第10話 約束とプリクラ
クレーンゲームを回っていると、さきちゃんが口を開いた。
「谷口くんたちはゴールデンウィークどこか行くの?」
そういえば、そろそろそんな時期だね。
しゅんくんたちはお互いに顔を見合わせてから言った。
「てきとーに遊ぼうと思う」
「特に決めてなかったな」
「なら、今日みたいにどこかで遊ばない?ね、まいちゃんもどう?」
さきちゃんは私に確認しながら言った。
ゴールデンウィーク中は、お菓子作るくらいしか予定がなかったし......
それに、ゴールデンウィークもしゅんくんと会えるし......
「俺はいいよ!どこ行く?」
鈴木くんも斎藤くんも頷いていた。
「私も、行けるよ」
ちょっと楽しみだな......
「みんなは行きたいとこある?」
さきちゃんは少し考えてから言った。
しばらくみんなで顔を見合わせたけど案が出なかった。
すると、さきちゃんが言った。
「それじゃ、あとで決めよっか。LINEグル作っちゃうね」
そう言うとさきちゃんはスマホを操作した。
しばらくすると、私のスマホの通知が鳴った。
「よし、できたよ~」
さきちゃんはそう言いながら私たちを見渡した。
その途中でさきちゃんは目を止めた。
「あ、せっかくだからプリ撮らない?」
さきちゃんの目を追うと、そこにはプリクラの機械があった。
「いいね!」
しゅんくんは目を輝かせて頷いた。
「谷口くんたちはプリ撮ったことある?」
さきちゃんが聞くと、鈴木くんが答えた。
「俺らは女子グループと遊びに来る時ぐらいか?」
しゅんくんは他の子とも撮ったことあるんだ......
少しモヤモヤしている間にも、さきちゃんたちは話を続けていた。
「なら、ポーズ決めてやらない?」
「何にする?俺こういうのやってみたい!」
しゅんくんは手でハートを作りながら言った。
「あ、いいね。なら私はこれやりたい」
さきちゃんは小顔のポーズをやりながら言った。
しばらく私たちは、どんなポーズをするか相談していた。
ポーズが決まるとプリクラの機械に入った。
「並びどうしよっか?」
さきちゃんが私たちを見ながら口を開いた。
「俺らが後ろで、まいちゃんと伊藤さんが前でいいんじゃない?」
しゅんくんはすぐに答えた。
「りょーかい。まいちゃんおいで~」
私がさきちゃんの隣に行くと、さきちゃんが小声で言ってきた。
「谷口くんと隣じゃなくて残念だね」
「別に......」
私も小声で答えた。
そんな話をしている間に、しゅんくんたちも後ろに並んだ。
「それじゃ撮っていこ~」
そう言ってさきちゃんが操作をした。
すると、画面に私たちの姿が映った。
「あ、もう少し谷口くんたちよって~。はみ出てる」
さきちゃんがしゅんくんたちに言った。
いつもより近い気がする......
汗のにおい、大丈夫だよね......?
そう思っている間にアナウンスが進んでいた。
「まずはハートからやろっか」
さきちゃんが両手でハートを作ってみんなに振り返った。
さきちゃんに言われて、しゅんくんが取ってくれた犬のぬいぐるみを
バッグに入れてから、私も両手でハートを作った。
しゅんくんたちも両手で作っていた。
すぐ後ろにしゅんくんがいて落ち着かなかった。
画面でカウントダウンが表示された。
「3、2、1!」
シャッター音のあと、次のポーズが表示された。
「次は小顔ポーズやろっか」
また、さきちゃんが実際にやりながら言った。
私もさきちゃんと同じように両手を頬の横に置いた。
後ろでしゅんくんたちも同じポーズをしている。
さきちゃんが小声で言ってきた。
「まいちゃん、表情硬いよ。もう少し笑顔笑顔」
少しぎこちなく頬を上げた。
すると、画面でカウントダウンが表示された。
「3、2、1!」
シャッター音のあと、次のポーズが表示された。
その後もピースや笑顔をしながら何枚か撮った。
アナウンスが「次は落書きだよ」と流れた。
「谷口くんたちも落書きしよ」
「俺らあんまわかんないな......」
しゅんくんが珍しく困っていた。
「いつも女子に任せてたしな」
鈴木くんも少し考えていた。
「名前とか今思ってること書けばいいよ~。あとは、まいちゃんに思ってることとか?」
さきちゃんは少し意地悪な顔をしていた。
「なるほど!頑張るぞー!」
さきちゃんの言葉を聞いて、しゅんくんはやる気を出していた。
私たちは交代でらくがきをしていった。
私は名前と「GW楽しみ」を書いて、
ペンで周りにハートと星を描いた。
みんなが書き終わってしばらくすると、プリクラが出てきた。
さきちゃんがみんなの分をわけて、しゅんくんに渡しながら言った。
「はい、谷口くん。すっごくかわいくできたね」
「ありがとう!あ、ほんとだ。かわいい!」
一瞬、ドキッとした。
しゅんくんはあくまで、プリクラ全体がかわいいって言っただけだし......
私は何かに言い訳をしながら、顔を見られないように俯いた。
その間も、さきちゃんはプリクラを分けて配っていた。
顔の熱が少し収まったころ、さきちゃんが私にもプリクラを渡してくれた。
「はい、まいちゃん」
するとさきちゃんが小声で言ってきた。
「谷口くんにかわいいって言われちゃったね」
「っ...... プリクラが、でしょ......」
自分でも顔が赤くなってるのがわかりながら、かすれた声で答えた。
「どうだろうね~。まいちゃんは、どっちが嬉しい?」
そう言い残して、さきちゃんはみんなのところに戻っていった。
別に私は......
そのあともゲームセンターを一通り回ったけど、
何度もしゅんくんが「かわいい」って言ったのを思い出してしまった。
ずっと心臓がうるさかった気がした。




