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第9話 お兄ちゃんに水着を見せるのは、妹の義務ですよ?

 マイ・スィート☆エンジェル・コガネたんが、水着片手に試着室に消えて5分。




「お、お兄ちゃ~ん? き、着替え終わたよぉ?」




 どことなく上ずった、弱々しい声音が金城イヤーの耳朶(じだ)を叩いた。




「時はきた」




 それだけだ。


 俺は瞑想を止め、ゆっくりと目を見開いた。




「さぁ、みなさんお待たせしました! 『どきっ!? 義妹だらけの水着試着会! ~ポロリもあるよ♪~』いよいよ開幕です!」


「ポロリは無いよ?」

「司会実況はわたくし、みんなのアイドル【キングジョー】こと金城優でお送りいたします!」

「なに、そのマイクパフォーマンス? お兄ちゃん以外、誰も居ないでしょ? ……居ないよね?」




 試着室の向こう側で、マイハニーが困惑したような声をあげる。


 安心してくれ、コガネ。


 仮に野郎がこの場に居たとしても、記憶が無くなるまでボコボコにしてみせるから!


 だから思う存分、その愛らしい姿をお兄ちゃんに()せておくれ!




「エントリーナンバー1番! キングジョー・エディション、コガネちゃん常夏バージョンです! どうぞ!」

「えっ? もう出ていいの?」




 コガネはおそるおそると言った様子で、試着室のカーテンを開けた。


 そこにはシンプルな白いワンピースタイプの水着を着こんだ義妹が、所在(しょざい)なさけにコチラを見ていた。




「ど、どうかな?」

「ふむ……」




 不安そうな、それでいてどこか期待に満ちた瞳で俺を見上げる義妹。


 肌の露出が少なく、清純そうな雰囲気……だというのに、胸の部分だけ『デデーンッ!』と自己主張している、そのアンバランスなエロス。


 ふっ、なるほどな?




「よく似合ってるよ、かわいい」

「あ、ありがとう。でも、鼻血は拭きなよ?」

「おっとぉ? こりゃ失敬」




 俺は素早くポケットに仕込んでいたティッシュで、溢れ出た情熱を拭った。


 そんな事をしている兄様を横目に、愛する義妹はくるりっ! と、その場で1回転し、満足そうに「むふーっ♪」と笑みを溢した。




「うん。シンプルな可愛らしいデザインで……気に入ったよ、コレ!」

「そりゃ良かった」




 初回という事もあり、最初は軽いジャブのつもりで、王道で攻めたのが良かったのだろう。


 コガネもすっかりリラックスした様子で、試着を楽しんでいた。


 くっくっくっく!?


 これで【例の水着】を着るハードルが下がったというモノだ。


 俺は心の中を読まれないように、爽やかな笑みを顔に貼り付けながら、いかにも親切心と言わんばかりの態度で、義妹に声をかけた。




「着心地の方はどうよ?」

「う~ん? イイ感じだけど……そのぉ」




 コガネは言いにくそうに、身体をもぞもぞし始めた。




「どったべ?」

「む、胸回りがちょっとキツイかも……」




 マイハニーがそう口にした瞬間、俺の瞳がスコープ越しで獲物を狙うスナイパーのソレに、切り替わった。


 確かにコガネの言う通り、清楚であるハズの水着が、胸の部分だけパンパンッ! に膨らんでいて、何ともドスケベになっていた。


 おいおい、なんだアレ?


 肌の露出は少ない、防御力高めの水着を選んだハズなのに、この見え隠れする妖しい色気は!?


 ば、バカな!?


 かなり大きめのヤツを選んだつもりなのに、さらにその上をイクだと!?




「エロいね♪」

「エロくないよ!? もうっ!」




 シャッ! と、勢いよくカーテンを閉めるコガネ。


 あぁっ!? と、悲痛な声をあげる兄を無視して、マイハニーは言葉を連ねた。




「とりあえず、コレは保留! 次の着るからね?」

「了解」




 俺は全神経を耳に傾け、試着室から聞こえる僅かな『衣擦れ』という名のハーモニーを楽しむ作業に入った。


 スルスル♪ と、試着室の向こう側から聞こえてくる魅惑のハーモニーに、否が応でもテンションが跳ね上がる。


 オッス、おらキングジョーッ!


 ムラムラすっぞ!




