晩飯野郎
「雨やまないね・・・」
洞窟の外は土砂降りの雨が降っているままだ。
エナの魔法のおかげで体は冷えなくて済むが、このままこの場所に留まるのも危険だ。
「魔女のリリシアさんってどんな人なの?」
確かに。俺も気にはなっていたが、詳しい話は聞いてないな・・・
「おいクロ~エナが聞いてるぞ。リリシアっていう魔女ってどんな人なんだ?」
『どんな人…むずかしいな…』
「いろいろあるだろ。優しい、かわいい、かっこいい、怖い、明るい性格だぞー‥とか?」
かわいい、かっこいいは見た目の話か・・・
『あいつに対して可愛いとかいう感情はなかったからな』
こいつ・・・なんでこの性格で皆に慕われてたんだ?
「じゃあ、周りの人にはなんて言われてたんだ?」
『あぁ・・・それなら、見習い魔女には好かれていたな。よく魔法を教えていたからな』
「へぇー。なら俺にも教えてくれるかな…。」
『俺が教えているだろ・・・』
いや・・・はい。教えていただいていますがね。
なかなか上達しないので…せめて簡単な魔法でも…ね
「あ、やっぱり魔女って髪の毛白いのか?」
「あ!それ私も気になってた!」
『髪か・・・あいつの髪色は確かピンクだったと思うぞ』
「あれ?魔女だから白ってわけじゃないのか?」
エナの髪の毛が白だから、てっきり魔女は白って思ってた・・・
『髪が白い魔女はいるにはいるが…まぁほとんどは白じゃないな』
「魔女は白髪って勝手に思ってたわ」「だねぇ・・」
聞きたいことが沢山あるけど、雨の音もでかいし、
何より、クロが話したことをエナに伝える作業が地味に面倒くさい。
「雨が止むまで寝るかなぁ」
「ファストって本当にずっと寝るよね…」
まぁ、猫ですから。眠たいんだよなぁ・・・。
俺はエナの膝の上に丸まって寝ることにした。
え?中身はおっさんのくせにキモイって?
いやいや。俺は今は猫ですから。前世のことを持ち出すのは話が違いますよ・・・
「何かあったら起こして・・・」
そう言って俺は合法膝枕の上で眠ることにした。
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俺が眠ってから何分経っただろうか。
「ファストおきて」
と、エナに体を揺らされて目が覚める。
「雨・・やんだのか?」
エナの膝から降り、背筋を伸ばして、エナのほうを振り返る。
困った顔をするエナ。何かあったのか?
「どうした?なにか・・・」
なにかあったのか・・・と言いかけて、俺の言葉が止まる。
エナの肩にネズミがいる。ネズミ・・・・グレーの鼠だ。
「あはは、ファストが寝てる間に肩に乗ってきたの。かわいいでしょ」
「エナ・・・そいつを下ろせ。今日の晩飯だ」
猫だからか。本能なのか。ネズミを見ると、衝動的に捕まえたくなる。
「ちょ、!だめだよファスト!この子足を怪我してるし…かわいそうでしょ…?」
えええ。いつもニコニコしながらウサギとか捕まえて食べてるのに・・・
女の子特有のあれだ。ケガしてたらかわいそう。可愛いのに可哀そう…ってやつだ。
確かにネズミは足を怪我している。
エナが自分の服を少しちぎって手当てしたのか・・・
足には丁寧に服の切れ端で作られた包帯のようなものが巻かれている。
「怪我の手当てをしたらね、なんか懐いちゃったみたいなの」
くッ。そんな顔で言われたら…敵わない。
俺は出した爪をそっと元に戻し、襲わないとエナに約束した。
「じゃあ今日からファストとこの子はお友達ってことで!」
エナはネズミを手のひらに乗せて近づけてくる。
そんな笑顔で言われたら断れない・・・。
俺はネズミに手を近づけて爪を出す。
驚いたネズミがエナの肩まで駆け上がり、髪の毛の間に隠れようとしている
「こら!びっくりさせちゃダメでしょ!」
俺の昼寝タイムを邪魔したんだ。これで許してやろう。
だいじょうぶ?・・・と言いながらエナがネズミを撫でる。
撫でられているネズミがエナの手からひょっこり顔を出して、
俺にニヤッとした。
いや、ネズミがそんなことするか?って思うかもしれないが、
確かにネズミは俺を見て笑った。馬鹿にするように・・・
「おいこらネズミ。今すぐ出てこい。晩飯にしてやる」
俺はまた爪を出してネズミを威嚇する
「ダメだって!ファスト!」
エナが慌てて両手を上にあげて、ネズミを守ろうとしている。
こいつ…。夜になったら覚えてろよ‥




