第6話 恋人『義妹』生活
「んん~っ! ゆぅ君のゴハンは、いつ食べても美味しいわ!」
「そりゃ良かった」
千春義母さんが、俺の作った朝食に歓喜の声をあげる。
時刻は朝の7時少し過ぎ。
今朝のドタバタで目が覚めた俺は、ちょっと気合を入れて朝ごはんを作っていた。
ちなみに今日のメニューは、オムレツに燻製ベーコン、千切りキャベツにコーンポタージュだ。
朝からコーンポタージュを作るのは大変だったが、我が愛しの妹カノジョ、コガネたんにせがまれたのだから、仕方がない。
お兄ちゃんとして、何より彼氏として、全力で期待に応えなくては!
「おはよ~、お兄ちゃん。それと、お母さんも」
ふわぁ~……と、可愛らしい欠伸をしながらリビングへ入って来たのは、パジャマから森実高校の女子制服に着替えた我が義理の妹、コガネたんだった。
制服の上からでもハッキリと分かるほど、その豊かな胸元が盛り上がっており、健全な男子高校生に爽やかな目覚めを促してくれる。
うん、今日もイイおっぱいだ。
「ナイスおっぱい――おはよう、コガネ」
「コガネぇ~っ? 今日はアンタが朝食当番でしょ? ナニお兄ちゃんに朝ごはんを作らせてるの?」
義母さんがプリプリッ! と頬を膨らませながら、実の娘に抗議的な視線を送った。
40近い女性の、そのあざとい仕草には正直キチィものがあったが、俺は黙ってコガネの分の朝食を机に運んでいく。
俺は出来る義理の息子なのだ。
だから決して『ババァ、無理すんな?』と、現実を突きつけるマネはしない。
絶対にしない。
……あとが怖いし。
「そんな事言ったって、女の子には色々と準備があるんだよぉ」
「俺は気にしてないからさ。そんな怒らないでやってくれよ、義母さん?」
「んもうっ! ゆぅ君はコガネに甘いんだから! あんまりコガネの味方ばっかりしてると、お母さん、拗ねちゃうぞ? ぷんぷんっ!」
「ハハハッ……」
キチィ……。
中年女性のイジけた姿ほど、直視に堪えれないモノはない。
俺は気分を取り直すように、コガネの指定席となった座席に、オムレツとコーンポタージュを置いていく。
「はいよ。コガネは朝、パンでいいんだよな?」
「うんっ! ありがとう、お兄ちゃん♪」
コガネが『いただきます』もそこそこに、コーンポタージュを口に含んだ。
途端に、義母さんと同じく、顔に笑顔という大輪が咲き誇った。
「んまぁ~っ♪ 流石お兄ちゃんっ! コレ、超美味しいよ!」
「お口に合ったようで、良かったわ」
自分の分の朝食も机に持って行き、義妹と同じくコーンポタージュを口に持って行った。
瞬間、口当たりまろやかで、程よい甘みが舌一杯に広がった。
……うん、ちょっと味が濃かったかな?
「ほんと、ゆぅ君の朝ごはんを食べられるだけでも、マコトさんと再婚した意味があったわ」
「そういえば、お義父さんは? 姿が見えないけど?」
「親父なら今日『大事な会議があるから』って言って、少し早めに家を出て行ったよ。……コレを俺達に残して、な」
「コレ?」
こてんっ? と、可愛らしく首を傾げるコガネ。
そんな義妹に、俺は今朝、親父から受け取った2枚のチケットを懐から取り出してみせた。
コガネが俺の取り出したチケットを、マジマジと見つめ、
「『むっちゃハワイヤン☆ぱーく』? ……ナニコレ?」
「来週となり町でオープンする、親父の会社が経営する温水プールのプレオープン・チケットだってよ」
「プールッ!」
キラッ! と、コガネの瞳が輝いた。
よし、かかった!
俺はこぼれそうになる笑みを、理性の力で必死に統率しながら、さも自然な感じでコガネに声をかけた。
「せっかくチケットもあるんだし、水着でも買って、今週末プールにでも行くか?」
「行く行くっ! 絶対行くっ!」
やったーっ! と無邪気に微笑む義妹。
そんな我が妹カノジョの姿を前に、俺は心の中で1人、小さく呟いた。
――計画通り、と。
「相変わらず仲良いわねぇ、2人とも? 本物の兄妹よりも仲がイイんじゃないの?」
「そ、そうかな? コレくらい普通じゃないの?」
「普通じゃないわよ。アンタらくらいの歳の兄妹はね、それはもう仲がすこぶる悪いんだから。一緒にプールなんて、死んでも行かないわね」
ビクッ!?
義母さんの指摘に、コガネと俺の身体が一瞬固まってしまう。
ヤバイ……気づかれたか?
流石に義母さんの前で誘うのは、やり過ぎたか?
「な、仲が良いのは良い事なんじゃないの?」
「良すぎるのも問題なのよ。これでお兄ちゃんが『シスコン』になったら、彼女が出来にくくなるじゃない。せっかくの花盛りに妹の相手ばっかりって、お兄ちゃんが可哀そうでしょ?」
そう言って、俺の用意したクロワッサンをもしゃもしゃっ! と咀嚼する義母さん。
……ごめん、義母さん。
俺、もう彼女居るんだ。
しかもソレ、義妹なんだ。
アナタの実の娘なんだ。
「お、おっと!? もうこんな時間か! 早く食べて学校に行かねぇと!」
心の仲で頭を下げながら『この話はコレでおしまい!』と言うように、オムレツを口の中に押し込んだ。
本当はママンと頭脳戦にしたかったんですが、頭の良くない腐れゴミムシである作者には描けませんでした……。
恋愛弱者同士の頭脳戦は描けませんが、変態同士の頭脳戦は書けるので、よければ
『取り柄のない平凡な俺のことが『大好き』すぎて、女神と呼ばれている学校1の美人姉妹が【ヤンデレ】化しました!?』(https://ncode.syosetu.com/n5477hz/)
を読んでみてくれると嬉しいです!