表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

1:嵐に閉ざされた館

エイドリアン視点です。

全ての手掛かりが読者に提示されないかもしれませんが、難易度がとても低いので、問題無いでしょう。

それと、トリックは簡単過ぎて解くまでも無いので、考えなくて大丈夫です。

殺人犯は誰なのか、これだけ推理してください。

◆事件の舞台と其処に集まった経緯◆


 私の名は、エイドリアン。

 この国の、元王太子である。

 自らの愚かさにより廃嫡された私であるが、亡き母上から継承した伯爵位を取り上げられる事は無かった。

 母の実家は、母の存命中に流行り病で絶えたのだ。

 故に、母上が伯爵を襲爵していた。

 それを、母が亡くなった後、私が襲爵したのである。

 尚、父上も別の伯爵位を有している。



 それはさて置き、私は今、友の招きを受けて彼の別荘を訪れていた。

 独りではない。

 菊花(きっか)と言う異世界人も一緒だ。


 彼女は、私の婚約者を私の恋人が殺害したのは、自己防衛による事故ではなく計画的犯行だったと暴いた女性だ。

 私は恋人が()いた嘘にまんまと騙され、婚約者を嫌ってしまったのだ。

 しかも、殺されそうになったと言う嘘も見抜けず、命を奪われた婚約者に、王太子殺害未遂の罪を着せようとしてしまった。

 廃嫡されて当然である。


 あの事は、悔やんでも悔やみきれない。

 恋人の計画的犯行を暴いた菊花を逆恨みしなかったと言えば、嘘になる。

 だが、彼女のお陰で、私が婚約者に着せた汚名は広まる前に晴らされたのだ。


「うわ。降りそう」


 菊花が見上げる空には、黒い雨雲の急流が一面に広がっていた。

 先程から強い風が、私達の服をはためかせている。

 湖は波立ち、転覆するかと思った程だ。

 幸いにも、船は転覆せずに我々は島へと降り立つ事が出来た。


「急ぎましょう」


 従者のチェルソに促され、私達は、島の中央に建つ友の別荘に急いだ。




 飛ばされそうな菊花を引っ張りながら走り館に入ると、友が出迎えてくれた。


「ようこそ。エイドリアン。済まない。こんな天気になるとは思わなくて」

「気にするな。一月(ひとつき)後の天気など、判る筈も無い」


 彼とは幼い頃からの仲で、名をダヴィデと言う。

 会うのは数年ぶりだが、髪型にも体型にも変わりは無い。

 彼が寄越した手紙に、噂の異世界人を見たいと書いてあったので、菊花を連れて来たのだ。


「彼女が、異世界人だね?」


 その時、雷光が辺りを照らした。

 ダヴィデの言葉で菊花に振り向いた私は、彼女が急いで耳を塞ぐのを目にした。

 直後、予想外の大きさの雷鳴が轟き、私は驚いて肩を竦めた。

 大粒の雨が窓に叩き付けられ、館は本格的な嵐に閉ざされた。




◆客室◆


「ところで、我々が最後か?」

「ああ。そうだよ。先ずは、部屋へと案内しよう」


 玄関ホールに、二階への階段が二つある。

 向かって左の階段を上り、右の階段と共通の踊り場を通り、更に左の階段を上る。

 一番奥が最も身分が高い客用の部屋だった。


「私が此処で良いのか?」

「別に、構わないさ」


 室内は三つに分かれ、居間・従者の寝室・主の寝室とされている。

 従者の寝室は、通路の分狭くなっている。

 廊下から出入り出来るのは、居間だけだ。


「菊花嬢の部屋は、隣だよ」


 此処に案内される間に、菊花の紹介は済ませてあった。

 私と菊花が案内された部屋の他に、客室は四部屋ある。

 他に四名招待していると手紙に記されていたので、客室に空きは無いだろう。


「夕飯まで、部屋で寛いでいてくれ」

「ああ」


 ダヴィデが去ると、チェルソは寝室に向かい、鞄の中身をクローゼットなどに移し始めた。

 私は暖炉の前の椅子に座り、嵐は何時去るのだろうかと考えていた。

 寝室から出て来たチェルソが、お茶を入れてくれる。


「季節外れの嵐ですね。凶兆でなければ良いのですが」

「そうだな」


 不作も心配だが、流行り病も怖ろしいものだ。

 後は、火山噴火だな。




 (のち)に思ったのだが、この嵐は、これから起こる事件の凶兆だったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