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ドラ姫様が往く!!  作者: Mr.B
森の住民達
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あの娘は怖がり

賑やかになってきました。

 レイブラン、ヤタール、フレミー、ラビック。

 彼等が森で有名だというのなら、以前レイブラン達が言っていた者達、おそらく"角熊"くん、"老猪"、そして"蜃気狼"ちゃん。この三体も当然、有名なのだろう。


 「レイブラン、ヤタール。君達が以前言っていた他の動物達も相応に有名なんだね?」

 〈そうよ!熊には誰も勝てないし、狼は縄張りが広すぎるのよ!〉〈猪は色んな所を走っているのよ!でも最近は姿を見ないのよ!〉

 〈ノア様は森の強者達皆をこの場所に集めるのですか?〉


 ラビックが訊ねる。私としては、私を頼ってくれる森の住民達は皆、拒むつもりは無い。

 ただ、この森の住民達が互いにどう思うかは別の問題だ。


 ヤタールはここに住む者は、私の役に立つものでなければならないと言った。納得がいかないのだろう。彼女にとって、私の力の恩恵をただ受けるだけ。というのは。


 「私としてはね、誰であれ、森の住民であるなら、拒むつもりは無いんだ」

 〈それでは駄目よ!森が駄目になってしまうわ!〉〈寄生は駄目なのよ!堕落するわ!〉

 〈ノア様。ノア様ならみんなまとめて面倒を見て、世話をすることが出来ると思うよ。だけど、何もせずにそれを享受する行為は寄生と変わらない。共生と寄生はまるで別物でしょ?〉


 手厳しいな。いや、違うな。私が甘いのか。

 私に頼る者を私が制限なく甘やかせば彼等は堕落し、それが森を駄目にする、と。


 それは、良くないな。森にとって害になる事を、私は良しとしない。

 そうか。森の住民だとしても、そして、私自身も、自覚せずに森にとって害になり得るのか。


 気を付けないとな。それに、フレミー達には感謝しないと。


 「私は、森の住民達に、優しくしようとしていた。だけど、それは優しさではなく、ただの甘やかしだったんだね。そして、それが森を駄目にする。フレミー、レイブラン、ヤタール。それに気づかせてくれてありがとう」

