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恋愛相談:戸塚智成

【智成】

お前イケメンすぎん?


「なんだこいつ」


 夜、ちょうど布団に入った直後。

 俺は突然のラインを見て呟いた。


【大和】

どうした急に


 少し悩んだ後で返事をすると、即座に既読がついた。


 溜息ひとつ、横になっていた体を起こす。

 十秒くらい待つと、次の連絡があった。


【智成】

恋バナしようぜ


 なるほどね、と俺は納得した。


【大和】

鈴原さんなら脈あると思うぞ


【智成】

なんで分かった?


 およそ二分後、返信があった。

 恋は盲目という言葉は実に秀逸である。


 恋バナをするならば、相手は共通の知り合いだ。

 該当するのは二人。恋中さんと、鈴原さんだけ。


 彼は俺と恋中さんが交際していると思っている。

 普通に考えれば、消去法で鈴原さんしか残らない。


「……俺に相談されてもなぁ」


 あえて誤解を放置している身でアレだが、恋人を作った経験は無い。

 そして、恋中さんに対する感情を「友情」だと思い込むために感覚をアップデートしている最中だ。今日話したばかりの金髪ギャルをどうやって口説くか相談されても困ってしまう。


「とりあえず無難に返事しとくか」


【大和】

直感


【智成】

すげぇな


【智成】

師匠と呼ばせてください


【大和】

やめてくれ


【智成】

昼間の恋中さんのフォロー


【智成】

あれ、どうやったらできるんだ?


【智成】

マジでイケメン過ぎてビビったわ


【大和】

言いたいことを言っただけだ


【智成】

(メモをするパンダのスタンプ)


【大和】

休日、遊びにでも誘ったらどうだ?


【智成】

つらい


【大和】

(首を傾けるペンギンのスタンプ)


【智成】

断られたら泣く


【大和】

乙女か


【智成】

(救いを求めるパンダのスタンプ)


 俺は一度スマホを床に置いて、仰向けに倒れた。


「……めんどくせぇ」


 心からそう思う。

 今日初めて会話した相手の恋愛事情なんて知ったことじゃない。


 だけど鈴原さんは恋中さんの友達候補だ。

 そして、智成は鈴原さんの幼馴染である。

 ここで恩を売っておけば、将来的に恋中さんの助けになるかもしれない。


 恋中さんから「友達料金」とか言われた時に、友達にメリットなんて求めない的な話をしておいて……などと思わなくも無いが、少なくとも現段階では恋中さんの方が遥かに大切だ。


「三杉くんお友達特典ってやつだな」

 

 入学当初、俺は不安ばかりだった。

 見知らぬ土地、初めての一人暮らし……。


 今は全く不安を感じていない。

 何もかも、恋中さんのおかげだ。


 出会ってから一週間と少しだけど、密度が違う。

 学校でしか会わない友達と一日に会話する時間を考えれば、彼女と過ごした一週間は、通常の十倍以上──数ヵ月の付き合いに相当する。


 大切に思うのは自然なことだ。

 だから、恥ずかしい気持ちになる必要は無い。


「……照れんな、バカ」


 顔を隠して、自分に向かって呟いた。

 我ながら重症かもしれない。感覚をアップデートするどころか、むしろ──


【大和】

(バイト先の画像)


【大和】

このカフェ、知ってる?


 俺は感情を無にして返事をした。


【智成】

知ってる


【大和】

俺のバイト先


【大和】

口実にしてくれ


【大和】

日曜、シフト入ってるから


 土曜日も入っているが、あえて外した。

 初バイトに知り合いを呼ぶのは抵抗がある。

 ぶっちゃけ一ヵ月くらい待って欲しいが、断腸の思いで二日目を提案した。


【智成】

お前マジでイケメン過ぎない?


【大和】

(胸を張るペンギンのスタンプ)


【大和】

(おやすみ、と言って眠るペンギンのスタンプ)


 俺はスタンプを連打してからスマホを床に置いた。

 その後、通知の音がしたけど無視する。普通に眠い。


 ……どうせ、おやすみ、とかだろ。


 心の中で呟いて、部屋の電気を消す。

 それから目を閉じると、直ぐに眠りが始まった。



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