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未知の世界へ


 山盛りの唐揚げを作って、ご飯を食べ終えたのが午後七時頃。もうお日様も沈んで薄暗い。さすがにこんな時間から出発するのはだめだと思う。

 まあ私がだめだと思っても、元気な魔女ちゃんたちは行く気まんまんなんだけどね!


「クロ。準備は万全に。杖といざという時の道具は持った?」

「ん」

「ドラコは? いざという時はドラコが頼りだから、頑張ってほしい」

「まかせるのじゃ!」


 リオちゃんの指示のもと、クロとドラコちゃんが準備を進めてる。準備、と言うほど大げさなものじゃないけど。

 クロは黒いローブに身の丈ほどもある杖を持ってる。リオちゃん謹製の魔道具らしい。そう、魔道具だ。なんだかロマンがあるよね。ちょっとこう、わくわくする。

 ちなみに効果は、黒いローブは防御用の効果、杖は魔力の増幅、とかなんとか。詳しいことはよく分からない。

 ドラコちゃんは髪と同じ色の赤いローブ。ドラコちゃんがずっと着てるもので、これも魔道具なんだって。

 そして、私。


「小夜。これ、渡しておく」

「ペンダント? ありがとう。これは何かあったりする?」

「ん。体に危険が迫ると防御用の結界が展開される。核ミサイルですら防げるから、安心安全」

「あ、はい……」


 またさらっととんでもないものを渡されてしまった気がする……。いや、もちろんありがたいんだけど。一人だけ魔法も使えないのに生身で行くのは、わりと勇気がいるからさ。


「ところでリオちゃん。あの二人を止めてくれたりはできない? 朝とか昼に行く方がいいと思うんだけど」

「魔女は好奇心旺盛なもの。諦めて」

「ですよね……」


 分かってる。言ってみただけだよ。クロもドラコちゃんも、すごくわくわくしてるのが見て分かるからね。庭に浮いてる光球の側で、急かすように私を見てきてるし。

 クロはともかく、ドラコちゃん、そんな子だっけ? ドラコちゃんまで異世界に興味津々になって、私はちょっとびっくりだよ。

 自分のことを全然知らない世界っていうのが新鮮なだけらしいけどね。


「おねえちゃん」

「小夜! 早くするのじゃ!」

「はーい」


 まあ、でも。私も異世界には興味がある。ミリアちゃんの世界も不思議で綺麗な世界だったから。次の異世界がどんな場所か、わりと楽しみになってる私がいる。

 リオちゃんに手を振って、クロたちのもとへ向かう。私が側まで行くと、クロは早速とばかりに光球に手を触れて、次の瞬間には眩しいほどの光に包まれてしまった。




 光がゆっくり消えていく。気が付けば私たちは、どこかの庭の真ん中に立っていた。

 庭というか……小さな畑? 野草とは明らかに違う草花が等間隔に植えられてる。明らかに人の手が入っていると分かる場所だ。

 そんな私たちの目の前にいたのは、目を白黒させている女の子。


「ひ、ひひひ、人が出てきた……!?」


 間違い無く、この子が今回の生け贄……標的……友達候補だね。

 明るい金髪をポニーテールにした女の子で、コートのようにも見えるローブを着てる。ポケットがたくさんあるローブで、色は茶色かな? ポケットは結構膨らんでるから、何か入れてるんだと思う。

 クロはその子を見つけると、嬉しそうに駆け寄った。いつものごとく無表情だから、初めて見る人、つまりあの子にとってはわりと怖いかもしれない。


「うひゃあ!?」


 案の定、女の子は慌てたように後退った。私の妹が申し訳ない。


「クロ。まずは自己紹介」


 そう言ってあげると、クロがはっとしたように立ち止まった。


「クロ。魔女。お友達」

「なあ、小夜。クロのやつ、説明が適当になっておらんか?」

「えっと……。興奮してるから、だよ。多分」

「そ、そうか……?」


 そういうことにしておいてほしい。いくらなんでも説明が短すぎる。

 やっぱり意味が分からなかったみたいで、女の子は首を傾げていた。仕方ない、いつものことだけど、私が手伝おう。


「えっと。ごめんね。私は小夜。この子はクロ。ちょっとした魔法の効果でここに来たんだ。よろしくね」


 そう言って握手のために手を出すと、女の子は少し警戒しながらも手を握ってくれた。


「はい……。えっと。私はエリーゼといいます。その、ちょっとした魔法っていうのは、なんですか?」

「話がちょっと長くなるけど……」


 クロが作った魔法のことを簡単に説明してあげる。ざっくりと、友達になれそうな子を見つけて、転移をする魔法だということを。

 そうして説明すると、エリーゼちゃんは目をまん丸にして驚いていた。


「すごい……! そんな複雑な条件付けの転移魔法なんて、私の世界の魔法使いに使える人なんていませんよ……!」

「へえ……」


 やっぱりクロの魔法は規格外ってことだね。お姉ちゃんとして鼻が高いよ。


「あの……それで……。その子は?」


 エリーゼちゃんの視線の先にいるのは、ドラコちゃんだ。ドラコちゃんは黙って待っていてくれたらしい。うん、もうちょっと早く紹介してあげればよかったかな。


「ドラコじゃ。竜人族の魔女じゃよ」

「竜人族……?」

「む……。この世界にはおらぬのか」


 こういう種族じゃよ、とドラコちゃんが自分の角を指先で叩くと、これにもエリーゼちゃんは驚いていた。竜人族を初めて見た、というよりもその存在を知らなかったらしい。

 つまり、この世界に竜人族はいないってことかな?


「ふむ……。現時点でわしが唯一の竜人族か。なんだか気分がいいのじゃ!」

「たんじゅん?」

「クロは黙っておるのじゃ」


 いや、本当に単純すぎると思う。


壁|w・)さくっと邂逅。


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