俺たちの家
休憩から20分ほど歩いただろうか。女の子の足が止まり、鞄の中の俺を覗き込む
「着いたよ!」
どうだ!と言わんばかりに鞄から俺を上にあげる
周りは人の気配が全くない森。木々の間に隠れるように黄色いテントがぽつんと置いてあった
家…?なのか?大人1人が寝るには小さすぎるテント。周りを見渡すが、ほかの人と暮らしていた様子もない。ここに一人で住んでいたのか。いったいどれくらい…
おどろいている俺の表情を見て
「かっこいいでしょ!私のおうち!これからは2人の家だよ!」
かっこいいのか?いや、かっこいいことにしよう。
「にゃあ」と返事をするように俺は鳴いた
「私はここを守る隊長のエナ!あなたの名前はー…」
俺は井上真だ。なんて言えるわけもなく。ここは第二の人生として新しい名前が欲しい
俺と女の子は首をかしげる。
「うーーーん。うーーーん」「にゃあ…」
人に名前を付けるって難しいよな。適当でいいんだぜ。
「よし!決まました。あなたの名前はファスト!」
ファストか。なかなか良い名前だ。
「私がピンチの時はすごい速さで駆けつけてきてね!副隊長!」
しししと歯を見せて笑う彼女を見て、俺もつられて笑ってしまった。さっきまで体を震わせていたのに。この子はきっと強い子なんだな。
「なんか今日は疲れちゃったなぁ…ちょっと早いけど寝ようか」
辺りは夕方くらいか?暗くなり始めている時間だ。小さいのにたくさん歩いたんだ。
俺も今日はいろいろあった。考えたいこともたくさんあるが今日は寝るとしよう
「おやすみなさいファスト」
俺たちは布団とは到底呼べないペラペラの毛布にくるまって寝た。
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兵士たちの本部にて
「アンドエイド様。この度は大変申し訳ございません」
「見つかりませんでしたね。まぁもう街からは離れているでしょう。」
「今回の失態はわたくしの責任として…ですがあの…私にも家族が…」
「あぁ大丈夫ですよ。先ほども言ったようにあなたの責任ではありません。僕からは何もないです」
アンドエイドの言葉に安堵する兵士。
「ですが…あなたの奥さんが今回の黒猫と繋がっているのではと。だからあなたはワザと逃がしたのではないのかと…言う声もありましてね」
「え…は…妻ですか?そんなのデタラメです。私の妻と今回の件は全くの無関係です!!!」
「そうですよね。僕もそんな噂信じてません」
「アンドエイド様…」
「でも、万が一あなたの奥さんが魔女だったら?あなたはどうしますか?私から逃げますか?私に妻を差し出しますか?あなたの奥さんが魔女じゃないという証拠は?生まれてからあなたに出会うまでの彼女のすべてをあなたは知っていますか?」
「い、や、でも…妻は魔女じゃありません!」
「そうですか」
彼の妻を想う熱意に何かを感じたのか、彼は両手をパンッと叩き
「ではこの話は終わりです。くだらない噂話を言ってしまい申し訳ありません。もう下がってください」
「は!!失礼いたします!」
男が去った後すぐに部屋の扉が開く。
先ほどの鎧の兵士とは違い、黒い服に白いお面をつけている男が立っていた。お面の真ん中には黒い太陽
「火あぶりでいいですよ」
「はい。あの男に7歳になる息子がいますが」
「あぁ…息子はこちらで保護して、両親は魔女に殺されたとでも言っといてください」
「かしこまりました」
「太陽の加護がありますように」といい男は部屋から消えた。
その日の晩、仲のいいことで評判だった夫婦が謎の炎で死んだ。
その日は7歳の息子の誕生日だった。
「魔女の仕業だ」




