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9:菊花の説明1

◆菊花の説明・1◆


「で、では、何時、どんな事で気付いたんだ?」

「そうですね。先ず、朝食の席で、ファウスト様がクロリンダ様を過去形で語った時に、自殺に見せかけて殺したんじゃないかと疑いましたね」

「そんな些細な事で疑うのか?」


 私への菊花の返答を聞いて、ダヴィデが呆れたように口にした。


「推理小説などで、悪天候の島を舞台に事件が起こるのは、定番ですので。容易く逃げられないし、捜査関係者も近付けない。犯人も絞り込み易い」

「小説のように事件が起こるんじゃないかと、思っていたって事?」


 エドガルドが尋ねると、菊花は首を振った。


「いいえ。そう思ったのは、クロリンダ様が起きて来ないと聞いた時ですね。良くある事なら兎も角、珍しいとの事で、それに加えて、過去形で語る人がいるとくれば、心配にもなりますよ」

「それで、その時からファウストを怪しんでいたと?」

「そうですね」

「じゃあ、次は、寝室に寝間着が無いと気付いた事で、ジェンマとファウストの共犯を疑ったのかな?」

「ちょっと違います」


 エドガルドの言葉を、菊花は訂正する。


「その前に、ファウスト様が、もう死んでいると断言しました。それで、ファウスト様が殺したのだと思ったのです」


 部屋が暗かった為に、不自然な発言になった訳だ。


「その後、努めて冷静にクロリンダ様のご遺体を観察すると着替えていなかったので、ジェンマさんを疑いました」

「でも、それだと、クロリンダが着替えの手伝いを拒んで自分で寝室に鍵を掛けた後に自殺したって事も、考えられたのでは?」

「そうですね。ですが、首を吊っている高さが不自然だと気付いたので、自殺の可能性はその時点で消えました」

「ああ。そうか」


 この時点でファウストとジェンマを怪しんでいたなら、館の捜索をする必要は、無かったのでは?


「でも、ファウストが首吊り自殺に見せかけなかったら? クロリンダが着替えを拒んで寝室に鍵を掛けて閉じこもり、ジェンマが寝た後で部屋を出たと言う事になったよね?」


 エドガルドは、起きなかったもしもの話を気にしている。


「その場合、クロリンダ様は、どうやって、廊下に繋がる扉の鍵を開けるんですか? その鍵の管理をするのは、ジェンマさんでしょう? 女性の部屋の鍵を掛けずに寝るなんて、ジェンマさんが怪しまれない筈が無いですよ」

「じゃあ、クロリンダが、何らかの理由でジェンマに先に休むよう言って、着替えも要らないと言ったら?」

「結婚前の令嬢が、逢引で朝帰りですか?」

「あ! クロリンダがそんな事をするとは思ってないよ! ジェンマがそんな嘘を吐いたら、判らないよねって話で」


 エドガルドは、慌てて否定した。


「逢引を黙認して、結果、殺害された。その場合、クロリンダ様の御父君は、ジェンマさんの命を奪わずに許しますか?」

「それは無いだろう。ジェンマも解っていると思うが」


 私はそう答えたが、直後、ジェンマは解っていないかもしれないと思った。

 何しろ、普通では無いからな。


「ファウスト様。遺書を偽造したのは、貴方ですか?」

「いいや。クロリンダの側に、寝室の鍵を重しに置かれていた」

「でも、ファウスト様が殺人だと思ったと言う事は、自殺には見えなかったのですよね? ならば、そのままにしておけば殺人として捜査されるのは、間違いなかったと言う事ですね」


 ジェンマは、遺書さえ置いておけば自殺に見えると思ったのか?


「そんな訳ない! 貴女さえ居なければ、捕まらずに、ファウスト様と結婚出来たわ!」

「都合の良い考えですね。捜査関係者を馬鹿にし過ぎじゃないですか? 彼等が無能だと言う根拠でもあるんですか?」

「遺書を置いといたんだから、疑う訳ない!」


 やはり、そう思っていたか。


「話を逸らさないでください。私は、捜査関係者が無能だと思う根拠を尋ねているんです」


 菊花は、質問に対する答えがずれている事を許さず詰める。

 怖いな。

 もしかして、菊花はもともとこう言う性格で、あの時はかなり抑えていたのだろうか?

 国王である父上の御前であったからな。

 抑えて当然か。


「私が疑われるなんて、有り得ないの! 貴女が気付いたのは、異世界人だから! 貴女さえ居なければ、ファウスト様と結婚出来た!」

「誰がお前などと結婚するか!」

「ジェンマのおかしな話は聞きたくないので、猿轡をしますね」


 フィオレがそう言ってジェンマの口にハンカチを押し込み、吐き出せないようスカーフで塞ぐと後頭部で結んだ。

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