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小骨が喉に刺さったまま  作者: ユガミヒト
1章「消えたスイーツのレシピ」
4/10

第4話

エイルとシャルは、ロイドから聞いた常連客についての情報を頼りに、その人物を探すことにした。ロイドが言っていた年配の男性は、毎週決まった時間にカフェ・フローラを訪れているということだった。ちょうどその日の午後に彼が来る予定だと聞き、二人は再びカフェへ戻ることにした。


「もうすぐ彼が来るはずだよ。」

エイルは、カフェの窓際の席でコーヒーを飲みながらシャルに言った。


「この手がかりが有力であってほしいね。」


「そうですね、でももし彼が犯人じゃなかったらどうしましょう?」

シャルは心配そうにエイルを見つめた。


エイルは肩をすくめて微笑んだ。

「それならまた次の手がかりを探すだけさ。探偵の仕事は一歩ずつだよ、シャル。」


ちょうどその時、ドアが開き、ロイドが言っていた特徴の年配の男性がカフェに入ってきた。彼は小柄で、薄い灰色の髪を持ち、上品なスーツを着ていた。静かにカウンターに近づき、慣れた様子でコーヒーとスイーツを注文した。


「彼が例の常連客だね。」

エイルは小声でシャルに言い、二人は慎重に立ち上がって男性に近づいた。


「すみません、少しお時間をいただけますか?」

エイルが穏やかに声をかけると、男性は驚いたように顔を上げた。


「何かご用ですかな?」

男性は少し警戒心を抱いている様子で、二人を見つめた。


「私たちはエイル探偵事務所の者です。このカフェのスイーツレシピに関して、少しお話を伺いたくて。」

エイルは冷静に話し始めた。


「探偵だって?レシピに関してか…」

男性はしばらく黙り込んだ後、少し考え込んだ表情を見せた。

「なるほど、確かに私はスイーツのレシピに興味があったが、何か問題でも?」


「いや、ただお聞きしたいだけなんです。どうしてそのレシピにそんなに興味をお持ちなんですか?」

エイルは相手の反応を探りながら質問を続けた。


男性は少し微笑んで、ゆっくりと答えた。

「私は料理が趣味でね。特に、このカフェのスイーツは素晴らしい出来栄えだ。自分で作ってみたくて、どうしてもレシピが知りたかったんだよ。」


シャルが興味津々に身を乗り出した。

「じゃあ、レシピを盗もうとしたんですか?」


男性は驚いた表情でシャルを見つめた。

「まさか、そんなことはしないさ。ただ、マスターに何度か尋ねてみたが、当然のことながら教えてはくれなかった。それで、諦めることにしたんだよ。」


エイルは少し首をかしげながら、男性の言葉を慎重に聞いていた。

「なるほど。しかし、レシピが消えた日、その時間帯にこのカフェにいたというのは本当ですね?」


男性は少し動揺しながらも、ゆっくりと頷いた。

「ええ、その通りだ。だが、私は何も盗んでいない。そんなことをする理由もないし、私にとってはただの趣味だからね。レシピを無理やり手に入れようとは思わないよ。」


エイルはその言葉を聞いて、しばらく考え込んだ。彼の言葉には嘘の気配は感じられなかったが、まだ確信は持てない。シャルも少し不安げにエイルを見上げていた。


「もしよろしければ、その日どのような行動を取っていたか、もう少し詳しく教えていただけますか?」

エイルが慎重に尋ねた。


「わかったよ。」

男性は静かに頷き、話を続けた。


「その日は、いつも通り午後にこのカフェに来て、スイーツを楽しんでいた。それから少し本を読んで、家に帰った。それだけだよ。」


エイルはしばらく男性の話を聞きながら、手元のメモにいくつかの情報を書き留めた。

「なるほど、ありがとうございます。もし何か思い出すことがあれば教えてください。」


男性は少し安心した様子で頷いた。

「もちろんだよ。私は本当にただの常連客に過ぎない。もし何か協力できることがあれば言ってくれ。」


エイルとシャルは彼に感謝を伝え、カフェを後にした。外に出ると、シャルが不安げにエイルに尋ねた。

「先輩、あの人が犯人じゃなさそうだって思ってますか?」


「そうだね、彼が犯人だとは思えない。」

エイルは少し笑いながら答えた。


「ただ、他にどんな手がかりがあるのか、もう少し深く調査する必要がある。次はもう一度サラや、他のスタッフにも話を聞いてみよう。」


「そうですね。まだ謎が残ってますもんね。」

シャルは少し安心したように頷いた。


エイルとシャルは新たな手がかりを探すため、カフェ・フローラのスタッフたちに話を聞く準備を始めた。

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