第1話 カップケーキと約束
高校2年生になって、家で作ってきたお菓子を、
お昼休みに食べるのが私は楽しみだった。
今日もいつものように、お昼のお弁当を食べ終わり、
カップケーキを入れてきた袋を取り出す。
クラスは賑やかにお昼を楽しんでいるけれど、
私は端の方で一人カップケーキを食べている。
去年までは、友達と一緒にお菓子を食べて楽しかったのにな......
早く、いっぱい話せる友達が欲しいなと思いながら、
チョコチップが乗ったカップケーキを頬張った。
こんなにチョコチップは甘いのに、現実は甘くないな......と現実逃避していると、
谷口くんが声をかけてきた。
「佐々木さん、よくお菓子食べてるけど、それ、手作りか?」
少し肩がはねた。
乱れた心臓を整えながら、彼の後ろを見ると鈴木くんと斎藤くんもいた。
からかいかな......
小声で「言った~」とか言ってるし。
とりあえず、適当に相手しておこう。
「そうだよ?なにか用?」
何度も見てたの?
できるだけ愛想は良く言ったつもりだけど、少し冷たく聞こえたかも?
でも仕方ないよね?急に話しかけてくるんだもん。
彼は少し考えるそぶりを見せた後、思い切ったような表情で声を出した。
「おいしそうだから、良ければ一つくれないか?」
どういうことなんだろう?
まだ何個かあるし、1つくらいならいいかな。
男の子にお菓子渡すことって、あまりなかったなと思い出した。
少し手が震えながら、私は袋から1つ取り出して彼に渡した。
「はい」
どんな反応をするんだろうと、気が付いたら彼の顔を見ていた。
彼は口に含む前に目を輝かせながら、私の作ったカップケーキを見ていた。
形は変じゃないけど、そんなに見られると緊張する......
少し心臓がうるさいかも。
彼は嬉しそうにカップケーキを口に含んだ。
飲み込むと、彼は少し早口で話し始めた。
「すっごいおいしいな。甘さもちょうどいいし。これなら何個でも食べられそうだな」
嬉しいけど、そんなに素直に褒められると気まずい。
「あ、ありがと......」
私は目を逸らして彼の後ろを見ると、
彼の友達の鈴木くんと斎藤くんが羨ましそうに見ていた。
少しでもこの気まずい空気から逃げようと思って、2人に声をかけた。
「......2人も、食べる?」
2人は嬉しそうに私の机を囲んで、カップケーキを頬張った。
「マジだ。うまっ」
「毎日でも食べたいな」
なんでこんなに褒めてくるの......
絶対顔赤くなってる......
私は顔を隠すように、つい机を見ながら答えた。
「あ、ありがと......」
すると谷口くんは、楽しそうに声をかけてきた。
「よかったら、佐々木さんがまた作ってきたの、食べさせてくれない?」
私は思わず顔を上げてしまった。
そこには素直に「また食べたい」って表情が顔に出ていた。
私には少し眩しく見えた。
思わずまた目を逸らしながら答えた。
「き、気が向いたらね......いいよ」
彼は尻尾があったら、いっぱい振ってそうな笑顔になった。
「ありがとう!楽しみにしてる!」
「あ、谷口ずりーぞ!」
「俺も食べたい!」
私は恥ずかしさと呆れが混ざった感情のまま答えた。
「気が向いたらね」
今日は少し頑張って作ろうかな......
こうして、私と谷口くんとの、ほんの少し変わった関係が始まった。
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