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星になった女の子

作者: 烈火
掲載日:2010/05/16

これは自分の初めて完結させた作品です、所々下手な部分もありますが少しずつ直していくつもりです、最後まで読んでいただけるとさいわいです

死は平等だ  

それはどんなに立派な人間でも悪人であろうとも変わらない、死とはそういうものだ

その日何の罪もない小さな女の子が車にひかれて死んだ、その小さな体で車にひかれたのだ、きっと痛かったろう苦しかったろう悲しかったろう

そして家族が見守る中、女の子は最後の言葉を言う事も出来ずに、息をひきとった

女の子の名前は笹森杏子

まだ七歳という歳で死んだ、当然その女の子と同じ歳の子供たちには死がどんなものなのか分かるはずもなく、先生は一言杏子という女の子は星になってしまったと、まだ小さな子供たちに伝えた

葬式にはたくさんの人が来た、しかし子供たちには何のために葬式に来たのか分からないのだろう、楽しそうに本当に楽しそうに笑っている

その笑顔は葬式の空気に似合うはずもなく、ただただ大人はその笑顔をとても寂しそうに見ていた、しかしただ一人その笑顔を振りまく子供たちの中で涙を流している子が居た

一人の男の子だ、その子はまるで染めているような白い髪でとても目立っている

だからだろう大人たちもその子の涙を流す様子に気付き、堪えきれなくなったのか何人かの大人も泣き出す

その白い髪の男の子は優夜という名前で子供たちの中でも、人一倍笑顔の多い子だったのだがその日の葬式の最中は一度ですら笑顔は見せなかった

「ねえ先生」

葬式が終わった後で目を赤くしている先生に優夜は、何かを聞こうと決めていたのだろう真剣な目で質問をした

「杏子が星になったって本当か?」

先生に対して無遠慮な聞き方だが、優夜の目は真剣なままだ

「えっ!ええ」

一瞬七歳とは思えないほど真剣な眼差しに驚きながらも、優夜の質問に答える

「なら杏子が一人で星になるのは寂しいだろうから、俺も星になるよ」

その言葉に先生だけでなく周りの大人も目から涙がまた溢れ出してくる

「ありがとう優夜君・・・・・・でもね大丈夫杏子ちゃんの周りにはいっぱい他にも星がいるからね」

「でもさ先生俺さ杏子がいじめられないか心配だよ」

優夜には周りの星が星になった杏子をいじめないか、心配だと言っているだけなのだが

その質問に困ってしまう先生の様子に優夜は力強く言う

「だから俺も星になるよ」

「あのね優夜君は星にはなれないの」

「どうして先生そんな事言うのさ!!じゃあ誰なら杏子みたいに星になれるの!?」

一人の少年の大声に周りの大人も注目してくる

しかし優夜はまだ七歳なのだ、死というものを大人や先生が丁寧に説明しても理解は出来ないだろう、それに優夜が冷静さを失っているのに気付いた先生はなんとか落ち着かせようとする

「落ち着いて優夜君」

「うるさい大人なんか嘘つきだ!!」

その純粋な眼差しと言葉は大人たちの胸に突き刺さる、まるでガラスの破片に傷を付けられた様に感じた大人も一人ではないだろう、優しい嘘は罪ではないが、優夜には納得がいかなかった

「優夜お前先生に向かって何て口だ」

父親に口を叩かれる優夜、父親の名前は浩次という、その大きな体は怒りで蒸発しそうだった。もちろん周りの人の注目が恥ずかしいからではない、笹森夫婦の大切な葬式で揉め事起こすのは失礼だと思ったからだ

