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第17話 早乙女乙女はキングジョーをデートに誘いたい!

「ジョーさんっ! コッチです、コッチ!」

「お兄ちゃんっ! はやく、はやくっ!?」




『乙女戦線が森実高校に乗り込んできた』という報告を受けて数分後。


 俺はトサケンとコガネに背中を押されながら、森実高校の校舎へと続く坂道を駆け足で登っていた。




「別に被害が出てないなら、そんな慌てる必要もなくない?」


「ナニ言ってんすか、ジョーさん!? 今にも一気触発は雰囲気で、いつケガ人が出てもおかしくない状況なんすから!」


「つまり、止められるのは、お兄ちゃんしか居ないって事だよね?」

「ですですっ!」




 ほら、急いで! と、気乗りしない俺の足取りを、無理やり動かすトサケン。




「別に大丈夫だと思うけどなぁ」




 ぽつり、と零した俺の独り言は、コロコロ♪ と坂道を転がって、どこかへ消えていった。


 そうこうしている間に、目的地の森実高校へ辿りつくのだが……。




「う、うわぁ……。乙女戦線の人達でいっぱいだぁ」




 感嘆の声をあげる、我が義妹。


 そんな義妹の視線の先には、森実高校の校門前を埋め尽くすほどの、ガラの悪い革ジャン集団が居た。


 みな夏だというのに、黒の革ジャンを身に纏い、見ているだけで暑苦しい……。




「黒光りしている所といい、ゴキブリみてぇだな、アイツら?」

「そんな呑気な事を言っている場合じゃないっすよぉ!」

「確かに、そんな事を言っている場合じゃなさそうだ」




 乙女戦線の奴らが校門を占拠しているせいで、ウチの生徒達が中へ入れず、その近くをウロウロッ!? していた。


 これは流石に目に余る。


 別にツッパるのは個人の自由だし、好きにすればいいが、カタギの人間の邪魔をするのはいただけねぇ。




「じゃあ、ちょっと言ってくるわ。少し待っててくれ」

「言ってくるって……あっ!? ちょっと!?」




 お兄ちゃん!? と、声を荒げる義妹をその場に、俺は校門の前でひしめき合っている乙女戦線の方へと近づいた。




「おい、ゴキブリども? 通行の邪魔だから、そこを退()け。俺が通る」

「あぁんっ!? 誰がゴキブリ――ッ!?」




 革ジャンを着込んだ男の1人が、ドスを利かせながら、俺の方へと振り返り……固まった。


 やがてその沈黙が伝播(でんぱ)するように、校門の前を占領していた革ジャン共の視線が、俺の方へと集まるのが分かった。




「き、キングジョーだっ!? キングジョーが来たぞ!?」

「『来た』っ()うか、おまえらがウチに来たんだろうが……」




 ざわざわっ!? と、ザワつき始める、革ジャン達。


 そんな革ジャン共の間を縫うように、1人の女の子が俺の前へ姿を現した。


 勝気な瞳に、強気な雰囲気を身に纏った、そのレディーの名前を俺は知っている。




「待ってたわよ、キングジョー」

「早乙女。ナニしてんの、おまえ? こんなところで?」




 乙女戦線10代目総長、早乙女乙女が、不敵な笑みを浮かべて俺を見つめていた。




「まったく、レディーを待たせるなんて、男のする事じゃないわよ?」

「むっ? 勘違いすんなよ? これがデートなら、俺は待ち合わせ場所に6時間前からスタンバイしているわ!」

「……それはそれでキモイわね」




 何故かドン引きした瞳を俺に向ける、早乙女。


 惚れられたかもしれない。




「それで? なんでおまえら、こんな場所(校門前)に居るワケ?」

「さっき言ったでしょ? アンタを待ってたのよ、キングジョー」

「俺?」




 別にデートの約束とか、してないよね?


 と、俺が軽口を叩くよりも速く、早乙女が口をひらいた。




「今日はアンタに、デートの約束を申し込もうと思ってね」

「えっ!?」




 背後で我が義妹の()頓狂(とんきょう)な声が聞こえる。


 やっべ!?


 今の会話、聞かれちゃったか!?




「デート!? デートってなに!? どういうこと、お兄ちゃん!?」

「ど、どうしたんですか、アネゴ!? ちょっ!? 今、アソコに近づくのはマズイですって!?」

「離して、トサケンさん!? 事情を! 事情を聴き出さないと!?」




 慌てふためく愛する義妹と、トサケンの困ったような声音が耳朶を叩く。


 う~む? 振り向くのが怖いや♪


 一体いま、俺の愛する義妹はどんな顔をしているのか……想像するだけで背筋が寒くなるぜ!




