試験開始
奇跡って本当にあるんだなあ……。最近の私は、しみじみとそれを実感しています。
学園長から退学の警告を受けて、それでもポーション作りがうまくいかなくて、本気で絶望しそうになっていました。もうだめだ、と半ば本気で思っていました。
でもそんな私の前に現れてくれたのが、クロちゃんでした。
そこから私の環境は一変しました。ポーションが作れない原因が発覚し、エリクサーの作り方や材料をいただき、さらには魔法に詳しい人まで紹介してもらいました。
ただ錬金術を学んでいただけの私ですが、最近は少しだけ欲が出てきてしまいました。
何かを残したいと。クロちゃんたちにここまでしてもらったんです。たくさんの人に知ってもらえるような、そんな錬金術師になりたいと思いました。
そうして私がたどり着いたのが、魔法を使った錬金術です。魔法と錬金術を融合させて、新たな道具を作り出す。最近はその研究もしています。
これは教授や学園長にも伝えるつもりです。どんな反応をするのか、今から楽しみです。
楽しみ、だったのですが……。
「き、緊張する……!」
学園長は、敵というわけではありませんが、退学の警告をしてきた人です。彼を納得させなければならないと思うと、どうしても緊張してしまいます。
私が今いるのは、学園長室の前です。そこで待たされています。今この部屋の中には、学園長や錬金術の教授、その他、私の知らない授業の関係者もいるとのこと。
みんなで私の錬金術を見て判断を下すらしいです。
つまり、知らない人も大勢いる……! それだけで緊張してしまいます。
いえ……。大丈夫。大丈夫です。
今日試験をしてもらうとあらかじめ言っていたので、朝からクロちゃんが応援に来てくれました。
言葉の少ない子ですけど、両手を握って、がんばって、と一言言ってもらえただけで、なんだか心がぽかぽかしてきます。
小夜さんからは朝ご飯にトンカツサンドをいただきました。小夜さんの世界で、何かの試験をする日によく食べられるおかずなんだとか。
とてもありがたくて、美味しかったです。みんなの気遣いがすごく嬉しい。
知り合った魔女のみんなから、大丈夫だから自信を持て、と言われてきました。だから、がんばります。
「エリーゼ。入りなさい」
「はい……!」
聞き慣れた教授の声に、私は少し裏返った声を上げて扉を開けました。
学園長室は広い部屋でした。教室と同じぐらいの広さで、壁際にはたくさんの本棚や書棚が並んでいます。一番奥には高級そうな机と椅子があるので、学園長は普段あそこで仕事をしているのでしょう。
その机の前にたくさんの人が並んでいました。学園長や錬金術の教授はもちろん、見慣れない大人もたくさんいます。何故か魔法を教える教授もいます。
その大人たちの目の前に、大きなお鍋が置かれていました。あれで調合をしろということだと思います。
私がお鍋の前まで歩くと、学園長が言いました。
「さて……。エリーゼ。お前の成果を見せろ。何かしら調合に成功すれば、もうしばらくの在学を許可しよう」
「はい……」
まずは、調合です。たくさん練習したエリクサーを作りましょう。他の人は練習すらままならないものですが、私はクロちゃんの好意で練習し放題だったので、自信があります。
まずは亜空間から材料を取り出して……。
「待て」
いきなり止められてしまいました。止めたのは、魔法の教授です。怪訝そうに眉をひそめています。
「君は、錬金術師だったね?」
「えっと……。はい」
「その魔法は?」
「亜空間の魔法ですけど……」
「それは……。以前から使えていたのかな?」
「最近覚えました」
便利だからと、リオさんから叩き込まれました。他の魔法はともかく、錬金術師なら覚えておいて損はないと。事実、たくさんの素材を劣化もなくしまっておけるので、重宝しています。
「それが……高度な魔法だと知っているかな?」
「教えてくれた人はわりと難しいって言っていた気がします」
「ふむ……」
少し考える素振りを見せて、魔法の教授が言いました。
「学園長。もしも錬金術師として見込みがないとなれば、こちらで引き取りましょう。彼女は優秀な魔法使いになります。間違い無く」
「ほう」
亜空間の魔法だけでそう言われるとなんだか不思議な感じがしますけど、その評価はとても嬉しいものです。最低限、在学は許されたということなので。
学園長は悔しそうな顔をしているかも、と少し思ってしまいましたが、見てみるとどこか安堵の表情を浮かべていました。
少し不思議に思いながらも、錬金を再開します。世界樹の葉と、不死鳥の涙と……。
「待て!」
次に止めてきたのは、錬金術の教授です。目をまん丸にして私が取り出した素材を見ています。
「それは……なんだ……?」
「え? 世界樹の葉と不死鳥の涙、それにドラゴンの血液、精霊の……」
「本物、なのか? いや、それよりも、何を作るつもりだ?」
「エリクサーです」
私がそう言うと、教授たちの顔が引きつりました。あり得ない、といった顔です。エリクサーを作れる錬金術師は指で数えられる程度しかいないので、その反応は当然でしょう。
「作れる……のか? 失敗すれば、その貴重な素材は無駄になるぞ?」
「任せてください」
確かに意味が分からないほどに難しいです。必要な魔力はあまりに膨大、そのくせに火をかける時間、魔力を流し込む量、素材の投入のタイミング、その他いろいろ、タイミングがシビアになっています。
それでも。私の体にはすでに染みついています。緊張していても、問題なく作れる程度には。
さあ、見ていてください、教授。あなたの恩に報いてみせます……!
壁|w・)ただのポーションの調合を見るはずが、なんか伝説級のアイテムをたくさん出された教師陣の気持ちを答えよ。




