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7:動かぬ証拠が示した犯人

◆犯人発覚◆


「では、そろそろ誰が犯人なのかはっきりさせる為に、身体検査をしましょうか」

「身体検査? 凶器は、首を吊っていたロープじゃないのか? 違ったとしても、今も持っている訳が無い」


 私がそう言うと、菊花は首を横に振った。


「違います。クロリンダ様の両手の指の爪が、血で汚れていました。ですが、クロリンダ様の首には、ロープを外そうとして出来た傷は無かったのです。つまり、クロリンダ様は、何らかの理由で犯人を引っ掻いたものと思われます」


 その言葉に、私は衝撃を受けた。

 何故、助かろうとしなかった?

 ロープを外そうとしても無理だと、試す前から思ったのか?

 それとも、引っ掻かれた痛みで犯人が諦めてくれると思ったのか?


「だとすると、犯人は後ろからではなく、前から首を絞めたのかな?」


 ダヴィデがそう呟いた。


「恐らくそうでしょう」

「でも、何故、前から?」

「そうですね……。苦しむ顔が見たかったのかもしれません」


 エドガルドの疑問に答えた菊花の言葉で、犯人のイメージが悪くなった。

 ファウストは、いや、ファウストでなくとも、そんな人間を庇ったのか?

 ……ふっ。ベッキーを庇った私も、同じようなものだな。


「では、女性陣は、私とフィオレさんが。男性陣は、チェルソさんとジョバンニさんにお願いします」




 私は、クロリンダが引っ掻いたのは犯人の両手かと思っていたが、誰も手に傷など無かったので、部屋を移動し、一人ずつ服を脱いで調べる事になった。

 新しい引っかき傷がある人間が見付かったとしても、念の為に全員調べるよう菊花が言ったので、それなりに時間が掛かった。


 談話室で身体検査が終わるのを待っていると、チェルソとジョバンニが戻って来た。

 女性陣は、後何人だろうか?

 そう思っていると、菊花が戻って来て口を開いた。


「結論から申し上げましょう。犯人は彼女です」


 菊花の言葉を合図に入室したフィオレが、ロープで拘束した半裸の侍女を絨毯に転がした。

 クロリンダが連れて来た侍女だ。

 名前は、確か、ジェンマだったか。

 首に、真新しい引っかき傷がある。


「な、何だと?! どういう事だ?! その女が犯人だと?!」


 ファウストが、驚愕して声を上げた。


「もしかして、ダリラさんが犯人だとでも思っていましたか?」


 菊花が冷たい目で睨み付けると、ダリラが強張った顔で入って来た。


「ファウストさん。本当なんですか? 私が犯人だと思って、あんな事したんですか?」

「そんな訳ないでしょう!」


 転がされたままのジェンマが、声を上げた。


「ファウスト様が、あんたなんか庇う訳ないじゃない! ファウスト様に愛されているのは、私よ!」


 勝ち誇った様子のジェンマに、私は困惑した。

 つまり、ファウストは、この女と付き合っていたのか?


「ふざけるな! 何を勝手な事を! 私がお前などを庇うものか! 私は、ダリラが殺したのだと思ったから」


 事後共犯だと認めるような事を口にしたファウストは、途中で言葉を切った。


「ファウスト様は、私が、人を殺すような人間だと思っていたんですね」

「い、いや。それは、クロリンダが、君を虐めていたから」

「意味が解らない! クロリンダ様が、何時、私を虐めたって言うんですか!」


 ダリラは泣き出してしまった。

 両手で顔を覆いしゃがみ込んだダリラを我々の視線から隠すように、彼女のメイドが膝を着いて、ハンカチを差し出したりと気遣い始めた。


「何時も意地悪されていたじゃないか! 昨日だって」

「虐めなんかじゃない! 間違ったら教えてくださいって、私から頼んだの!」


 後で落ち着いた頃に聞いたが、赤の他人相手に失敗しないよう、友人間で実践練習させて欲しいと頼み、クロリンダは快諾してくれたのだそうだ。

 ダヴィデとエドガルドはそれを知らなかったが、虐めているように見えた事は無いそうだ。

 しかし、目が曇っていたのか、ファウストには虐めに見えていたらしい。


「そんな……。私は、君を助けたくて。君の事が好きだから」

「仮に虐めでも、あの程度の事で、殺したりなんかしないの! 私がどんな人間か見もしないで、何が好きよ」


 ファウストを見る事無くそう言ったダリラの声は、憎しみが滲んでいるように聞こえた。

 友人を殺害するような人間だと思われたのが、許せないのか。

 それとも、クロリンダを信じなかったのが、許せないのか。


「ダリラ。私は」

「こんな女が好きだなんて、嘘でしょう。ファウスト様! 何時も私に会いに来てくれたのに!」


 ファウストはダリラに自己弁護しようとしたようだが、ジェンマに邪魔されて睨んだ。


「私が、クロリンダに仕えているだけのお前などに、会いに行く訳が無いだろう!」


 本当に付き合っていないのか、手を出していて嘘を吐いているのか、我々には判らない。

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