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ミリアちゃんの世界

 仕方なく私が軽く伝えてあげた。クロと私がここで二人で暮らしてることと、クロが魔法で友達候補を呼んでるということを。

 私も魔法をよく理解できてないから途中で分かりにくかったと思うけど、ドラコちゃんはある程度理解してくれたみたい。変なものを見るような目でクロを見てるのはちょっと気にくわないけど。


「友達を……呼ぶ……? なんなのじゃ、そのへんてこな魔法は。意味不明すぎるじゃろ」

「へんてこ。ちがう。おともだちたくさん」

「む……。ああ、すまん、別にけなしたわけではなくてじゃな……」


 素敵な魔法だけど、へんてこな魔法だとは私も思う。多分、こんな魔法を作るのは、後にも先にもクロだけだと思うから。

 ドラコちゃんは少しだけ唸った後、大きなため息をついた。


「友達のう……。すまんが、わしは期待に添えられそうにはないのじゃ」

「だめ?」

「友達など、わしは信用することなどできん。そんなものは、わしに取り入るための方便じゃ」


 それは吐き捨てるような言い方だった。あまりいい思い出はないみたい。多分何かがあったんだろうけど……。当たり前だけど、私たちにはドラコちゃんに何があったのかは分からないね。


「おともだち。だめ?」

「そんな目で見られても困る。だめなものはだめじゃ」


 そう言って、ドラコちゃんは話は終わりだとばかりに立ち上がった。取り付く島もないってやつだ。クロの友達になってもらうことは、期待できそうにない。

 クロもそれを理解したのか、少し悲しそうだった。どうにかしてあげたいけど、ドラコちゃんの事情が分からないから、うかつなことはちょっと言えない。


「それで? これはどうすれば帰ることができるのじゃ?」

「おともだち……」

「だめじゃ」

「あう……。かえりたい。ねんじる。たま」

「出てくるのか」


 早速とばかりにドラコちゃんが目を閉じる。少しすると、ドラコちゃんの目の前にほのかに光る光球がふっと出てきた。ミリアちゃんが帰る時にも見るんだけど、不思議な光だ。


「では、さらばじゃ」


 躊躇することなくドラコちゃんが光球に手を触れて、その姿は消えてしまった。

 うん……。今回は残念だけど、仕方がない。毎回うまくいくとは限らないってことだ。こっちの世界でも、万人と友達になれるわけじゃないからね。苦手な人っていうのはやっぱりいるから。


「残念だったね、クロ」


 しょんぼりしちゃったクロの頭を撫でると、クロが私に抱きついてきた。ぎゅっとしがみついてくる。泣いてる……わけじゃないけど、悲しい気持ちはあるみたい。

 だっこして、頭を撫でてあげる。よしよし。


「諦めるの?」


 そんな声に視線を上げると、リオちゃんがこっちを見つめていた。


「いや……。さすがに帰っちゃったらもう無理じゃない?」

「さっきの子の世界とはもう繋がりがある。行けるよ」

「え」


 待ってほしい。つまり、一度繋がれば、こちらからでもいつでも行けるってこと? あっちの許可とかも何もなく? そんなに緩い条件だとは思わなかった。

 ああ、そうだ。そういえばミリアちゃんの世界にも遊びに行けるんだったね。クロがしょんぼりしちゃってるし、代わりにとは言えないけど、ミリアちゃんの世界に遊びに行くのもいいかも。

 いつも来てもらうのを待ってるだけだったからね。クロもきっと喜ぶんじゃないかな。


「クロ。ミリアちゃんの世界に遊びに行く?」


 とりあえずは気晴らしで。そう思って提案してみると、クロは私にしがみついたままこくりと頷いた。


「よし。リオちゃん、どうやって行けばいいのかな?」

「ん。ミリアの世界に行きたいと強く願えばいい。そうすれば、光球が出てくる」

「なるほど」

「ちなみにこの魔法は魔力を持ってる人、つまりは魔女にしか反応しない。小夜も一緒に行くなら、クロと一緒に帰ってこないと戻れなくなるよ」

「なにそれ怖い」


 私がどれだけ願っても世界の行き来はできないらしい。こういうところでもクロ頼りってことだね。なんだか姉の威厳が疑われる気がする。

 まあ、異世界がどんな場所か分からないから、クロから離れるつもりはないけど。クロの魔法が頼りだからね。クロがいればきっと大丈夫。

 あれ……? お姉ちゃんとしてそれはいいのかな……?

 私が姉の威厳というものを考えてる間に、クロが手を前にかざした。少しして、その手の前に光球がふわっと現れる。ミリアちゃんやさっきのドラコちゃんが出したものと同じ光だ。


「おねえちゃん」

「ああ、うん……。行こうか」


 どうせ行くなら手土産でも、と一瞬思ったけど、また次の機会でいいかな。とりあえずはミリアちゃんの世界に出発だ。


「いってらっしゃい」


 手を振るリオちゃん、それにおばけちゃんとこばけちゃんに見送られて、私たちは光に包まれた。




 視界が晴れた先。そこは森の中だった。


「うわあ……」


 これは、いわゆる原生林というやつかもしれない。根とかが突き出していて少し危ない。ここがミリアちゃんの世界なのかな。


「おねえちゃん。こっち」


 クロに手を引かれて、そんな森の中を歩く。クロにはミリアちゃんがどこにいるのか分かるのかもしれない。

 そうしてしばらく歩くと、小屋が見えてきた。小さなログハウスみたいな建物だ。ちょっとした広場に、ぽつんとその家だけが建っている。なんだか不思議な場所だ。


「へえ……。雰囲気あるなあ」


 まず日本では見られない光景だ。これを見られただけでもここに来た価値があるかもしれない。

 そんな小屋を眺めている間に、クロがその家のドアを叩いた。手のひらでばんばんと。ノックならもうちょっと優しく叩いた方いいと思うんだけどな。


「はーい」


 聞き覚えのある声と同時にドアが開かれる。そこにいたのは、想像通りの人物。


「え? クロちゃん!? 小夜さんまで!?」


 ミリアちゃんその人だ。やっぱりここがミリアちゃんの家で間違いないらしい。


「わあ……! びっくりした! クロちゃんたちもこっちに来れるの!?」

「びっくり。師匠。きいた」

「ミリアにも教えておいてほしかったよ」


 ミリアちゃんが苦笑して、ドアを開け放つ。どうぞ、と言われたのでクロと一緒に部屋に入った。

 ミリアちゃんの家は、なかなかシンプルだ。中央にテーブルがあって、部屋の隅にベッドと本棚がある。ただそれだけの家。


「ご飯とかはどうしてるの?」


 思わずそう聞くと、すぐに答えてくれた。


「ここから一時間歩いたところに村があるから、そこでもらってます。すっごく美味しい! あ、でも、小夜さんの料理の方が美味しいかなあ……」


 お世辞、というわけでもないみたい。何を思いだしたのか、よだれが出てるし。私の視線で気が付いたのか、慌てたように口元を拭っていた。


壁|w・)癒やしを求めて。

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