しかしそれは少年の初めて感じた怒りという感情に、逆に大きな火を起こさせるだけだった。

「何すんだよ!杏子が寂しいのに皆は何で何にもしないのさ!?」

「いい加減にしないか!杏子ちゃんに何もしないだと!?」

浩次は大声でしかりつけ、それに同じく大声で怒りをぶつけあう少年

周りの子供たちや大人まで全員の目が集まっていく

「もう知らない、俺が杏子に会いに行くから!!!」

それだけ言うと走って行ってしまう小さな背中を追いかけようとする浩次の肩に、誰かの手が当てられる

「小野さん、優夜君を許してあげてください」

小野というのは浩次の苗字なのだが、肩に当てられた手は杏子の父親だった

そうでなければ浩次も申し訳なさそうな顔をしなかっただろう、本人も葬式をしている場所で大声を出して子供をしかったのは反省しているのだ

「すいません笹森さん」

「それよりも優夜君には感謝の言葉を言ってあげてください」

「え!?しかし優夜は・・・・」

首をゆっくり振ってから、笹森は本当に嬉しそうに救われたように笑った

「私は優夜君の言葉に思いました、私が・・・・いえ私たちが悲しむだけじゃなく杏子に何かしてあげられないだろうかと、そう思わせてくれて嬉しいんですよ」

彼の横にはいつの間にか杏子の母親が立っていた、その表情は父親と同じで笑顔だった

「まあ笹森さんが、そう言うなら」

浩次の顔にも笑顔が生まれる、感謝されて喜ばない人はいないのだ

しかし笑顔になった造次に怒りの声が飛んできた、声の主は造次の妻である千夏だった

「あんた!!なにへらへら笑顔浮かべてんの?不謹慎だねえ」

「「バシッ」」

と頭を叩かれた浩次の目には痛みからか涙が、あまりの音に皆が心配そうに見る

「ああ、笹森さんはいいですよ笑っていて」

その人物は優夜の母親だった

「はは良いパンチですね」

「褒められるとは恥ずかしいねえ」

漫才のようなやり取りや、快活な女性の声に周りにも笑いがあふれた

たった一人の男の子の真剣で真っ直ぐな言葉のおかげで、たくさんの笑顔が生まれたのだった、その時子供たちが杏子の顔写真も笑ったように見えたというのは後日談だ


                    ・


優夜は家の中である物を作っていた、大きな紙で真剣な顔で紙飛行機を作っているのだ

何も事情を知らない人が見たらただ真剣に大きな紙で紙飛行機を折っている様にしか見えないだろうが、優夜はこの紙飛行機に乗って星まで飛んでいこうと真剣に考えて考え抜いて出た方法なのだ

七歳という歳を考えれば当然なのだが、それでは飛べないと知っている大人たちが見たら指摘してあげることなど出来ないだろう、それほど優夜は真剣なのだから

「よし!出来たぞ」

綺麗に折られた優夜の体の何倍もの大きさもある紙飛行機、それを満足そうに下から上まで見た優夜は外へと走り出す。行き先が決まっているのか足取りには迷いがない

「此処なら大丈夫だろ」

そこは芝生がたくさん生えている大人では小さな、二メートルくらいの段差がある公園だ

だが子供には十分すぎるほどの高さの段差なのだ、優夜の友達の間では此処から下までジャンプして跳び降りられたら自慢できる、なぜなら今だ一人もそこを降りられた子供はいないのだ怖いのは当たり前だろう、優夜の顔にも確かな恐怖の色が見られた

「だっ、大丈夫いけるぞ」

自分に言い聞かせるように言うと優夜は紙飛行機の手で掴む所を持つと、足を踏み出した

優夜の小さな体が本人には永遠と思えたたった数秒の浮遊があり、その後急速に落下した芝生で出来ているとはいえ硬い地面に、足から落ちた優夜は涙目になりながら足を押さえる。痛みを我慢しているのだろう


「痛い!!」

一言大声で言い放つと、すくっと立ち上がった優夜は大きな紙飛行機を一度見つめると、地面に叩きつけた

七歳とはいえ自分の頭を一生懸命に使って考えた方法なのだ、優夜の怒りは当然だろう、今少年の頭にあるのは自分の無力さへの怒りだった

「どうすれば杏子に会える!?」

その場で一度叫ぶと頭を抱えて考え出す優夜、すぐに何かを思いついたのか目を輝かせる

「そうだロケットだ」

優夜の頭に思いついたのは、以前テレビの画面の中で見た火を噴き空へと飛んでいくロケットだった

「よしこれで杏子に会える」

また走り出す優夜だが、しかし向かうのは自分の家ではないようだ

着いたのは公園の近くにある一軒の古びた家だった、そこへ遠慮という言葉を知らない優夜は堂々と家の中へ入っていく

「おーい!じいさん来たぞ」

そうして奥に入っていくと一人の老人が体中に泥をつけながら、倉庫のような所から出てくる、優夜を見ると勝手に家の中に入ってきた事を怒りもせずニッコリと嬉しそうに笑うと、台所からお茶とお菓子を持ってくる

