データが飛びました
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
――機種変したらデータ飛んだわ。
突然の爆弾発言。青天の霹靂とはよく言ったものである。
息を切らし、慌てて待ち合わせの喫茶店に向かうと、先客が。ツンと鼻に着く、買いたての薬品の臭い。彼女は俺の様子に気が付いた様子もなく、新しい機種に触れて使用感を確かめているようだった。前の席に座って声を掛ける。
「おい、大丈夫か?」
「あらら。早かったねぇ」
彼女は俺に気が付くと、対照的に落ち着いた笑顔を浮かべた。弄っていた端末をテーブルの端に押し退けると珈琲を一口。それから端にあったメニュー表を手渡した。
落ち着いていた。事前登録から開始していた思い出を全て飛ばしたとは思えない程。なんだか慌ててる此方が馬鹿らしくなって、溜息を一つ。
「データ飛んだんだろ。運営に問い合わせは? フレンド欄まだ登録してあるから、協力するぞ」
「あー……。ううん。一から始める。その方が楽しいから」
彼女はソワソワと視線を泳がせながら、ぎこち無く端末に目を向けた。俺の方が焦っている事に驚いている様だ。彼女はスマホを開くとアプリのアイコンを押した。ログインすると、初期から手に入るキャラが鎮座していた。
……此奴が愛して止まなかったキャラはもう居ない。ピックアップの歳には、『ドキドキして眠れない』とまで言っていたのに……。苦労して、課金してまで手に入れたキャラだったのに。
「課金だって」
思わずそう呟くと、そっと俺の頬を撫でた。表情を見ると迷いも無く、ただ吹っ切れた様子。いや、最初からそうだったな。俺が勝手に不安がってるだけで。
彼女は画面に写ったキャラを突きながら、頬杖を着いた。
「君は優しいね。でも、どうだって良いの。幾ら課金したとか、そういうの。私にとって、課金というのはテーマパークで楽しい時間を買うのと一緒。物としては残らないけど、楽しい思い出だけは残ったから、もう良いの。別の縛り、やりたいしね」
……ネトゲの課金はサービス終了と共に全て消え失せるから、無課金を貫く人間も多い。此奴も最初はそうだった。でも多分、変わったんだと思う。最初に課金して、考え方とか、そういうの。法外な程貢ぐ真似はしていないし、だからこそ、その考えなんだろうが。
「それよりさ、また新しいデータでフレンドになってよ。まだ誰も作って無いんだ」
「なってやるよ。それぐらい」
データが消えた時の喪失感というのは計り知れない。俺なら暫くは落ち込むし、その思い出を忘れる為、新しいゲームを探すかもしれない。でも思い出だけは消えないんだよな……。
「ところで次の縛りって?」
「低レアと配布で暫く。後は初期の最高レアで暫く。楽しいね。慣れたゲームを一からやるの!! 序盤だから勝ちやすいし!! 最近は皆育ってたから、試せない事沢山出来るし」
見習おう。此奴のこのゲームに掛ける思いとか、考え方。
女の子
機種変と同時に、事前登録からやってるゲームのデータが飛んだ。
キャラもある程度育っていて、何なーく進めていたため、此処での引退を考えていた。
けども、広告見て改めてダウンロード開始。
それなりに楽しんでいる。
男の子
周りに同じゲームをやっている人が居ないため、データ飛んだと聞いて驚いている。
それなりに楽しんでいる故に、サ終やデータが飛んだら暫く引き摺ると思っている。
読まなくても良い未練タラタラな感想。
課金ってそう言うものだと思ってます。
どうせするなら、きちんとした見返りがある課金をしたい派です。(年パス買うような)
その点、ガチャは運が絡みますからね。怖いです。
本当に好きなゲームって、結局戻っちゃうんですよね。
(結構有名なゲームなんで、広告格好良いし。購買意欲掻き立てるのが上手いですし。最初のきっかけもアニメCMですし)
で、分かった事が。
慣れている分、ストレス0!!
レベル上げると出来なかった、ギリギリの戦闘が存外楽しい!!(レベルダウン欲しいっすわ)
最初はこうだったなー。楽しかったなー。とか思いながら。
でも結局は惰性になってしまうと思って、謎の喪失感。
だからちょっと縛りを設けて楽しむ事にしました。