【1】隕石と日常
ーー世界の終わりまで1週間を切りましたーー
テレビをつけると男性アナウンサーが淡々と言う。
決してドラマのシーンや映画のシーンでの言葉ではない。実際に世界が滅ぶ。と政府が発表したのだ。
それもどデカい隕石が新幹線並みの速度で向かってきているらしい。
隕石を壊せばどうにかなるだろうという人々の期待は泡となって消えた。
不運なことに隕石が大きすぎて隕石を壊したとしても必ず破片が地球にまで届き、地球が滅ぶのだ。
隕石から逃げる為に宇宙へ逃げ、火星等に移り住む事も計画されたが、地球が滅ぶ余波にて太陽系全てに影響が及び、とてもじゃないが人の住める環境では無くなる事もわかってしまった。
宇宙船に乗り、宇宙に逃げたとて燃料が足りなくなり、どの道詰む。
どう足掻こうが人類は、滅ぶことが確定していた。
実は世の中に混乱が起こることは予想され、隠す事も案としては出てたのだが、国民の知る権利を優先し、1ヶ月前に発表された。とアナウンサーが伝えていた。
しかし、俺には関係ない。世界が1週間で終わろうが終わるまいが、俺は1年前に医者から余命宣告されてるんだ。どうせ死ぬし、隕石でみんなも死ぬなら、むしろ嬉しいまである。
だから俺は世界が終わると発表される前とほぼ同じような生活をしていた。
「い〜においだ。」準備していたコーヒーをいれる。
そしてイチゴジャムを塗っておいたパンがトースターから焼きあがったので手を火傷しないように気をつけてお皿に取り出した。
カリッとしたパンにちょうどいい甘酸っぱいイチゴジャムが最高に合う。甘くなった口をコーヒーでリセットし、またトーストを味わう。
朝はやっぱりこれじゃなければダメだなぁ。
最後の一口のコーヒーをすする。
ーー私も、今日にてテレビに出るのは終わります。皆さん。ありがとうございました!ーー
号泣しながらスタッフみんなでスタジオを去るところが映される。そして、いよいよカメラさんも居なくなったのか、映像が切られた。
「この番組ももう終わりかぁ。他のチャンネルももうあとひとつしかやってないしなぁ。」寂しさから独り言ばかりが漏れ出る。
「そういえば。」
昨夜でもう酒が切れていたのだった。
「買いに行くか。」
世界が終わるというのに財布を持って近場のスーパーに行くために外に出る準備をする。
「あぁ、危ない危ない忘れるところだった」猟銃を担ぐ。
そして一昨日洗って乾かしてあったまだ乾ききっていないお気に入りの靴を履き、愛車であるバイクに跨る。
俺が住んでいる場所は少し田舎気味のところだから近場のスーパーと言ってもバイクに乗る必要があった。
排気ガスの匂いと草木の香りが混じる空気を切って走るのが最高に生きてるって、そう感じる。
鼻歌を歌いながらバイクで気持ちよく走っていたら道の真ん中でうつ伏せに倒れている人がいた。