第2話
エイルとシャルは「カフェ・フローラ」に到着した。カフェの外観は落ち着いた雰囲気で、木の扉には「ようこそ」という文字が丁寧に刻まれている。店内に入ると、心地よいコーヒーの香りと、軽やかなジャズが流れる穏やかな空間が広がっていた。
「こんにちは、いらっしゃいませ。」
カウンターの後ろに立っていた茶髪ポニーテールの店員のサラが、二人を迎え入れた。彼女はニコニコとした笑顔で、少し緊張した様子のエイルとシャルに目を向けた。
「今日はどのようなご用件ですか?」
「こんにちは。エイル探偵事務所の者です。こちらのスイーツのレシピが消えてしまったと聞いて、調査に来ました。」
エイルが優しく説明した。
「調査…ですか?いったい誰が依頼を……」サラは驚いた様子で聞き返した。
「この店の常連だという男性からの依頼です。」
「そうですか!なんでも言ってください、できるだけ協力します。」
エイルが頭を下げながら言った。
「ありがとうございます。まずは、レシピが保管されていた場所や、最近の出来事についてお話を伺いたいと思います。」
「もちろんです。」
サラはしばらく考え込むと、カウンターの後ろから一冊の古びたルーズリーフのノートを取り出した。
「これが、マスターがレシピを保管していたノートです。ただ、先日このノートの中身がなくなったのです。」
エイルはルーズリーフノートを受け取り、中をぱらぱらとめくった。古い紙の質感と手書きの文字が、確かにレシピが保存されていたことを示している。しかし、ページ数が明らかに少なくなっていた。
「この現在は無くなっているページに、消えたスイーツのレシピがあったということですか?」
エイルが尋ねた。
「はい、そうです。」
サラは困ったように眉を寄せて頷く。
「レシピがなくなってからは、どうしようもなくて。マスターも困り果てている状態です。」
「それでは、ノートの中身がなくなったときの状況を詳しく聞かせてもらえますか?」
エイルがサラに向かって言った。
「はい、もちろん。」
サラは少し考えた後、話を始めた。
「ノートが最後に目撃されたのは、ロッカールームで、仕事中に私たちが使わない時間帯はそこで保管されていました。それ以外の時間はマスターが持ち歩いているので気にしていなかったんです。その後、ノートがどこかへ行ってしまっていたらしいです。それからしばらくして、マスターがレシピの抜けたノートを発見してきたんです。」
「ロッカールームですね。」
エイルはメモを取りながら言った。
「それでは、まずそのロッカールームを見せてもらえますか?」
「わかりました。こちらへどうぞ。」
サラはエイルとシャルを案内し、カフェの奥にある小さな部屋へと導いた。部屋の中にはロッカーの他に、いくつかの箱や棚が並んでおり、そこにはカフェで使用する様々な物品が収納されていた。
エイルとシャルは部屋を注意深く調べ始めた。シャルは棚の上や箱の中を探し、エイルは物品の配置や収納方法を確認していた。
「この部屋には、レシピが置かれていたことがあるんですね?」
エイルがサラに尋ねた。
「はい、そうです。ここに保管していたはずです。」
サラが答えた。
「それでは、部屋のどこにレシピがあったのか、もう一度確認してみましょう。」
エイルが言った。
二人は慎重に調査を続け、部屋の隅々まで確認したが、レシピの痕跡は見つからなかった。エイルはしばらく考え込み、再びノートに目を戻した。
「これから、さらに詳細な調査が必要になりそうです。」
エイルがサラに言った。
「カフェの他の場所や、スタッフの行動についても確認していきます。あと、マスターさんにも私達のことをお伝えいただけますか?」
「了解しました。」
サラがうなずきながら答えた。
「何か他に手伝えることがあれば、言ってください。」
エイルとシャルはカフェ内の調査をすることにし、次にどこを調べるかを考え始めた。