第9話 放課後と約束
午前中の授業は、少し船をこぎながら受けていた。
昨日は遊びに行くことを考えていたら眠っていた。
しゅんくんの背中を見ていると、少しだけ眠気が遠のいた気がした。
今日もお昼はみんなと一緒に食べていた。
しゅんくんに話を振られて、頬が緩んだけど、
気が付いたら放課後のことを考えちゃって、少し上の空で会話をしていた。
さきちゃんは私に「大丈夫?」って目で聞いてくれたけど、
私はくすぐったく笑うしかなかった。
放課後、さきちゃん以外の人と遊ぶの久しぶりだから、
少しだけわくわくしているのを自覚していた。
しゅんくんと一緒なのも、嬉しいけど......
やっと放課後になった。
私は急いでバッグに教科書を詰め込んで、
少し駆け足になりながら、しゅんくんたちのところに行った。
「準備できたよ。行こ......?」
「まいちゃん! うん、行こう! 伊藤さんは昇降口?」
「うん。先に行ってるって」
さきちゃんからLINEが来ていたのを思い出しながら言った。
昇降口に着くと、さきちゃんが待っていた。
「あ、来た来た」
「お待たせ。さきちゃん」
「伊藤さんも合流したし向かおう!」
5人で駅前のゲームセンターに歩き出した。
歩きながらしゅんくんが口を開いた。
「まいちゃんと伊藤さんはよくゲーセン行く?」
「私たちはあんまりかな~。たまにプリ撮りに行くくらいだよね?」
「うん。一人だとあまり行かないかな」
私は頷きながら答えた。
「谷口くんたちはゲームセンターでなにやってるの?」
「俺らは対戦系!」
「あとはたまにクレゲとかメダルゲーだな」
鈴木くんが教えてくれた。
そんな話をしている間に、ゲームセンターの喧騒が聞こえてきた。
ゲームセンターに入ると、しゅんくんが言った。
「そういえば、どこ回ろう?」
「まさか決めてなかったのか?誘っといて?」
鈴木くんが呆れたように言った。
私はおかしくて笑っていると、ふと小さい犬のぬいぐるみが入ったクレーンゲームが目に入った。
「まいちゃん、あれが気になるの?」
私が見ているのに気が付いて、さきちゃんが言った。
「うん。かわいいなって......」
するとしゅんくんが、思いついたように言った。
「なら俺が取るよ!」
「いいの?」
「任せろ!」
「こいつ意外と上手だからさ」
鈴木くんが横から言った。
「なら、お願いしてもいい?」
私が聞くと、しゅんくんは楽しそうに頷いてくれた。
しゅんくんがクレーンゲームに向き合って、アームを何回か動かした。
すると、小さい犬のぬいぐるみがぽとんと取り出し口に落ちた。
しゅんくんは取り出し口からぬいぐるみを取り出すと、私に渡してくれた。
「はい、まいちゃん!」
「ありがとう。大切にするね。あ、お金......」
私がお財布を取り出そうとするとしゅんくんが言った。
「あげるよ。まいちゃんすっごい欲しそうだったし」
「あ、ありがとう。大切にするね......」
落とさないように両手で抱えながら、私はそう言った。
しゅんくんを見ていると少し鼓動が早くなっていた。
しゅんくんから目を逸らしていると、さきちゃんが小声で言ってきた。
「よかったね、まいちゃん。その子谷口くんに似てるね」
さきちゃんを見るといたずらっぽい表情になっていた。
自分でもわかるくらい顔が熱くなった。
誤魔化したくて私は俯いた。
俯いている間に、しゅんくんたちは次どうするかを話し合っていた。
顔の熱が冷めて、私は顔を上げた。
すると、しゅんくんが言った。
「とりあえず他のクレーンゲームも回ろう!」
色んなぬいぐるみやお菓子を見ながら回った。
手の中にあるぬいぐるみが、少し暖かく感じた。