「じょ、冗談はいいから、要件を言え。さもないと、大変な目に遭うぞ?」




 俺が。




「あら? 案外ノリが悪いのね? ……まぁいいわ。アタシも無駄話はあまり好きじゃないし」




 早乙女が軽く肩を(すく)めるなり、どこか挑発じみた声音で、




「タイマンしましょ、キングジョー」




 と言った。




「タイマン? 誰と?」

「アタシと」

「なら断る」

「あら? どうして?」

「俺はレディーは殴らない主義だ」

「……なるほどね」




 んっ?


 今、早乙女のヤツ『計画通り』みたいな、いやらしい笑みを浮かべなかったか?




「嬉しいわ、キングジョー。アンタがアタシの思い通りの男で居てくれて♪」

「???」




 にっちゃりっ! と、耳まで裂けんばかりに口角を引き上げる早乙女を前に、何故か身の危険を感じる……。


 まるで『パンチラ』という名の風の妖精さんの贈り物を受け取った、モテない男子高校生のような瞳だ……と言えば分かって貰えるだろうか?




「そう警戒しないで? タイマンも冗談だから」


「おいおい? いい加減にしてくれ? コッチだって暇じゃないだ。冗談はそのトタン屋根のような胸だけにしてくれ」


「離して、ハナ!? じゃなきゃ、あのクソ野郎の頭をカチ割れない!」

「落ち着いて、乙女!? ここで暴れたら、作戦が全部パーだよ!?」




 ドルオタのように目を血走らせた早乙女が、荒い呼吸を繰り返しながら、俺の方へ突撃してこようとするのを、その横に居た『ちっこい女の子』が抱き着いて制止する。


 ふしゅーっ!? ふしゅーっ!? と、女の子がしてはいけない表情で、早乙女は俺を睨んでいて……おっとぉ?

 

これは、もしかして……地雷を踏んだか?




「キングジョーの挑発に乗っちゃダメッ! 乙女がそう言ったんでしょ?」

「うぐぅッ!? ……そうね、そうだった。アタシとしたことが、ちょっと自分を見失ってたわ」


「すまん、早乙女。そこまで気にしているとは思わなかったんだ。その……元気だせよ? 大丈夫! 成長した『ちっぱい』は、それなりに需要があるからさ! 頑張れ、ペチャパイ!」


「離せぇぇぇぇぇぇっ!? 離せ、おまえらぁぁぁぁぁっ!? あのバカは今ここで、全ての貧乳のために殺さなければならないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「落ち着いて!? 落ち着いてよ、乙女!?」

「そうですよ、総長!? ここで暴れる作戦じゃないハズでしょ!?」

「うるせぇぇぇぇぇぇっ!?」




 乙女戦線のメンバーに羽交い絞めにされながらも、俺の方へと突っ込んで来ようとする早乙女(ペチャパイ)


 その瞳は、俺への憎しみで染め上げられていて……おやおやぁ?


 俺、また何かやっちゃいました?




「チッ、しょうがない。ちょっと予定は狂うけど、乙女を連れて撤退! 撤退だぁ~っ!」


「「「「「へいっ、ハナさん!」」」」」




 あの『ちっこい女の子』がそう声を張り上げると、



 ――ひょいっ!



 と、早乙女の身体が、数人の戦線メンバーに持ち上げられる。




「ちょっ、アンタら!? 離しなさい!? まだあのクソ野郎の頭をカチ割ってない――」

「それ撤退だぁ~っ!」




 ズダダダダダダダダッ! と、まるで蜘蛛の子を散らしたかのような勢いで、その場から消え去る乙女戦線。


 数分としないうちに、校門前は『いつも』の風景に戻っていた。




「……なんだったんだ、アレ?」

「ジョーさん、大丈夫でしたか!?」

「お兄ちゃんっ!?」




 戦線メンバーの後ろ姿を見送っていると、遠巻きに俺たちとやり取りを見守っていたトサケンとコガネが、駆け足でコッチへ近づいてきた。




「大丈夫も何も、何もされてねぇしな」

「アイツら、何しに来たんでしょうね?」




 さぁ? と、首を捻る俺を前に、愛しの義妹が「お兄ちゃん……」と、弱々しく口をひらいた。


 俺はそんな義妹を安心させるべく、冗談の1つでも言おうとして……やめた。




「早乙女さんとデートするって、どういう事なの?」




 そんな事、言ってる余裕もなさそうだし、ね?

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