接触Ⅱ⑪
「……へ、へえ」私はかろうじてそう呟いたが、本当に口にしたかったのはもちろん、「真の名探偵は自分でそれを名乗ることをしないんだよ」との指摘であった。……「コ●ン」と言いコイツと言い、「陰徳」という言葉を知らないのか?
そんな私の思いをよそに、「こどおじ」はさらに言葉を続けた。
「この街では今、何かが起ころうとしている、おかしいと思ったことはないか? 明らかに異常者が多すぎる、しかもその数は、さらに加速度的に増加し続けている」
「……」確かにそれは否定しないが、オマエもその異常者のうちの一人だろ、しかも代表的な一人だ、と私は言いたかったが、黙って先を促した。
「もちろんただ異常なだけなら許せるのだが、さっきのアイツ、見ただろ? 明らかに何かしでかしてそうな雰囲気を醸し出している、早めに捕らえておかないと、手遅れになるぞ!」
「こどおじ」はいきなり大きな声を出し、「ライオン」の首辺りを拳で殴った。
「……いや、そんなこと言われても……、ていうか何? あんた、さっきの奴が『ヨウギシャ』だ、とか言ってたけど、それは単なるそういう『雰囲気』ということなの? つまりあんたの印象? それで人疑うってヤベエだろ、名誉棄損も甚だしいよ、それとも他に証拠あんの? だったら早く教え」
「じゃあ、貴様が責任をとれよ」
「は?」
「あいつが何かやらかしたら、貴様が全ての責任をとれ」
「……やっぱり、相当イカれてるな」
売り言葉に買い言葉で、本心をそのまま吐露してしまったが、「こどおじ」は全く気にする素振りもなく、というか恐らく聞いてさえいなくて、今度は「ライオン」の首を撫でるようにしながらこう言った。
「それに、貴様は何とも思わなかったのか?」
「は?」
「貴様はあいつを見て、何も思わなかったのか?」
「え? ……いや、まあ、それなりに、妙だなあ、とは思ったけど」
「それが証拠だ」
「え?」
「2人の『名探偵』がどちらも怪しいと直感すること、これ以上に信頼のおける証拠などありはしない、違うか?」
「違うか……って、いや、違いはしないけど……、それよりもまず1つだけ聞かせてくれ、さっきから俺をその『名探偵』とやらに割り当ててくれているようだが、俺は一言も、そんなことは言っていないのだが、なぜだ? いったいどこから、その思い込みが生まれた?」
極めて正当な疑問だったが、「こどおじ」はどうやら私からの質問を受け付ける回路を持っていないようで、応答する代わりにまたしても好きなことを好き放題まくし立てた。
「これまでは1人で何とか食い止めてようとしてきたが、恥ずかしながらそろそろ限界が近い、貴様が手伝ってくれるなら、正直助かる、なあ、どうだ? 2人でこの街を救わないか?」
「……寝言は寝ている間だけほざいてろ」
私はそう言うと、すぐさま行動を開始した。




