のんびり王都観光
残りの滞在期間を楽しみます。
ヴィルガレッドとはまだ沢山話がしたいし名残惜しくはあるが、ひとまずはティゼミアへと帰ろう。
「そろそろ今寝泊まりしている場所に帰るとするよ。今度はヴィルガレッドの住処まで会いに行く事になると思うけど、構わないかな?」
「好きにせい。そなたならば、余の住処にも容易に辿り着く事が出来ようものだしな。そもそも、来るなと言ってもそなたは来るだろう。」
「行っては駄目なのかい?」
「そうは言っておらぬ。そなたを止められる者など、誰もおらぬと言う話よ。」
「非道いな。拒絶されれば無理に近づくつもりは無いよ?」
「ドラゴンらしくないのぉ。それでは逆に訝しがられるぞ?ドラゴンであるのならばある程度は無遠慮であるべきだ。そういうものだと認識されておるからな。余計な気遣いは不要な警戒心を煽るだけだ。」
「それは人間達から?」
「あらゆる生物からだ。その認識は我等ドラゴン自身も変わらぬ。」
無遠慮、ねぇ。それが人間達からドラゴンが傲慢だと言われている理由の一つなのかもしれないな。
まぁ、無遠慮に生きるのは私の情報を、正体を公表した後だな。今は人間として活動しているのだから、それなりには周囲に気を遣って行動しないと。
「それは追々ね。じゃ、また今度沢山話をしよう。またね。」
「うむ。」
ヴィルガレッドに別れを告げ、彼に見送られながらその場から飛び去る。今度はいつ彼に会いに行こうか。案外、すぐに会いに行く事になるかもしれないな。
正直に白状すると、"楽園"の外で一番親しみを覚える事の出来た相手なのだ。彼とは今後とも仲良くしていきたい。
ティゼミアの城門が見えてきたな。そろそろ少し離れた場所で降りて、翼と角を仕舞うとしよう。そこからは軽く走れば十分城門を閉じる時間に間に合う筈だ。
城門に到着すると、マーサが出迎えてくれた。が、彼女は目を丸くさせて私を凝視して固まってしまっている。
「マーサ、ただいま。固まってしまっているけど、どうしたのかな?」
「・・・・・・。」
反応が無い。一体どうしたというのだろうか?マーサの目の前で手を振ってみても反応が無い。心臓は動いているの生きてはいるのだが、何かに対して物凄く驚いたようで、心ここにあらずと言った感じだろうか?
ふむ。ならば、多少強引にでも意識をこちらに向けてもらうか。門番が放心してしまうのは拙いだろうからな。
彼女の両頬を軽く摘まんで、ぐにぐにと引っ張ってみる。
「マーサー。帰って来たよー。」
「ふぎ・・・ふぎゅ・・・ふgっ!?い、痛たたたっ!痛いですっ!?な、何なんですかっ!?」
「聞きたいのはコッチの方だよ。ただいま、マーサ。門番が放心して固まってしまうのは、流石にどうかと思うよ?」
「っ!?ノ、ノア様っ!?お、おおぉお帰りなさいませっ!!」
「待って待って待って、何をしようとしてるのさ。」
意識を取り戻したのは良いのだが、私に話しかけられたと分かると、マーサはその場で跪こうとしてしまったので慌てて彼女を制止した。
と言うか何故私の事を様付で呼ぶんだ。いつも通り"ノアさん"って呼べばいいじゃないか。
「何を、と言われましても・・・!その、今のノア様の御姿はあまりもこう、高貴な御方の気配が強すぎて、畏まらずにはいられません・・・!」
「私の姿が高貴って・・・あ゛っ・・・。」
しまった。翼や角は体内に仕舞ったが、今の私の服装はフウカが最高傑作と言うほどの見事な衣装だ。この姿は間違いなく今朝マーグの宝石店へ向かった時の服装よりも強烈なオーラを醸し出している。
何せ繊維の一本一本が全てフウカの魔力で生み出された糸だからな。素材からして人間達が用意出来る物の中で最上級中の最上級の品なのだ。
マーサが畏まってしまうのも当然だったわけだ。ただ、彼女が私を様付で読んだ理由はそれだけではなく、私がルグナツァリオの寵愛持ちだった事も理由の一つだったのだ。どうやらいずれかの五大神の寵愛を持つというだけでも、教会に関係なく敬われるらしい。
私がこの服装のまま街の中に入れば、確実に大騒ぎになる事間違いなしだ。街に入る前に普通の服に着替えておこう。後、フウカには破いてしまった服の分も含めて普通の服を用意してもらうように頼んでおこう。
「うわぁ・・・『影幕』で姿を隠せるからって、大胆な事しますね。」
「こうでもしないと間違いなく大騒ぎになるからね。ああいう格好は普段はするべきじゃないって、改めて痛感したよ。」
「ですよ。そろそろ城門を閉めます。どうぞ、街へお入りください。」
「ありがとう。」
その後はいつもよりかなり遅い夕食を取ってから風呂に入り、果実を食べたら早々就寝につく事にした。時間が時間だったので図書館に通っている余裕が無かったのだ。
そう言えばヴィルガレッドは甘いものはイケる口だろうか?