「どうした優夜何か用か?」

人柄の良さそうな笑顔のまま老人は優夜にお菓子を渡そうとするが、優夜は少し物欲しそうな顔をするが用事を思い出し、切羽詰まった様子で話を切り出す

「あのさ、じいさん俺にたくさんの粘土をくれないか?」

「ああ、いいぞ」

即答する老人

「じゃ、じゃあ!!」

「しかし二つ優夜にしてほしい事があるんじゃ」

その言葉に不安そうな表情を作る優夜、あまり人に何かを頼む人ではないからどんな厄介ごとを頼まれるかが心配なのだ

「心配するな優夜、簡単に出来ることじゃ」

「何だよ俺にしてほしいことって?」

優夜はまだ不安の残る顔で老人に聞く、その顔は杏子に会うために一生懸命な顔だ

「一つはワシをじいさんではなく勇五郎と呼ぶこと」

「ああ分かった」

安心したのか優夜はため息をつく、少しだけ不安が消えたのかその表情には余裕が戻ってくる

「二つめはワシの肩たたきを此処に来た時はしてくれんかの?」

「え?それだけかじいさん」

「これ勇五郎じゃ」

「あっ勇五郎・・・・・さん」

それに満足したのか嬉しそうに頷く勇五郎

「それで粘土の量だがどのぐらい要るのじゃ?」

「ロケット作るぐらい!!」

「ロケット?」

その言葉に首を傾げる勇五郎、当然の反応といえるだろう

「工作でもするのか?」

「違う杏子に会うためだ!」

その答えに驚いたように目を大きく開ける勇五郎、しかし何かを理解したのか優夜にとても優しそうな目を向けると

「分かったロケットぐらいじゃな?」

「うん!」

五分ほどたってから勇五郎は倉庫から戻ってきた、その手には優夜がギリギリ持てる量の粘土があった、実は勇五郎は粘土で土器などを作るのが趣味なのだ

「少ないよ勇五郎さん」

「じゃからこれから毎日でなくともいいが、此処に来られる日は来て少しずつでいいから取りに来るといい」

「分かったよ勇五郎さん、あんがと」

粘土を受け取ると外に出て行こうとする優夜の肩を掴む勇五郎

「待て待て、肩叩きをしていってくれるかの?」

それを断るわけにもいかず、優夜はしぶしぶといった様子で肩を優しく叩き始めた。


                    ・


勇五郎から貰った粘土を持って家に帰った、優夜を待っていたのは母の怒りの声だった

「今何時だと思ってるの?それに人前であんな大声!!」

ビクッと体を強張らせる優夜まだ何か言われると思ったのだ、しかし追撃はいつまで待ってもこないからか、おそるおそる目を開けた優夜には笑顔の母親の姿があった

「優夜あんたは優しい子だねえ、杏子ちゃんのこと心配して」

頭をグシグシと撫でられる優夜、その顔にも笑顔が戻る

「しかし優夜、その粘土は何だい?」

「あのさ、この粘土でロケット作って杏子に会いに行くんだ!!」

その言葉に本当に嬉しそうに、しかし寂しそうに千夏は笑った  

「そうかい、がんばりな」

「うん!!」

優夜は母親の事が好きだ、しかし優夜は小野の家の子供ではないのだ

それをはっきりと表すのは優夜の髪の毛は地毛が白いのに、小野家の親戚にも母親にも父親にも白髪はいないという事実だ、優夜を外国の子供だと知っていたにも関らず引き取ったのが、今の優夜の両親だった。

