第15話 VS体重計(カワイイ義妹はお年頃編)
コガネと義母さんのプチ親子喧嘩から一夜明けた、翌朝のキッチンにて。
俺はいつものより気持ち早めに起きるなり、着替えもそこそこに、本日の朝食メニューを考えていた。
「昨日はコガネも義母さんもゴキゲン斜めだったし、ここらで1発、胃袋を起点にご機嫌取りをしなくちゃな」
義妹と義母の両方の機嫌を取らないといけないのが、息子のツライ所だな。
ちなみに今現在、パパンは早朝出社、ママンは本日お仕事お休みで、まだ夢の国。
そして俺の愛する義妹は、寝汗を流すべく、お風呂でお楽しみ中だ。
「よしっ、今日は2人の好きなホットケーキでも作ってやりますかな!」
俺はさっそく森永さん家のホットケーキミックスの素を取り出すべく、キッチンの棚を漁り――
「うにゃああああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~ッ!?」
瞬間、リビングにまで轟く義妹の悲鳴が、俺の耳朶を激しく震わせた。
「な、何事だ!?」
俺はホットケーキミックスの素をその場に放り捨て、コガネの悲鳴が聞こえた脱衣所へ、慌てて駆け寄った。
「どうした、コガネ! 大丈夫か!?」
「ッ!? ちょっ、ダメ!? ダメだよ、ダメ! お兄ちゃんは入ってきちゃダメだよ!? 今ボク、何も着てないからね!?」
俺が脱衣所の扉を開けようとした瞬間、
――ガシッ!
と、物凄い力と声音で、扉が開かないように踏ん張るコガネ。
ヤダ……ウチの妹、すっごいパワフル♪
「いやでも、すっごい悲鳴が聞こえたぞ? ガチめの悲鳴が聞こえたぞ!?」
「だ、大丈夫! ほんと大丈夫だから!? ちょっと油断したっていうか、体重計の小粋なイタズラっていうか――あっ!?」
ヤッベ!? という感じで、慌てて口をつぐむマイ・シスター。
んん~っ?
『悲鳴』『油断』『体重計』……まさか?
「なぁ、コガネ? お兄ちゃんの勘違いだったら別にいいんだけどさ?」
「な、なにっ?」
「もしかして……体重増えた?」
――ドンッ!
「ッ!?」
「あはっ♪ ごめんね、お兄ちゃん? ドアに蚊が居たから、つい打っちゃった♪」
「ふぇぇ~……」
萌えキャラのような声を漏らしながら、ガタガタと震える脱衣所の扉を眺める。
アカン、これ以上マイ☆エンジェルを刺激したら、脱衣所が壊されてしまう!
そして何よりも、今のコガネに関わるのは怖い!
冗談抜きで怖い!
「お兄ちゃん? 女の子に体重の話はしちゃダメなんだよ? 分かった?」
「ひゃ、ひゃい……」
「んっ、よろしい♪」
女の子に体重の話はしない!
ちぃ、覚えた!
「と、ところでコガネちゃんや?」
「なに、お兄ちゃん?」
「いやその……朝ごはんの量、減らした方がいい?」
――ドンッ!
「ひぃぃぃっ!?」
「……何でそう思ったのかな?」
上機嫌な義妹の声が、肌を震わせる。
お、落ち着け、ユウ・キンジョー。
ここで選択を間違えたら、殺されるぞ。
比喩ではなく、マジで?
俺は細心の注意を払いながら、しっかり言葉を吟味しつつ、口をひらいた。
「そのぅ……ダイエットするかなと思いまして?」
――ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!
五月雨のごとく連打される、脱衣所の扉。
どうやら俺は選択をミスったらしい。
「えっ、なに? お兄ちゃんは、ボクがダイエットした方がいいと思っているってこと? 言っておくけどソレ、明確な敵対行為だよ?」
「落ち着いてください、お客さまっ!? 金城家では壁パンは禁止となっております! お客さま、お客さまぁぁぁぁぁぁっ!?」
突然のマジ切れ止めて!?
ソレほんと怖いから!
チクショウッ!?
少し過去に戻って選択肢をやり直したいのに、この『金城優の人生』という名のゲームは、セーブもロードも出来ないクソ仕様なのかっ! ふぁ●く!
「いや、ほんと違うぞ、コガネ!? 別におまえが太ったとか、そういうのじゃなくて、女の子って必要もなく『ダイエットする!』とか言い出すじゃん? だから今回もそうなのかなぁ? って思っただけで、他意はないぞ! マジで!?」
「う、う~ん? まぁ、そうだね。そういう事なら……うん、セーフで」
よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~~ッ!!
全力でガッツポーズを浮かべる俺。
もう心の中では、キングジョー裁判所の中から小っこい俺が『勝訴』の文字を両手に掲げて、走り出していた。
この勝負、俺の勝ちだ!
「それで、朝ごはんの量、どうする? 減らす?」
「……今日の朝ごはんは、ナニ?」
「メープルシロップたっぷりの、ホットケーキ」
「うぐっ!? …………………………食べる」
今にも血を吐き出さんばかりの苦渋に満ちた声音で、そう応えるコガネ。
どうやら食欲には勝てなかったらしい。
「甘さ控えめにする?」
「……お願いします」
弱々しくそう口にする義妹が何だか可愛くて、俺は思わず噴き出した。




