うそつき
「うわぁ!いい天気!!」
「はちみつ日和だー!」
今日も朝からエナとセイナは仲良く元気だ。
はちみつ日和って意味はわからんが…
「バルブさんもおはよ!」
エナが元気に挨拶してるっていうのに、バルブは小声で返事をして朝ごはんの準備をしている。
婚約者がいるからってエナにその態度はなんだ。
と言いたいところだが、雰囲気が悪くなるのもアレなんで、俺は突っ込まなかった。
「バルブのやつ…こりゃ本当に昨日フラれたか?」
起きてきたセイトもバルブの元気の無さに気付く。
まあ、言ってることは無神経だけどな…
「フラれてません!」
そんなに怒らなくても…
まあ、思春期男子って感じだな。
可愛いもんだ。
「2人とも朝からイライラしないでよ〜」
「俺はしてねえよ。バルブが勝手に怒ったんだろ」
いーや。今のはセイトが悪いね。
「僕が言い過ぎました。すみません…」
バルブはすぐ謝れていい子だな。
俺も見習おう…
この3人のやり取りを隣で見るのも今日が最後か…楽しかったな。
最後は笑って別れたいが…
やっぱり別れは悲しいな。濃い時間だった。
「ギガントスズメバチはここから歩いて2時間くらいのところだよ!準備はいいかー!」
「おー!」
エナとセイナを先頭に俺たちは出発した。
2人のほのぼのとした会話を後ろで聞くのが楽しい。
2人の後に続くように俺とセイト、バルブの順で歩く。
バルブはやっぱり落ち込んでいるように見えて、元気がない。
こりゃ本当にフラれたのかもな…
俺に恋のアドバイスなんて出来ないし、バルブの恋がうまく行くよう祈っておくよ…
みんなとの旅も最後だからか、目的地まであっという間だった。
目的地の場所は、ひらけた場所で、草原の真ん中に一本の大きい木が立っていた。
おお。この木にギガントスズメバチがいるのか?
見当たらないが…
「あれー。いつもなら大きい巣があるんだけど…」
セイナたちも予想外みたいだ。
「あ!みて!」
エナが木の裏側で何かを見つけたみたいだ。
俺たちもすぐに駆け寄ると、
巣があったであろう場所が雑に切られている
「誰かが先に来て取ったのかな…?」
ハチミツを楽しみにしていたエナは悲しそうな顔をする。
「こんな雑に取るものじゃ無いんだがな…また同じ所に巣を作ってもらえるように、少し残しとくのがルールなんだ」
セイトたちも予想外のハプニングみたいだ。
どの世界もルールを守れない奴がいるんだな‥
「あ、あの」
ここまで全然話さなかったバルブが声を出す。
「どうしたの?」
みんなが振り返ってバルブの方を見る。
バルブは少し下を向き、考えてるように見える。
「あの。エナさんとファストさんって魔女と例の黒猫…ですか?」
エナと俺を見つめてバルブが言う。
俺の心臓が跳ね上がった。
何で急に?何で今聞いてきた?
「バルブ、急にどうしたの?2人は違うって最初に言ってたでしょ?」
バルブの急な発言に、セイナは動揺しているみたいだ。
「お前なんか今日おかしいぞ」
セイトも流石に少し怒ってる様子だ。
「僕の…文通の彼女から昨日送られてきたんです。僕らの街で黒猫が出たって。隣街の彼女の所にまで伝わってるみたいで…。今街では魔女狩りが起こっていて、魔法を使える彼女も怪しまれてるって…!このままだと魔女狩りで殺されるかもって!!」
「待てよバルブ。落ち着けよ。お前の彼女が今危ない状況なのはわかったけど、それと2人は関係ないだろ!」
セイトが俺たちの為に怒ってくれるのが伝わる。
それと同時にバルブの焦りも感じる。
ごめん。
俺たちが魔女と例の黒猫なんだ。
関係あるんだよ。
ごめん。
「関係あるんです!!!昨日彼女からの手紙と一緒に、手配書も送られてきました。」
バルブはカバンの中から2枚の紙を出す。
そこには俺と、黒髪だけどエナとわかる似顔絵が描かれていた。
「これ、2人ですよね?エナさんは髪の色が違うけど…これ、2人の似顔絵ですよね?」
俺の似顔絵ならわかる。
でも何でエナまで?
どこでバレたんだ。俺がエナといるって…
俺は動揺して何も言えない。
言い訳するべきか?
でも信じてくれるか?
「何か言ってくださいよ!!騙してたんですか!僕たち3人のことを!」
バルブが声を荒げる。
信じてもらえないかもしれないが、ここはエナを守る為に嘘をつくしか…
「俺たちじゃ…
「私たちだよ。私が魔女。ファストが例の黒猫。騙してごめんなさい。」
エナ。何で本当のこと言うんだ。
「うそでしょ…エナ」
「ごめんなさい…」
座り込むセイナにエナが近寄ろうとするが、
「来ないで!!!」
セイナが大声でエナに怒鳴る。
それと同時にセイトが剣を抜きエナに向ける。
俺も咄嗟にエナの前に行き、セイトを威嚇する。
違うんだ。エナに剣を向けるのはやめてくれ。
やるなら俺にしてくれ。
「嘘だよな。俺たちのことずっと騙してて、普通に一緒に過ごして…いつ俺たちのこと殺すつもりだったんだ?」
セイトの剣と声が震えている。
悲しんでいるんじゃない。恐怖の震え方だ
「ち、ちがう!殺そうとなんて思ってない!確かにみんなには嘘を言っていたけど…。私たち何も悪いことしてない!」
「誰がその言葉を信じるんですか」
バルブが手配書の紙を投げて踏む。
「2人の両親も!僕の妹も!みんな殺されました!魔女に!いつものように過ごしていただけなのに!隣で!」
違う。魔女じゃない。
魔女がそんなことしないって今の俺ならわかる。魔女には会ったことないが、クロが誰かに嵌められたように、みんな誰かに騙されてるんだ。魔女が悪い世界になるように。
「違うって言って欲しかった。2人の手配書を見た時も、他人の空似かも、2人じゃないって信じてました」
「街の手配書は俺たちだけど、本当に何もやってないんだ!俺たちはただ森で暮らしてただけで!」
ああ。3人の顔を見たらわかる。
誰も信じてくれない。
誰も俺たち2人の声を聞いてくれない。
クロ。お前がみんなに絶望した意味がわかった気がする。
誰にも届かないんだもんな。
あんなに楽しく過ごした日々も、無かったことになって…
「エナ、取り敢えず逃げろ。俺が3人の相手をするから」
「やだよ。何でみんな信じてくれないの。私とファストは何もしてないのに…」
「今は何言っても無駄だ。とにかく逃げろ」
「無駄です。森の中にはウィッチハント教会の人が待ってます。僕が朝に呼びました。2人が違うって言ったら信じようと思ったのに…」
信じようって思ったなら、呼ばないだろ。
もうバルブは手配書を見た時から、俺たちを信じていない。
だから朝から様子がおかしかったのか。
もっと早く気付いていたら…
なぁ。俺たちが最初に嘘をついていなかったら違ったのか?
本当のことを言っても仲良くしてくれたか?
一緒に行こうって言ってくれたか?
皆で過ごした時間も全部なくなるのか?
エナが魔女で、俺が黒猫だから・・・
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