優夜はまだ知らないのだ、今の両親が本当の親ではないということを

「優夜・・・・いや何でもないよ」

「??」

優夜が不思議そうに母親の様子に首を傾げた、千夏は何かを言おうとするが思い直したようだった

「本当に何でもないよ、まあ何か私に手伝えることがあったら相談するんだよ?」

「うん!もちろんだよ」

それだけ言うと優夜は玄関に靴を置いて中に入る

「あのさ、親父は?」

「ああ優夜は心配しないでいいよ、私が説教しといたからさ」

「ありがとう母ちゃん」

お礼だけ言ってすぐに部屋に行ってしまう優夜の背中を見つめて、すごく嬉しそうに笑いながら千夏は一言だけ言った

「ありがとう・・・・か」

 

                    ・


部屋に戻った優夜はさっそくロケットの設計図を書いていた、七歳にしては上手な設計図を書く優夜、自分でもその設計図の出来ばえに満足したようだ、その時部屋の扉ノックされる

「優夜入るぞ」

入ってきた造次は、説教をうけたせいか少し疲れ気味の様子だった

「ロケット作ってるんだってな、少し見せてくれるか」

設計図を優夜が渡すと、なかなか上手い絵に感心したのか、感嘆の声をもらす

「かっこいいじゃないか、このロケット。ただもう少し土台大きくした方がいいんじゃないか?」

土台がしっかりしていなければ、ロケットは簡単に壊れてしまうのを心配し、造次がアドバイスするとすぐさま設計図を直し始める

「優夜さっきは悪かったな、怒鳴ったりして」

「別にいいよ」

お互い素直に謝ると、楽しくて仕方ないという様子でどちらともなく笑い出す

「何かあったら相談しろよ、お前の気持ちは分かったから」

「変なの」

「ん?何か変なこと言ったか?」

「母ちゃんと同じようなこと言うから」

その言葉に恥ずかしそうに頭をかき

「まあ・・・・夫婦だからな。自然と同じになるんだよ」

「母ちゃんのほうが立場強いけどな」

冗談で言ったつもりなのだが、造次は図星で言い返せないのか苦笑いする。それを見て優夜は慌てて言葉をつけたす

「でも親父かっこいいって」

「ん?そうか?まっまあな」

満更でもなさそうに豪快に笑う、子供に気を使われるのは情けないが、いつも家族のために頑張っている親父は優夜にとってかっこいい存在なのは本当だった

「ところでその粘土、土倉のおじさんにもらったのか?」

「ん?土倉ってじいさんのことか?そうだけど」

土倉勇五郎と優夜を引き合わせたのは、造次だった。妻に先立たれ子供も大人になって離れて行ってしまったことで、とても寂しそうな勇五郎は優夜に会ってからはすっかり元気を取り戻した

優夜も今ではわざわざ連れていかなくても、自分から昔話や陶器作り、お菓子を貰いに行ったりと、よく遊びに行っていた。二人にとって良い影響があったことに造次はうれしくて笑顔になる

「あのじいさん、名前で呼ばせたり肩たたきさせたりして、ようやく粘土くれたんだ」

「土倉のおじいさんお前のこと気に入ってるからな、また遊びに行ってくれるか?」

恥ずかしがると思っていたのだが、優夜はすぐに答えた

「当ったり前だろ、あのじいさん暇そうだしな」

造次は誰よりも優しくて自慢の息子の頭を撫でながら、ロケット作りのアドバイスを続けるのだった


                     ・


その次の日から優夜にとっては忙しい毎日が続く事になった、ほぼ毎日のように勇五郎の家へと粘土を貰いに行き、怒鳴ってしまった先生や、笹森夫婦に葬式で大声を出してしまったことを謝った。ロケット作りについて話すと、笹森夫婦も先生を通じて学校まで協力してくれることになった