 〈お礼を言うのは私達だわ!〉〈いつも美味しいもの有難う!〉

 〈どういたしまして。でも、彼女達の言う通り、お礼を言うのはこちら側。私達を受け入れてくれてありがとう〉


 互いに、礼を言い合う。なんだか少しむず痒いな。と、そうだ。女性陣だけで盛り上がってしまったが、結局ラビックの質問に答えていなかったな。


 「ないがしろにして済まなかったね、ラビック。今の所の目標として、結果的にそうなる。といったところだよ」

 〈私達が勧めたのよ!〉〈ノア様の配下に相応しい奴を教えたのよ!〉

 〈私の事は教えなかったみたいだけどね、貴女達〉

 〈そういった事情でしたか。反対どころか、私も推奨いたします。この森の強者がノア様の元に集まれば、森の秩序もより盤石になるでしょう〉


 森の秩序、か。

 私がいつぞやの雨雲に対しての感情も、それなのだろうね。

 森に害を与えることを良しとしないこと。つまるところ、外部から森の秩序を乱す者を、敵として見ているのか。

 それが事実かどうかは、今は置いておくとしよう。今は、残りの者達についてだ。


 「さて、私はレイブラン達が勧めた者達を全員ここに誘おうと思う。誰からが良いかな?要望があったら教えてほしい。」

 〈狼がいいわ!猪は場所が分からないもの!〉〈狼よ!アイツ臆病だから早めに配下に加えた方が良いわ!〉

 〈誰からでもいいと思うよ?この森に生きている以上、森の掟に従わないものは居ないもの〉

 〈私も、誰からでも構わないかと。ですが、猪殿の行方が定かではないのであれば、二択になりますね〉


 と、すれば、次に誘いに行くのは"蜃気狼"ちゃんか。


 「それなら、狼から誘いに行こうか。あの娘がいた辺りには果実が無いから、こっちで採ってから会いに行くとしよう。みんなは一緒に来るかい?」

 〈私たちは行くわ!あの辺りなら案内は任せて頂戴!〉〈もちろん行くわ!アイツの居場所はバッチリ掴んでおくわ!〉

 〈ごめんね。付いていきたいけど、まだやりたい事が終わっていないの〉

 〈ノア様の移動方法ですと、私では足手まといにしかならないでしょう。この地にて鍛錬を積もうと思います〉


 各々の答えが帰ってくる。そういえば、フレミーはやりたい事があると言っていたな。今なら、聞いても良いだろうか。

 そしてラビック。済まない。トラウマを与えてしまっただろうか?それはそれとして、君は本当に真面目だね。


 「分かったよ。所でフレミー。やりたい事って教えてもらうことは出来る?」

 〈ごめんね。今はまだ秘密にしておきたいの。でも、きっとノア様は喜んでくれると思うよ〉

 「そういうことなら、期待しておくね。それじゃ、もう暗くなっているし、寝るとしようか。ラビック、君も寝床に来るかい?私やレイブラン達も一緒になるけれど」

 〈よろしければ、ご一緒させていただきたく存じます〉


 それなら、皆で寝るとしよう。今日はもう遅い。天井に張った巣に戻ったフレミー以外を寝床へ移し、私も寝床に身を預ける。


 体中にフワフワやモコモコ、フサフサな感触がして、即座に意識がまどろむ。そのまま、意識を手放して眠りについた。



 頬を押し付けられる感覚。そして角を引っ張られ、頭をつつかれる感覚。知らない感覚が一つあるな。


 〈起きて頂戴!ノア様!朝よ!いい天気なの!〉〈狼に会いに行きましょ!でもその前に"死者の実"が食べたいわ!〉

 〈ノア様、日が昇りました。その、何というか、彼女達の起こし方は……〉


 頬を押して私を揺すっていたラビックが、レイブラン達の私の起こし方にかなり引いている。

 気にしなくていいよ。それぐらいやってもらわないと目が覚めないからね。


 〈おはようノア様。悪いけれど森へ行ってくるね〉

 「みんなおはよう。フレミー。あぁ、ちょっとだけ待って。…はい、これ持って行って。…はい、みんなもどうぞ」


 朝の挨拶をしたら、直ぐに窓から森へ向かおうとしたフレミーに切り分けた果実を渡した後、他の皆にも均等に配る。レイブラン、ヤタール。お代わりは無いからね?


 「レイブラン、ヤタール。果実を食べ終わったら、早速狼の所へ行こうか」

 〈分かったわ!今回も案内は任せて頂戴!〉〈いつも通り美味しいわ!アイツの居場所はもうバッチリよ!〉

 〈吉報をお待ちしております〉


 昨日に続いて今日も事前に動いてくれていたようだ。本当にありがたい。二羽を抱き寄せて撫でておく。


 ひとしきり二羽を撫でた後、レイブラン達が以前彼女達に出会った方角へ飛び去って行く。

 それじゃあ、"蜃気狼"ちゃんの所まで行こうか。おっと、果実の回収もしておこう。"蜃気狼"ちゃんは沢山食べそうだし、3つ持って行くとしよう。



 "蜃気狼"ちゃんの縄張り近くに着陸する。

 レイブランとヤタールが一定の場所を綺麗な円を描くように飛んでいる。つまり、君達の描いた円の中心にいるってことで良さそうだ。


 さて、相手は狼だ。当然、嗅覚も相当なものだろう。

 私は『臭いを消す』、と強く意識し、その意思をエネルギーに乗せた。

 意思を乗せたエネルギーを、果実を含めた私の全身に纏わせる。これで、私の体臭を誤魔化せればいいのだが…。


 三百歩ほど歩き、"蜃気狼"ちゃんの縄張りに入ってから少し時間がたった。

 今の所、彼女に感づかれてはいないようだ。彼女の方からこちらに近づいてくる気配はない。このまま歩を進めよう。


 さらに二百歩ほど歩いたところだろうか?この辺りが、レイブランとヤタールが示した場所だ。


 一見何でもない、先程と変わらない景色の筈だ。しかし、何もないはずの場所から、明確の思念を感じ取れる。独り言。というやつだろうか?


 〈どうしよう、どうしよう。ボク、"アイツ"に殺されちゃうのかなぁ…?嫌だよぅ。死にたくないよぅ。怖いよぅ。何で捕まえることが出来るんだよぅ。怖いよぅ…〉


 ………物凄く怖がってる。この娘が言っている"アイツ"って私の事だよな?どうやら相当なトラウマを与えてしまっていたらしい。


 あまり脅かすのは可哀そうだし、真正面から声を掛けるとしよう。


 「こんにちは。まずは話を聞いてくれるかな?」

 〈ぅぎょぅああああああ!!!でっでっででっでっででっ出たぁぁぁああああ!!!!!〉


 そんなに驚くことないじゃないか。

声に出してたら、いつぞやのクシャミより音が大きいです。

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