいいかな」
「ちゃんとって感じなら、ロングスカートのほうがそれっぽいかもね」
「ありがとう もう少し考えてみるね」
スマホを閉じて、鏡の前で服を合わせてみた。
ちゃんとならこれかな......?
試しにワイドパンツも合わせたけど、何か違う気がした。
もう一度、水色のロングスカートを合わせてみた。
......うん、これがいいかな。
変じゃないかなって何度か確認してから、クローゼットに服を戻した。
ちゃんとしてるって思ってくれるかな。
明日のことを考えながらベッドに入った。
枕元のぬいぐるみを、なんとなく撫でていると、少しだけ落ち着いた気がした。