子供の思いつきなのに、こんなに支援を受けられたのは不思議な力が働いていたとしか思えない

しかし事件は突然起こった、公園に置かれたロケットを台風によって起こった強い風が壊してしまったのだ。雨で粘土がもろくなったのも原因だ

「何でだよ?何で、あと少しだったのに」

ロケットの残骸を見ながら優夜はそう呟く、どんなに時間や労力、人の協力を得て作ってきたのかは本人が一番分かっているのだ、ショックの大きさは並ではなかった

その日から優夜は部屋から一歩も出なくなってしまっていた、千夏も浩次もそれにその他の人もただただロケットを壊した台風を恨むしかなかった

「どうしてだよ杏子、俺お前に会いに行けないかもしれない」

今日も部屋に閉じこもっている優夜の顔は、髪と同じように真っ白だ

「どうして・・・・どうして」

そんな優夜の耳に信じられない事に杏子の声が聞こえた

「ありがとう優夜君、私のためにいろいろと」

気付くと目の前には死んでしまったはずの杏子の姿があった、杏子の周りは光り輝いていた

「杏子?杏子なのか!?」

優夜の目には喜びがある、それは幻だったのか現実に起こった奇跡だったのかは分からない、だが優夜には奇跡にしか思えなかった

「もう十分だよ優夜君・・・・。私凄くうれしかった」

その顔には安らぎとうれしさがあった

「私、死ぬ前に言いたかった事があるんだ」

その次の言葉は優夜にとって残酷かもしれない、だってもう二度と杏子に会えないのだから、それでもその言葉を聞きたかった

「何だ?」

思えば杏子はいつも自分の後をついてきて、自分の気持ちをはっきり伝えたり、自分から何かしようとはあまりできなかった、でも今の杏子の目はしっかり前を見据えていた

「私ね、優夜君が大好き」

杏子の目には綺麗な涙があった、それは本当に綺麗で優夜はその涙を一生忘れないことだろう。そうまるで星のような涙

「杏子俺もお前の事好きだよ、だから星になったお前にもう一度会いたかったんだ」

子供同士とはいえ二人の好きは、お互いを大切に感じていることを感じさせた

「そうなの?」

嬉しそうに微笑む杏子

「ああ嘘はつかないよ」

優夜のその瞳が確かに嘘ではないのだと証明していた

「そっか優夜君が前に私に教えてくれたものね、俺は嘘なんてつかないって」

「覚えていたのか?」

恥ずかしそうに頭をかきながら優夜は顔を赤くしている、その時の事をはっきり覚えているのだろう、杏子は話し出した

「私が始めて優夜君に会ったのは私が男の子に公園でいじめられていた時だったよね、それで優夜君がヒーローみたいに助けてくれて、私の事をこれから守ってくれるって言ってくれて、私がそれに嘘だって言ったら優夜君が俺は嘘つかないって」