本来の大きさでは楽しめないだろうが、小さくなった時の彼ならば、家の皆が"死者の実"と呼ぶこの果実を問題無く楽しめると思うのだ。彼が甘いものを問題無く食べられるのなら、今度会う時におすそ分けするのも良いかもしれない。まぁ、その際には小さくなってもらう必要があるけど。
日が変わって25日。冒険者達への稽古や学院の生徒達への授業はあるが、ようやくゆっくりとこの街を観光できる。色々なものを見て回ろう。やはり本による情報収集だけでなく、実際に見て触れてみないとな!
その日からの私の自由時間は、主に職人街や錬金術関係の施設に足を運ぶ事が多かった。私が人間達に求めているのは、知識だけでなく技術もだからな。
宝石や貴金属と言った光物だけでなく、人間達の工芸品などは是非とも目にしておきたかったというのもある。
だが、まず私がやった事はやはり新しい尻尾カバー作りであり、それ用の材料集めだ。何時までも尻尾の先端に『岩刃』を掛けておくわけにはいかないからな。可能な限り人間達の扱う中でも品質の良い木材と蔓を探す事にした。
だが、前と同じデザインでは少し味気ない。どうせ新たに作るのだから、以前のものよりも良いものにしたい。
ここは材料を追加して花も加えてみる事にしよう。淡い色彩の花と鮮やかな色彩の花、両方だ。バランスよく並べてアクセントをつけるとしよう。
購入した素材はどれも"楽園浅部"由来の品々だ。
正直、最初に尻尾カバーを作る際は"楽園"由来の品を使うつもりは無かったのだが、人間達が扱うのであれば出自を疑われる事も無いと考え、思い切って使用させてもらう事にした。
家に帰って、"楽園浅部"の住民達が謁見に訪れた際、彼等がこの尻尾カバーを目にした時にどんな反応をするか少し気になるが、家では尻尾カバーをつけるつもりが無いのだ。気にしない事にした。
そうして完成した新しい尻尾カバーはとても華やかで、我ながらとても美しい仕上がりになったと思う。装着した感触も問題無い。
以前の尻尾カバーよりもかなり派手になってしまったものの、私の感覚で言えば許容範囲内だ。少々目立つが、重宝させてもらうとしよう。
尻尾カバーを作り終えたら次はいよいよ工芸品巡りだ。本で目にしたものはどれも興味深い柄や模様が描かれたり彫り込まれていたりしたのだ。実物を目にするのが楽しみである。
実際に目にした工芸品に描かれたり彫り込まれたりしている絵柄や模様は、どれもとても繊細で、見ているだけでも十分楽しむ事が出来た。
中には強い思いを込めて作られた物もあったようで、そういった品には魔力とはまた違った、何処か惹かれるものを感じ取る事が出来た。光物以外の美術品と言うのも、良いものじゃないか!いくつか購入しておこう!
そして錬金術だ。私は大抵の事は魔法や魔術で出来てしまうため、薬品という物にこれまで一切触れて来なかった。
薬というものは私には必要ないものかもしれないが、私の周りの者達がそうとは限らない。それに万が一の事態に備えて、いくつか用意しておいた方が良いと思ったのだ。
知識自体は本を読んで以前から得ていたが、やはり実際にこの目で見てみたかったのだ。
何とも有り難い事に錬金術の学び舎がこの街には存在していて、有料で簡単な錬金術の体験をさせてもらうサービスがあったのだ。そうと分かれば居ても立っても居られない。早速体験させてもらう事にした。
結論として、錬金術とは非常に奥が深い技術であり、その気になればありとあらゆる物質を生み出す事の出来る、非常に夢のある技術だと判断した。
そう、ありとあらゆる物質だ。石や金属と言った地面に由来する無機物ならば『我地也』で十分だが、有機物由来の素材なども生み出せる技術と言うのであれば、錬金術の有用性は言わずもがなだ。今後も真面目に勉強して行こう。
それから、宝石店で口にした菓子と紅茶を取り扱っている店にもそれぞれ顔を出した。どちらの店の店主も私がルグナツァリオの寵愛を受けている事を知る前にマーグから私の事を聞かされていて、私が訪れる事を心待ちにしていたのだとか。
菓子屋では宝石店で食べたフィナンシェとミハイルが一人で食べようとしていたパウンドケーキ、それから店主からの薦めでアップルパイなる菓子を購入させてもらった。
小麦粉を材料にした生地に砂糖漬けにしたアップルなる果実を詰め込み、焼いた菓子だ。試食させてもらったが、非常に美味かったため、家の皆のお土産用にも少々多めに買わせてもらった。
