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恋中さんと好きなもの


 授業が終わり下校時刻になった。

 俺は席を立ち、いつものように帰ろうとして、ふと恋中さんの方を見た。


 前回までは、校門を出た辺りで、なんか隣に居た。

 そりゃ帰る場所が同じなのだから、おかしなことではない。


 ただ、どうせ一緒に帰るなら教室から帰っても同じだ。

 彼女は俺の視線に気が付くと、投げられたボールを拾った犬みたいに寄ってきた。


 いや、犬という表現は失礼か?

 まぁ単純に、かわいいという意味だ。


「帰りましょう」


 俺の隣に立った恋中さんは弾むような声で言った。

 それから普通に帰宅を初めて、俺は昼休みの続きくらいのテンションで話をした。

 なんでプログラミング始めたのとか、休む時何してるのとか、そういう普通の話。


「あの」


 途中、恋中さんが言った。


「今日は、すごく私のこと聞きますね」


 特に意識してなかったけど、言われてみればそんな気がする。


「ごめん、嫌だった?」


「いえいえっ、むしろ逆です」


 彼女は照れた様子で俺を見て、


「前より興味を持って頂けたのかなと感じて、嬉しいです」


 ……こういう表情が、反則なんだよなぁ。


「私も君のこと知りたいです」


 ……こういう言葉も、ズルいんだよなぁ。


「べつに俺、話すようなこと何もないけど」


「そんなことないです。好きな物とか、色々あります」


「好きな物か……」


「一番はおっぱいで合ってますよね?」


「ごめん恋中さん、それ忘れて」


「えっ、あれっ、違いました?」


「……チガウヨ」


「そんなっ、でもだって……あれ?」


 恋中さんは困惑した様子で言って、


「じゃあなんでいつも私のおっぱい見るんですか?」


「……ミテナイヨ」


「なんで噓吐くんですか?」


 おかしいな。直前まで普通の話題で会話してたはずなんだけどな。


「ねぇ答えて。どうして噓を吐くのかしら?」


 やばいやばい。マジで不機嫌だ。


「逆に聞くけどさ」


 俺は歩きながら問いかける。


「恋中さんは、嫌じゃないの?」


「何が?」


「よく一緒に居る相手が、その、そういうのが好きとか」


「何を好きかなんて個人の自由でしょう? 私こんな性格だけど、人の好きなことを否定するほど捻くれてないわよ」


 ……かっこいい。


「だから君も、私の趣味などを知ってもあれこれ言わないように」


「もちろんだよ。因みに、恋中さんの趣味って?」


「それは……」


 恋中さんは露骨に目を逸らして、


「あら、あっという間にマンションに着いたわね」


「待ってくれ恋中さん。それは卑怯だ」


 俺は少し早歩きで前進した彼女の背を睨んで言った。

 彼女は背を向けたまま立ち止まる。それから十秒ほどの間が空き、彼女は振り向いてから小さな声で言った。


「……指」


 そして、恥ずかしそうに走り去った。


「……おっぱいの方が恥ずかしいだろ」


 その背中が見えなくなった後、俺は呟いたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 下校時の他愛もない会話とかで少しずつお互いのことを知っていくのっていいなあ。 って思ってたら >「一番はおっぱいで合ってますよね?」 やめてさしあげろ。 いや、確かに男子は大体好きだが一番と…
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