「よく覚えてるな」

だが優夜もきっとその時の事を覚えているのだろう、顔には懐かしむような顔が浮かんでいた

「嬉しかった、初めて私に居場所が出来たように思えたから」

「そうだったのか」

優夜も杏子の笑顔に照れたように笑う

「私いっつも優夜君に頼ってばかりで情けなかったよね」

「いいや、杏子は俺みたいにばかじゃないし、杏子が後ろにいてくれると何でもできそうなきがしたんだ、杏子は俺にいっぱい勇気とか元気をくれたじゃないか」

「本当にそう思ってくれる?」

「当ったり前だろ」

自信満々に言い放つ、嘘なんて一欠けらもあるはずなかった

「そうだったならうれしいな、優夜君の役に立てて」

声が震えてる、杏子は泣きそうになる自分を抑えているのだ

「そろそろ時間みたい」

そう言った杏子の体はだんだんと靄がかかったように見えなくなっていく

「え?何でだよ?せっかく会えたのにさ」

最初の目的である杏子に会うというのが叶ったとはいえ、また離れるということに悲しみを感じないわけがない

「ゴメン・・・・・でも時間なんだ。大好きだよ優夜君、それとお母さんとお父さんには私を生んでくれてありがとう、ずっと一緒に居たかったって言っておいて」

「杏子俺もう一度お前に会いに行くから、その時は最高の笑顔で会おうな!!」

その優夜の言葉の直後、激しい光で何も見えなくなった

気が付けば優夜ベッドの上だった。慌てて優夜は周りを見るが杏子がもう居ないのを確認すると、部屋から飛び出した

「母さん!!親父!!俺今さ杏子に会ったぜ」

「「優夜!!」」

長い間壁越しにしか声を聞けなかった千夏は大粒の涙を流しながら、優夜を強く抱きしめ浩次にいたっては涙と鼻水で顔が大変な事になっているにも関らず、しっかりとした足取りで千夏と優夜二人を力強く抱く、二人の温もりにうれしくなるが、杏子のことを思い出し抜け出そうと暴れる

「母さん親父、苦しいってば」

優夜の苦しそうな声に二人とも慌てて離れる

「ところで優夜さっき杏子ちゃんに会ったとか、言ってなかったかい?」

「杏子が笹森のお父さんとお母さんに、私を生んでくれてありがとうずっと一緒に居たかったって伝えてくれって言ってたんだ」

「そうか、ぐしゅっ、分かった後で電話して伝えておくからな」

鼻水をすすりながらも浩次はしっかりと返事を返した

「ああ!頼むぜ親父」

「他には何か言っていた?」

千夏がそう聞くと優夜は思い出したのか恥ずかしそうに、顔を赤くしながら答える

「俺に・・・そのいろいろさ」

「そうかい、いろいろかい」

千夏は優夜の様子を見て大体を察したようだった、瞼の裏には優夜の後ろを満面の笑みを浮かべて付いて行く杏子の姿が浮かぶ

「それじゃあ、もう会いに行かなくていいのかい?」

「いや行くよ」

その答えに千夏も浩次も本当に驚く

「俺さ本物のロケットにいつか乗ってやる、それでさ俺杏子に会いに行くよ」


本物・・・・・・。


そう優夜は知っていたのだ粘土のロケットでは空は飛べないのだと

「じゃあ、どうして粘土でロケットなんかを?」

千夏の質問に優夜は即答した

「杏子に見せたかった」

「へ?」

その言葉に千夏が不思議そうな顔をするのを見て、優夜は笑ってしまう

「だからさ、皆で一生懸命作ったロケットを見せてやりたかったんだよ」

そう優夜がしたかったのは、たったそれだけの事だったのだ

「ははは!!なるほどねえ」

千夏は大声で笑い浩次も優夜もつられて笑い出した、その日小野家からは本当に心に響くような笑い声が絶えなかった

                    


それから月日は流れた

その日世界中が見守る中、一人の日本宇宙飛行士と他六名の乗組員によるスペースシャトルの打ち上げが計画されていた

そのスペースシャトルには設計の一部を担当した一人の乗組員によって、名前がつけられた

名を『アンズ』という

そう優夜はあれから血の滲むように勉強し、とうとう乗組員に選ばれたのだ

「3(スリー)」

発車までの秒読みも残り三秒をきった

「2(ツー)」  

優夜の母親と父親は固唾を呑み、優夜に関った者も静まり、杏子の母親と父親もテレビから目を離さない、いや離せるわけがなかった

「1(ワン)」

これまでに優夜に関った全ての人の呼吸が止まった

「ゴー」

大きな音を立てて何の問題もなく飛び出したスペースシャトルに、歓声があちこちで沸き上がっている

それから少ししてシャトル中の乗組員の様子が、テレビに映し出された

その中にはすっかり大人の顔になった優夜と、その手に持つ杏子の写真も映し出されていた。その時杏子が笑ったように見えたと世界中の人から電話がきた

これは後日談なのだが優夜はインタビューで、杏子の写真が笑ったように見えた事について質問をうけると、恥ずかしそうに頭をかきながら

「最高の笑顔だったでしょ?」

そう優夜も最高の笑顔を浮かべて答えたという


この作品を愛してくれると嬉しいです、今思えばとても多感な時期に書いたので自分でも恥ずかしくなるようなところもありますがWでもそこを楽しんでいただけると嬉しいです。少し直したので読みやすくなったかな?

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