第7話
レシピを手にしたエイルとシャルは、すぐにロイドに報告するためにカフェ・フローラに戻った。カフェに入ると、ロイドがカウンターの奥で忙しそうにコーヒーを淹れていた。いつも穏やかな彼の表情は、レシピが消えた件で少し曇っているように見えた。
「マスターさん、ちょっと良いですか?」
エイルが優しく声をかけると、ロイドはゆっくりと顔を上げた。
「おや、君たちか。」
ロイドは二人に気づき、微笑みを浮かべたが、その笑顔にはどこか心配の色が残っていた。
「何か進展があったのかな?」
エイルは頷き、持っていたレシピの紙をロイドに見せた。
「これ、マスターさんのレシピじゃないですか?」
その瞬間、ロイドの顔がパッと明るくなった。
「これは…間違いない!私のレシピだ!」
彼はすぐにレシピを手に取り、内容を確認した。
「ありがとう、エイルくん!一体どこにあったんだい?」
「実は、カフェの外のゴミ箱に混じっていたんです。」
エイルは微笑みながら説明した。
「誰かが間違って他の紙と一緒に捨ててしまったみたいですね。」
ロイドは少し驚いた顔をしたが、すぐにほっとした表情に戻った。
「そうか、誰かが悪意を持って盗んだわけじゃなくて、単なるミスだったんだね。いやぁ、良かった。本当に良かったよ。」
シャルも嬉しそうにロイドを見つめた。
「これでマスターさんの新しいスイーツもまた作れますね!」
「そうだね……。」
ロイドは深く息をつき、安堵の表情を浮かべた。
「週替りの新作を楽しみにしてくれているお客様に、また喜んでもらえるよ。本当にありがとう、二人とも。」
「いえいえ、これも仕事ですから。」
エイルは軽く肩をすくめて微笑んだ。
ロイドは感謝の気持ちを込めて、二人に向けてコーヒーを淹れ始めた。
「こんなことしかできないけれど、お礼に美味しいコーヒーを振る舞わせてくれ。」
「やった!ありがとうございます!」
シャルは嬉しそうに手を叩いた。
カフェの常連客たちも、レシピが見つかったことに安堵した様子で、エイルたちに感謝の言葉を送っていた。