第6話 お昼と約束
午前の授業中は、気が付いたらしゅんくんを目で追っていた。
そのたびに、朝しゅんくんが「まいちゃん」って呼んでくれたことを思い出して、
少しくすぐったくなった。
しゅんくんに、見ていることがバレないか、ドキドキした。
お昼のチャイムが鳴るまでの時間は、短かった気もするし、長くも感じた。
チャイムが鳴ると、教室はいつもの騒がしさになった。
お弁当をバッグから取り出していると、さきちゃんが来た。
「まいちゃん、お昼食べよ~」
頷きながら、しゅんくんたちの方を見る。
すると、お弁当を持ったしゅんくんたちが、ちょうど私の机の方に歩いてきていた。
「まいちゃん!今日もお昼一緒に食べない?」
また「まいちゃん」って呼ばれて、くすぐったくなりながら答えた。
「うん。いいよ」
私たちは机を囲んで、お昼にした。
「そういえば谷、いつの間に佐々木さんのこと、下の名前で呼び始めたんだ?」
鈴木くんが思い出したように、しゅんくんに聞いた。
その言葉を聞いて、心臓の鼓動が少し早くなる。
思わず、しゅんくんの方を見た。
「今日の朝だな。まいちゃんに呼んでいいって言われたから」
しゅんくんは、いつものように答えた。
鈴木くんも「ふーん」みたいに頷いていた。
ドキドキしてるの、私だけなのかな?
さきちゃんはなんかニヤニヤしてるし......
誤魔化したくて、ふと思い出したことを話した。
「あ、あのね?一昨日、ま......お母さんに、最近お菓子作る頻度増えてるから減らしてって言われちゃって。だから、しばらくは同じの持ってくるね」
「まいちゃんのお菓子、全部美味しいから楽しみ!」
私の言葉が終わると、しゅんくんはすぐに答えてくれた。
「とうとう注意出ちゃったか~。禁止にならなくてよかったね」
さきちゃんは少し呆れながら言った。
「え?食べられなくなっちゃうの......?」
しゅんくんは、落ち込んだ子犬みたいに聞いてきた。
「ま、まだ注意だから大丈夫だと思うよ?」
しゅんくんがおかしくて、思わず声が弾んだ。
楽しみにしてくれてるんだ。
嬉しい......
その後は、昨日のテレビの話をしているうちに、お弁当を食べ終えた。
みんなが食べ終わったタイミングで、私はパウンドケーキを配った。
しゅんくんは目を輝かせながら聞いてきた。
「これ、朝の?」
朝、しゅんくんに渡しちゃったけど、少し多めに持ってきてよかった......
「うん。パウンドケーキだよ」
「やった!まいちゃんのすっごい美味しいんだ」
しゅんくんは、少し自慢げに言った。
素直に褒められて、目を合わせられなくなっていると、鈴木くんが言った。
「なんで谷が偉そうなんだ?そりゃ佐々木さんのは美味いが」
「でしょ?」
しゅんくんは当たり前みたいに言った。
頬が赤くなっているのを見られたくなくて、机に目を落とした。
視界の端で、さきちゃんはニヤニヤしていたけど、
しゅんくんたちは、まだ私のお菓子の話をしていた。