ちなみにパウンドケーキに関しては、自分達用に加えてミハイルへの差し入れ用でもある。グリューナに切り分けられて私達に提供されていた光景を見た際の彼の表情は、何とも言えない哀愁を感じられたからな。
それに、彼にもそれなりに世話になったのだ。労いの意味も込めて購入させてもらった。
紅茶の方は宝石店で口にした"ウーヴァ"だけでなく、一般庶民に親しまれているような品から王侯貴族が好むようなものまで一通り買わせてもらった。
茶葉は他の品に比べてかさばらないという理由もあるが、私は自分が思っている以上に紅茶を、と言うかお茶というものを気に入ったようだ。
この店では取り扱っていないが、他の国では紅茶以外のお茶もあるらしい。入れ方もまた紅茶とは変わって来るらしく、今から口にするのが楽しみだ。
それと、折角なのでプロが入れる紅茶というものを実際に見学させてもらった。
この店は茶葉を取り扱う店でもあるが、実際にお茶を入れてくれるサービスもしていたのだ。じっくりと観測してその技術を取り入れさせてもらうとしよう。
流石はプロが入れたお茶だ。これまでで最もいい味だった。
二つの店を後にしたら早速ミハイルの元に訪れて差し入れを渡そうとしたのだが、彼の部屋に入るなりいきなり跪かれて様付で挨拶されたうえ、例の騒動の件で感謝の言葉を送られてしまった。
聞けば、既にこの街で私の事を知らない者は誰もいないそうだ。そしてその扱いは一国の姫と同等の扱いを受ける事になるらしい。
これが新聞の力か。情報伝達速度が尋常じゃないな。たったの2日でコレとは。
それにしても、いくら称号に"姫君"と言う単語があるからと言って、扱いまで実際の姫の様な扱いをするのはどうなのだろうか?
その辺りをミハイルに訊ねてみたら、五大神の寵愛を持ちながら最上級の"一等星"級すら上回る実力を持った冒険者など、これまで一度も確認されておらず、扱いに非常に難儀したとの事。
では、称号にも含まれているからという事で私の事を"姫"として扱うように国王が国中に知らせるように命じたらしい。
これは、ミハイルに今までと同じように対応して欲しいと言っても無理そうだな。何せ国王が私の事をそう扱えと言ったのだから。
この国に仕えている騎士が国王の意見に背く事は出来ないだろう。
余計な事をしてくれたものだ。顔を出すたびに一々畏まられたら、反応に困るじゃないか。慣れるまでには時間が掛かりそうだ。
次にイスティエスタへ訪れて親しくなった人達と出会ったら、どんな反応をされるのだろうか?少し気になるし、今後必ず顔を出すので、楽しみでもある。
事情は理解したのでミハイルに差し入れを渡すと、先程以上に感情を込めて感謝されてしまった。よっぽどあのパウンドケーキが好きだったんだな。
ミハイルの稼ぎならば問題無く購入できる筈なのだが、何とあのパウンドケーキはかなりの人気商品らしく、開店早々売り切れてしまう事が多いのだとか。
騎士の仕事で忙しいミハイルでは購入が難しい、というわけだ。加えて彼は独身だからな。身内に頼んで購入してもらう事も出来ないのだ。
ならば休みの部下に頼んで購入してもらっては、と聞けば、自分が甘いもの好きなのは部下には内緒にしているらしい。
威厳を保つためなのだそうだが、なんとも難儀な事である。
ミハイルに別れを告げてマコトの所に顔を出せば、やはりと言うか何と言うか、予想通り例の騒動の件で再び感謝の言葉を伝えられてしまった。
流石に彼からは様付で呼ばれる事は無かったが、それでも今まで以上の敬意が伝わってくる。
それは私が天空神の寵愛を得ているからではなく、迅速にこの国の問題を解決する事に貢献した事や、更にその中で冒険者達の面倒を見ていた事が原因らしい。
稽古を受けた冒険者達の実力が、目に見えて向上しているという報告が次々に挙がってきているのだ。聞けば冒険者達は口をそろえて[姐さんのおかげだ]と言うらしい。
「おかげ様で、今やこの街に所属するほとんどの冒険者がランク以上の実力を身に付けているんです!感謝の言葉もありませんよ!」
確かに私が稽古をつけたが、強制ではないんだ。実力を得たのは当の冒険者達が相応に正しい方向で努力をしたからに他ならない。何でもかんでも私のおかげにして自分達の頑張りを無下にしないように注意しておこう。
だからな、私に対して祈るのは止めないか?今まで以上に信仰心がエネルギーとして送られてきてしまい、扱いに困るんだが?
