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◆除外◆
「では、誰が犯人ではないか考えて行きましょうか」
「犯人ではない証明など、出来るのか?」
ダヴィデが問うと、菊花は自信有り気に答えた。
「はい。少なくとも、私は犯人では有り得ません」
「自分が犯人では無い事は、自分が一番よく知っているとでも言うのか?」
ファウストが睨むが、菊花は、笑いを堪えた様な表情で否定する。
「まさか。遺書の存在を思い出してください。私は、クロリンダ様の筆跡を見た事が無いので、真似出来ないのですよ」
確かに、その通りだ。
「他に、クロリンダ様の筆跡を見た事が無い人はいますか?」
「今此処にいるうちの使用人達は、知らないだろう」
ダヴィデが答えた。
「チェルソは、見た事があったか?」
「いいえ。お勉強の際のお供は、身分が高い者が務めておりましたので。手紙は、直筆ではありませんよね?」
「ああ」
王太子時代の側近の内、上級貴族は全員、今は私に仕えていない。
「フィオレさんは?」
「私は、あります。アナスタシア様に送られた直筆のお手紙を拝見致しましたので」
フィオレは、アナスタシアに仕えており、当番制で、菊花に無料で貸し出されているのだ。
「待て。犯人を庇って、クロリンダを吊るした者が別にいると言う説があったな。その場合、お前達が犯人ではないとは、言い切れないだろう」
ファウストの言葉も、一理ある。
「そうですね。ですが、私には動機が有りませんけれど」
「動機無き殺人もある筈だ」
「では、誰が私を庇うんです?」
「それは……」
ファウストは、言葉に詰まった。
菊花が罪を犯した場合に、事後共犯となってでも庇うであろう関係性の者は、いない。
「で、では、其方が庇った方かもしれん」
「私が誰を庇うと?」
今度こそ、ファウストは、何も言えなくなった。
菊花が、事後共犯となってでも庇うであろう相手も、いないのだから。
「あのさ。菊花が犯人、若しくは、犯人を庇った事後共犯なら、自殺じゃないなんて言い出さないんじゃないかな?」
エドガルドの言葉は、尤もだ。
菊花が言いださなければ、自殺と見られていたのだから。
「では、菊花は、犯人でも事後共犯でも無いと見て、問題無いだろう」
誰からも異論は無かった。