表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6:1

◆事後共犯容疑者◆


「さて、次は、どうやって絞り込みましょうか?」

「鍵が掛かっていたのだから、鍵を管理している執事が怪しいだろう」


 ファウストの言葉で、私は、寝室に鍵が掛かっていた事を思い出した。


「ジョバンニさんですか? そう言えば、犯人は、何の為に鍵を掛けたんでしょうね?」

「自殺以外に有り得ないと思わせる為じゃないか?」


 ダヴィデの推測が正しいと思う。


「殺人だとバレた場合に、ジョバンニに罪を着せる為じゃないかな?」


 エドガルドも、自分の推測を口にした。


「ジョバンニが犯人ではない場合、合鍵をどうやって用意するんだ?」

「それは……」


 ファウストの疑問に、エドガルドは言い淀んだ。

 言いたくなかったのだろう。

 合鍵を用意出来るとすれば、それは……。


「ダヴィデ様とその家の人ならば、用意出来ますね」


 ダヴィデと友人関係に無い菊花は、疑って友情が壊れる事を不安に思う訳も無い為、躊躇い無く答える。


「なるほど。しかし、それだと計画犯罪だな。それならば、もっと不自然ではない方法を考える時間があった筈」

「そうですね」


 ダヴィデの反論を、菊花は否定しなかった。


「まあ、合鍵の事は、一旦忘れましょう。使用されたか判りませんし」

「何を言っている? 鍵は寝室の中に在ったのだから、合鍵で掛けるしかないじゃないか」


 ファウストの言う通りだ。


「いいえ。寝室に鍵が掛かっている時に、寝室の中に鍵が在ったかどうか誰も見ていませんから、我々が合鍵で開けた後に、犯人が鍵を室内に入れた可能性があります。初歩的なトリックですね」


 そう言われると、確かに誰も見ていない。

 窓が在る訳でもないので、室内が見えないからな。

 しかも、扉を開けて、直ぐに鍵が目に入った訳じゃ無い。

 隙を見て、犯人が鍵を落とした可能性は否定出来ない。


「何故解った?!」


 驚いたようにそう言ったファウストに、菊花が冷たい目を向けた。


「本で読んだ事があるからですが、今の発言は、自白と取っても宜しいですか?」


 確かに、まるで、菊花が正解を言い当てたかのような発言だった。


「言葉の綾だ。これしきの事で、犯人と決め付けるんじゃない!」

「そうですか。では、クロリンダ様のご遺体を発見した際、『もう死んでいる』と判ったのは何故です?」


 そう言えば、そんな事を言っていた気がするな。


「見れば判るだろう。全く動いていなかったのだから」

「随分冷静だったんですね。婚約者が首を吊っていたのに」

「冷静で悪いか?」

「悪くはありませんが、暗かったのに、よく見えましたね」


 あの時、悪天候により日の光が差さず、室内は暗かった。

 稲光で照らされた一瞬では、生死の判別は出来なかったと思う。


「か、完全に暗かった訳じゃない。居間の明かりもあったし」

「ほ、本当ですか? 実は生きてたのに、ファウスト様の勘違いで手遅れになった訳じゃ……」


 ダリラが、あの時まだクロリンダが生きていた可能性を考え、顔色を悪くしていた。


「違う! とっくに死んでたんだ!」

「とっくに死んでいたと、何故言い切れるんですか?」


 疑いを晴らそうとしたファウストの言葉を、菊花が追及する。


「……お前達! 何故、私を庇わない! 我等の友誼(ゆうぎ)は、この程度だったのか!?」


 何故言い切ったのか弁明せず、ファウストは我々を薄情だと責める。


「……庇いたい気持ちが無い訳では無いが、クロリンダも友人だからな」


 ダヴィデの返答に、誰も異論は無いようだった。


「その犯人は、例え友情が壊れようとも、明らかにしなければならない」


 しかし、ファウストが犯人ならば、動機は何だ?

 誰かを庇った共犯?

 誰を庇う?

 ……女か?


 私は、悲し気に俯いているダリラに目を遣った。

 彼女は、華やかで目を引く風貌のクロリンダとは、違うタイプだ。

 性格も、この短期間の印象では控えめな大人しい人物に見える。

 ただ、それは、我々が彼女より身分の高い貴族だからかもしれない。

 身分の違いを考え、素の性格を出さないと言う事は、珍しくないだろう。


 しかし、彼女がクロリンダを殺害する動機は、あるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