犠牲になっても
「今ここで捕まってください。2人の中に少しでも罪悪感があるなら、今ここでウィッチハント協会に捕まってください!」
罪悪感ならある。でも俺とエナは何もしていないんだ。
今ここで捕まったら、お前らは俺とエナを殺すだろ?
「嘘をついていたこと、悪いと思っている。ごめん。
でも、俺たちは捕まるわけにはいかないんだ。」
そうだ。捕まるわけにはいかない。
でもこの状況からどうやって抜け出せばいいかわからない。
(クロ、聞こえるか?ここからエナと俺を逃がせるか?)
・・・
返事がない。
(おい。聞こえないのか?クロ。)
・・・
なんで何も言ってくれないんだ?
クロがいなかったら、今二人でここから逃げ出せない。
「エナちゃん…エナちゃんは私たちの事どう思ってたの?私とセイト、バルブを殺そうとしてたの?」
「わ、わたしは・・・3人のことを殺そうとなんてしてない・・・」
「私たちの親は魔女に殺されたの。
お母さんは私と一緒にご飯を作っているときに、隣で炎に包まれて・・・必死に炎を消そうとしたの に、私はお母さんを助けられなかった。なんで?お母さんとお父さんは何で殺されたの?私たちは普通に暮らしていただけなのに!ほかの人もそう。普通に暮らしているだけの人が、今も突然炎に包まれて殺されてる!あなたたち魔女に!!楽しい?人間を殺して・・・私たちの家族を奪って。」
セイナは両腕に付けていた手袋を外す。
腕は火傷の痕だらけだ。
どれだけ必死に・・・助けようとしたのかがわかる。
「俺とエナは一人も人間を誓って殺したことがないし、魔女だってそうだ。魔女のやつらも殺してない。殺してるのは別のやつらだ。そいつらが魔女達が殺したって噂を流しているだけだ」
「はっ。誰がそんなの信じるんですか!!2人とも耳を傾けてはダメですよ。こんな悪魔たちの声。
魔女は皆処刑されるべきだ。殺したことがない?そんなの信じるわけないでしょ」
バルブはもう俺たちが何を言っても聞いてくれない。
もう・・・信じてくれって言っても無駄なんだな・・・
「セイト、セイナ・・・信じてくれ。魔女も俺たちも何もしてないんだ。俺たちは、ウィッチハント協会が本当の黒幕なんじゃないかと思ってる。信じてくれ・・・」
「そ、そんなの信じられるわけ・・・」
セイナが涙を拭きながらセイトの方を見る。
「信じられねぇよ・・・」
2人とも信じてくれないか・・・
「ウィッチハント協会が…なんですか?」
後ろからの突然の声にゾワっと体の毛が逆立つ。
「エナ!」
俺は振り返り、その男とエナの間に立つ。
その男は、いつの間にか俺たちの後ろに立っていた。
見たことがある。街で見た紫色のローブのやつだ。
「そんなに敵意を出さないでください。合図が遅いから様子を見に来ただけです」
男は目を閉じているが、しっかりと俺とエナの方を見ている。
「街でお会いした以来ですね」
こいつ…やっぱりあの時鞄の中にいた俺に気づいていたんだ。
気づいていたから、手配書に俺とエナの顔を載せたんだ。
「アンドエイド様!僕が、連絡したバルブです!僕がこの悪魔たちを見つけました!」
「あぁ、あなたが報告してくれた方ですか。ありがとうございます」
「あの、彼女は…、ケリンが魔女って話は・・・」
ケリン…バルブの文通相手の事か。魔女って疑われているっていう‥
「大丈夫ですよ。約束通り彼女は解放します」
「あぁ、ありがとうございます。ありがとうございます。」
バルブはその場にしゃがみ込み泣いている。
そうだよな。
大切な人を守ろうとしている気持ちもわかる
俺だってエナを助けられるなら正直この三人を殺してもいいと思ってる。
俺だってバルブと一緒なんだ。
俺だって大切な人がいるんだ
「なぁ。俺のことを連れてって焼くなり煮るなりしてもいい。
その代わり、この子のことは見逃してくれないか・・・」
「ファスト!そんなの絶対ダメ!」
後ろでエナが泣いているのがわかる。
きっとこいつらはエナのことも殺すだろう。
こんなの無意味な頼みってわかってるんだ。
「お願いします」
弱い俺にはこれしかできないんだ。




