第2話 下駄箱+手紙=果たし状!(ヤンキー限定)
不良の聖地――森実町。
東の聖地が『湘南』とするならば、西の聖地とも呼ばれる場所が、俺の住む町だった。
数十年前、日本の不良界を制圧した伝説の男【喧嘩狼】
その男を輩出した伝説の町として、名前を上げたい不良共が集まるようになってしまった。
とくにここ『県立森実高校』は、数十年前までは普通の進学校だったが、『日本最強の男』――【喧嘩狼】を輩出したことから、腕に覚えのある不良さん達がこぞって入学したがる、ヤンキーの聖地となってしまった。
おかげで俺のような健全な一般生徒も、よく喧嘩に巻き込まれるし……
「入る学校を間違えたな、コレ……」
ハァ……と、溜め息を溢しながら、昇降口へと続く廊下を歩いて行く。
時刻は午後6時少し前。
朝の革ジャン3兄弟の件で、生徒指導にお叱りを受けたせいで、すっかり帰りが遅くなってしまった。
「今日は7時から『スーパー三橋』で鶏肉のタイムセールがあるのに……間に合うか、コレ?」
ポケットに仕舞い込んでいたスマホで時刻を確認しながら、早足で廊下を歩き続ける。
今日の晩御飯は唐揚げにしようと思ってたのに、コレじゃ微妙だなぁ。
そんな事を考えながら、自分の革靴が入っている下駄箱を開け、
「うん? なんだ、コレ?」
1枚のピンクの封筒が入っている事に気が付いた。
「手紙? 俺宛てか?」
女の子の丸っこい文字で『金城優さま』と書かれた、その封筒。
はて?
なんじゃコレは?
頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら、封筒を破り、中に入っていた便箋に視線を下ろした。
そこには、これまた丸っこい愛らしい文字で、こう書かれていた。
◇◇
『金城優センパイへ。
突然こんなお手紙を渡してしまい、申し訳ありません。
でも、もう自分の気持ちを抑えられそうになくて、この度は筆を執らせていただきました。
去年1年、ずっとアナタを見守らせていただきました。
凛々しい横顔。
凛とした佇まい。
高潔なる精神。
気がつくと、いつもアナタの事を考えてしまう。
アナタの姿を探してしまう。
ボクの頭の中は、アナタの事でいっぱいです。
あぁ、この気持ちを素直に打ち明ける事が出来たのなら、どれだけ楽になれるのでしょうか?
今日の放課後7時、駅前の公園でアナタが来るのをずっと待っています』
◇◇
「……ふむ」
なるほどな。
俺は軽く天井を仰ぎながら、大きく息を吸い込んだ。
そのまま、ゆっくりと肺に溜まった空気を吐き捨てながら、
――カチッ!
と、身体のスイッチを切り替える。
「久しぶりだな……【果たし状】を貰うのは」
女の子らしい字でカモフラージュしてはいるが、俺には分かる。
コレは間違いなく俺をハメるために仕込んだ、不良共の罠だ。
何度もニセラブレターで呼び出され、タイマンしてきた俺だからこそ見破れた、悪意に溢れたトラップである。
「バカにしやがって。ちょうどいい、ストレスを発散したかった所だ」
俺はニンマリ♪ と微笑みながら、受け取った【果たし状】をクシャッ! と握りしめた。
ブックマークありがとうございました!
というワケで前作である、
《俺のことが好き過ぎて、『女神』と呼ばれている学校1の美人姉妹が【ヤンデレ】化しました!?》(https://ncode.syosetu.com/n5477hz/)
の10年後の世界のお話である本作は、次回いよいよメインヒロインが登場します!
最初に言っておきますが『ボクっ娘』です!