第6話
エイルとシャルは、再びカフェ・フローラを隅々まで詳しく調査することにした。今回は、普段は見逃してしまうような場所に目を向け、レシピが偶然紛れ込んでいる可能性を探るのが目的だ。
「さて、まずは厨房から細かく見ていこう。」
エイルはシャルにそう言うと、早速厨房の隅々まで目を光らせ始めた。棚の上、冷蔵庫の裏、さらには床下まで入念にチェックする。
シャルも懸命に手伝い、レシピがどこかに紛れ込んでいないか探し回っていたが、しばらくの間、何も見つからなかった。
「先輩、やっぱりここには何もないみたいです。」
シャルは少しがっかりした様子で、エイルに報告した。
エイルも手がかりが見つからないことに少し焦燥していたが、諦めることなく次の手段を考えた。
「次は店内だ。カフェの客席や、カウンターの裏、ストレージルームの隅々まで調べてみよう。」
二人はカフェの客席やカウンター周りを調査し始めた。小さな物を見逃さないよう、念入りに探していくが、依然として手がかりは見つからなかった。
「レシピがどこかに紛れ込んだとしても、これだけ探して見つからないのはおかしいですよね。」
シャルは少し疲れた様子で言った。
エイルは考え込みながら、カフェの外に目を向けた。
「確かに。だけど、もしかしたら…僕たちは見落としている場所があるかもしれない。」
エイルの目がカフェのゴミ箱に向けられた。カフェの外に置かれているゴミ箱だ。ふと、エイルは一つの可能性を思いついた。
「シャル、カフェの外のゴミ箱を調べてみよう。もしかしたら、誰かがレシピを無意識に捨ててしまったかもしれない。」
シャルは驚いた表情を見せた。
「えぇ……、ゴミ箱ですか…?でも、レシピがそんなところにあるなんて…」
「だが、可能性はゼロじゃない。誰かが何かの拍子に紙を誤って捨てたのかもしれない。今まで探していなかった場所だし、念のため調べてみる価値はある。」
エイルはそう言うと、シャルを連れてカフェの外へと向かった。
二人はカフェの裏手にあるゴミ箱の蓋を開け、手袋をして中を調べ始めた。「紙」と書かれたゴミの中から、いくつかの紙類が出てきたが、そのほとんどはレシートや広告紙だった。
「うーん、やっぱりここにもないのかな。」
シャルが少し疲れた声で呟いた。
しかし、その時、エイルがふと何かを見つけた。
「待った、シャル。これを見て。」
エイルが手に取ったのは、何枚かの紙が折り重なったもので、その中に見慣れた文字が書かれていた。まさに、ロイドが大事にしていたスイーツのレシピが、他の紙に混じって捨てられていたのだ。
「これ…レシピですか?」
シャルは驚いてエイルの手元を見つめた。
「その通りだよ、シャル。」
エイルは微笑みながらレシピを広げ、確かにそれがロイドの大切にしていたものだと確認した。
「どうやら、誰かがこのレシピを他の紙と一緒に捨ててしまったようだね。」
「良かった!やっと見つかりましたね、先輩。」
シャルはほっとした様子でため息をついた。
エイルは満足げに頷いた。
「うん、これでマスターさんも安心するだろう。結局、誰も悪意を持って盗んだわけではなく、ただのミスだったのかもしれない。」
「これで一件落着ですね。」
シャルは嬉しそうに微笑んだ。
「うーん、まぁ、その通りだね。」
エイルも同じように微笑み返した。
「さあ、マスターさんにこのレシピを返しに行きましょ!」