「お、お兄ちゃ~ん?」

「準備できたか?」




 うん、と試着室越しから義妹の愛らしい声が響いてくる。




「それではいきましょう! エントリーナンバー2番! キングジョー・プレゼンツ! コガネちゃん、超常夏バージョンです!」

「毎回ソレするの?」




 シャッ! と、再び試着室のカーテンが開かれる。


 そこには、黒と白のコントラストが目に眩しい、フリル付きのビキニに身を包んだ義妹が居た。




「控え目に言って、120点」

「100点越えちゃったよ」




 コガネは満更でもなさそうな表情で、自分の姿を見下ろし、うんっ! と頷いた。




「これもカワイイね! とくにこの、腰に巻かれている布? が露出を抑えてくれて、イイ感じだよ!」


「パレオね。どうよ? セクシーでありながら可愛い、相反する2つの要素を詰め込んだ水着の感想は?」


「うん。着心地もいいし、コレにしちゃおうかな?」

「おっとぉ! それはまだ早計だぜ。おぜうさん(お嬢さん)?」




 余程この水着が気に入ったのだろう。


 コレを購入する気マンマ●コの義妹に、俺は慌てて伝説の『ちょっと待った!』コールを口にした。




「まだあと1枚ほど残っているでしょ? ソレを着てみてからでも、遅くはないと思うぞ?」

「う~ん……? まぁ、せっかくお兄ちゃんは用意してくれたモノだし、着てみようかな?」




 そう言って、コガネは三度(みたび)試着室の中へ消えて行った。




「それじゃ次の水着は……はへっ!?」




 試着室の中から、コガネの素っ頓狂な声音が聞こえてくる。


 ……ついにキタか。


 例の最終兵器が。




「どうした? ナニかトラブルでもあったか?}




 俺は極めて落ち着いた口調で、義妹に声をかけた。


 そんな俺とは対照的に、コガネは酷く慌てた様子で、




「こ、コレをボクが着るの? ほんとに!?」

「あぁ、頼むわ」

「む、むむ、無理だよ!? 出来ないよ!?」




 ぶんぶんぶんぶんっ! と、試着室の向こう側でコガネが猛烈に首を振っている姿が、簡単に想像できた。


 それでも、俺の答えは変わらない。




「お願いだ、コガネ! お兄ちゃんのために、その水着を着てくれ!」

「うっ!? で、でもぉ……」

「頼むっ! お兄ちゃんの夢を叶えると思って……」

「うぅ~っ!?」




 コガネはしばし(うめ)いたかと思うと、



 ――するする♪



 と、試着室の向こう側から魅惑の『衣擦れ』の音が、優しく俺の耳朶を撫でた。


 勝った。


 俺が心の中でガッツポーズを浮かべると、数秒としないうちに、コガネの不安そうな声音が肌を叩いた。




「で、出来たよ、お兄ちゃん?」

「さぁ、大本命のエントリーナンバー3番! キングジョー・セレクション! コガネちゃん、超ハイレグ水着バージョンです! どうぞ!」




 ゆっくりと試着室のカーテンが開かれる。


 そして試着室の向こうに居たのは……もはや水着と呼ぶのもおこがましい、大事な所をヒモで隠しただけの義妹の姿があった。


 仮にも花の女子高生である彼女がしていい恰好じゃなかった。


 おいおい?


 最高かよ!




「うぅ……なにこれ?」

「よっしゃぁぁぁぁぁっ! やはり俺の目に狂いはなかったぁぁぁぁっ!?」




 大事なところを、かろうじて隠している程度の義妹の水着姿を前に、俺氏、場所も選ばず大☆興☆奮!


 少しでも動けば乳輪がハミ出そうで、エロ親父には(たま)らない一品だ!




「こ、コレ本当に水着なの? その、色々ハミ出そうで、怖いんだけど……」




 そう言って、しきりに乳輪と、股に食い込むヒモを気にする我が義妹。


 その恥ずかしがる様は、なんともキュートで……パーフェクトだ、コガネたん!




「マジでよく似合ってるよ、コガネ! よしっ、さっそくソレを買いに行こう!」

「ま、待って、待って!? ちょっと待ってお兄ちゃん!?」




 コガネが慌てた様子で、俺の肩を掴んできた。


 どうした、マイ☆エンジェルよ?




「よく考えて、お兄ちゃん? コレ買っちゃったら、ボク、こんなハレンチな姿で人前に出る事になるんだよ!?」

「ハッ!?」




 愛する義妹の一言が、大音量となって俺の身体を駆け巡った。


 お、俺以外の男に、マイハニー☆コガネたんのドスケベ水着を晒すというのか……?


 そんな事、本当に許せるのか?


 ……(いな)っ! 答えは否!


 俺は生粋の独占厨だ。


 コガネが少しでも、野郎共にエッチな目で見られてみろ?


 俺は道行く野郎共の瞳に、レーザーポインターを照射しなければならなくなるぞ!?




「た、タイムタイム!? やっぱソレ無し!」




 俺は慌てて店内からもう1着、適当な水着を選ぶべく、駆け出した。


 俺以外の野郎に、マイハニーの素肌を見せるワケにはいかない!


 もはや下心も忘れて、露出の少ない水着選びに必死になった。


 何かないか!?


 素肌を完璧に隠して、かつエロくない水着は!?


 そして数分後、お目当ての水着を手に入れた俺は、意気揚々と試着室の前へ戻ってきた。




「お待たせ、コガネちゃん! とりあえず、この露出対策完璧なダイバースーツを着てみて……デンジャラス!?」

「あっ、お兄ちゃん。お帰り」




 試着室の前、そこには自分で選んだと思われる赤色のビキニに身を包んだ義妹が、コチラを見ていた。




「どうかな? ボクも自分で選んでみたんだけど……」




 どこかお(うかが)いを立てるように、上目遣いで俺を見上げるコガネたん。


 布地の面積は決して広くはないが、大事な所はキッチリガードしている。


 そして何より、匂い立つような豊満な魅力が、何とも男心をくすぐってくる。


 恥ずかしがり屋なコガネにしては、大胆な水着を選んだモノだ。


 俺は内心驚いていた。


 ギリギリを攻めつつ、美しさも目立つ、ちょうど良いラインの水着。


 ハッキリ言って――




「――パーフェクトだ、義妹(いもうと)よ」




 こうして、外出用の水着は決定した。

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