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小骨が喉に刺さったまま  作者: ユガミヒト
1章「消えたスイーツのレシピ」
3/10

第3話

エイルとシャルはロッカールームの調査を終え、再びカフェのフロアに戻ってきた。エイルは何か思案顔で天井を見つめながら、シャルと話し合っていた。


「ロッカールームには特に異常はなかったね。」

エイルは言葉を切りながらつぶやいた。


「ただ、何かが見落とされている気がする。少し休憩してから、次はマスターに話を聞いてみようか。」


「そうですね!」

シャルが頷き、1度休憩をとることにした。


休憩の後、二人はカウンターに立つマスター、ロイドの元へ向かった。

白髪短髪のロイドはカウンターの奥でコーヒー豆をひいていたが、エイルたちに気づくと穏やかに微笑んで出迎えた。

「ああ、君たちか。調査は進んでいるかね?」


「マスター、今少しお時間をいただけますか?」

エイルが丁寧に尋ねた。


「レシピが消えた時の状況について、詳しくお話を聞きたいんです。」


「もちろんだとも。」

ロイドはひと息つくと、手を止めてゆっくりと椅子に座った。


「どうぞ、何でも聞いてくだされ。」


エイルは一瞬目を閉じて考え込み、慎重に質問を投げかけた。

「マスター、レシピがなくなったのはいつ頃のことですか?それから、その時店には誰がいたのでしょうか?」


ロイドはしばらく思い返すように頭をかしげた。「先週の土曜日のことだったと思う。あの日は特に忙しい日だった。客足が絶えず、サラや他のスタッフも大忙しだったんだが、みんなベテランだったからレシピを必要としていなくてね。レシピがなくなったことに気づいたのは、閉店後の片付けをしている時だったね。」


「その時、ロッカールームには誰が近づいたかわかりますか?」エイルは続けて尋ねた。


「いや、はっきりとは覚えていないよ。ただ、その日も普段と変わらず、誰もが自分の仕事に追われていたから…、レシピを持ち出す暇なんて誰にもないと思うんだが……」

ロイドは眉間にしわを寄せながら、苦悶の表情を浮かべた。


シャルが少し前のめりになり、興味深そうに尋ねた。

「マスター、そのレシピはカフェにとってとても大事なものですよね?何か特別な保管方法とか、対策はされていないんですか?」


ロイドは深いため息をついた。

「実は、特に厳重に保管していたわけではないんだ。私が自分の手元に置いて管理していただけだから、盗まれたのではなく、どこかに紛れ込んでしまったのかもしれない。」


エイルはロイドの言葉を聞きながら、さらに何かを考え込んでいるようだった。

「マスター、レシピが消える前に、何か変わったことはありませんでしたか?例えば、スタッフや常連客が何か妙な行動をしていたとか。」


ロイドはしばらく沈黙し、そして首を振った。

「特には思い当たることはないな。ただ、最近、常連客の一人がスイーツのレシピについてやけに興味を示していたのは覚えている。その客がレシピを狙ったのかどうかはわからないが、少し気にはなっていたんだ。」


エイルは興味深そうにその言葉を捉えた。

「その常連客の方について、もう少し詳しく教えていただけますか?」


ロイドは頷き、話を続けた。

「その客は、毎週来店している年配の男性だ。彼はこの店のスイーツを非常に気に入っていて、何度かレシピの話を持ちかけてきた。もちろん、レシピは企業秘密だから教えられないと断ったんだが……最近も何かしら質問してきていた。」


シャルが目を輝かせた。

「その人、怪しいですね!レシピを消したのはその人かもしれません!」


エイルは静かにうなずいた。

「その可能性はあるね。でも、まだ決定的な証拠はない。次はその常連客に話を聞いてみる必要がありそうだ。」


ロイドは心配そうにエイルを見つめた。

「その常連が犯人だと決めつけるのはまだ早いと思う。彼はただ好奇心が強いだけかもしれない。だが、もし君たちが彼に話を聞いてくれるなら、それで少し安心できるかもしれない。」


「もちろんです、マスター。私たちはどんな可能性も排除せず、慎重に調査を進めていきます。」

エイルは優しく微笑んで答えた。


その後、エイルとシャルはマスターに礼を伝え、次の手がかりを追うためにカフェを後にした。エイルは静かに歩きながら、次の調査の段取りを考えていた。

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