学院の生徒達への授業も至って順調だ。例のもう一人の臨時教師もいなくなり、トラブルの原因も無くなった事で学院内での行動が非常に快適となっている。
生徒達の成長も冒険者達に劣っていない。シャーリィは言わずもがな、その他に優秀だと思ったクラウス、テミー、ディンの三人も授業を行うたびにメキメキと実力をつけている。彼等ならばある程度ルールを設けた一対一の戦いならば、"上級"冒険者をも制するかもしれない。彼等もシャーリィのように将来は騎士を目指すのだろうか?
「勿論ですっ!この国が抱えていた問題が解消したとはいえ、大きな痛手を負っている事には変わりがありませんからっ!」
「シャーリィは絶対カークス騎士団に入ろうとするだろうし、アイツあんな性格じゃないですか。」
「やっぱ、ああいう奴にはブレーキ役がいてやらないとな!ってなわけで、俺達も騎士を目指しますよっ!」
ふむ。彼等の思いは皆一つのようだ。シャーリィについて語る彼等からは、僅かにだが恋慕の感情が読み取れる。
「貴方達、ひょっとしてシャーリィに木剣で返り討ちにされた?」
「「な、何で先生がそれをっ!?!?」」
「あ、あの、恥ずかしいので、その話はあまり・・・。」
ああ、やっぱりそうなのか。一度は敗れ去った想いでも、彼等は諦めてはいないようだ。
「私が知っているのは、彼女の母であるアイラから教えてもらったからだね。」
「は、恥っずっ!メチャクチャ恥ずかしいぞコレェ!」
「ぐぅ・・・っ!俺の心に大ダメージ!」
「い、今はまだ届きませんが、いつか必ず届かせて見せますよ。三人共、諦めたわけではありませんから・・・!」
「それなら、かなり頑張らないとだね。間近で見ている貴方達なら、シャーリィの成長速度も分かっているだろうし。」
「「「勿論っ!」」」
先程まで自分達の過去に悶絶していたが、それは彼等がまだシャーリィの事を諦めておらず、いつかは振り向いてもらいたいと思っているからだろう。
異口同音に答えた彼等の瞳には強い闘志が宿っていた。
午後の授業が終わった後は相変わらずシャーリィが満面の笑みで私の所に来る。何でもいいからとにかく私の事を知りたいようだ。インゲインの件で迷惑をかけたというのに、どういうわけかかなり慕われてしまったようだ。
「いやいやいや、先生のおかげで私短期間でメチャクチャ強くなれてますからね!?メッチャ感謝してるんですよ!?」
「他の生徒にも同じ事をしているんだ。貴女が強くなれているのは、紛れもない貴女の才能だよ。その点は自覚を持つべきだね。」
「グリューナさんからもそう言われましたけど、グリューナさんにも先生にも全然敵わないからなぁ・・・。自覚を持てって言われても・・・。」
「比較対象を私達にするからだよ。比較をするなら同年代の者達や自分と同じ立場の者達とするべきだよ。」
「むぅ・・・それはそれで差があり過ぎて実感が沸かなくて・・・。」
難儀なものだな。自分の成長はしっかりと感じ取れているというのに、それが優れた才能である事の自覚が持てていないとは。
ああ、そうだ。私もシャーリィから教えてもらいたい事があったんだ。
「シャーリィは剣を通じて相手の事が分かるようだけど、アレはどうやっているのかな?私には出来ない事だから、可能ならば教えてもらいたいのだけど。」
「ええっ!?そ、そんな事言われても、私も感覚的になんとなく分かるってだけですから、教えるなんてとても無理ですよぉっ!・・・お父さんなら、教える事が出来たのかなぁ・・・。」
むぅ・・・。感覚的な物では流石に教えてもらう事は出来ないか。
いや、そんな事よりも少し悪い事をしてしまったか。場の空気が少々湿っぽくなっている。
マクシミリアンがシャーリィの事を溺愛していたように、シャーリィもまた父親を強く慕っているようだからな。
彼が亡くなってまだ二ヶ月程度。乗り越えるにはまだまだ時間が必要か。
「彼にそれが出来ていたのなら、カークス騎士団員は全員出来る事になりそうだね。彼は部下の面倒見もかなり良かったようだし。」
「あっはい。全員出来ますよ?だから、お父さんがみんなに教えたのかなって思って・・・。」
「・・・そう・・・。」
天才は伊達ではなかったか。冗談で言ったつもりだったのだが、まさか本当に出来るとは、人間と言うのは本当に面白い生き物だな!
「シャーリィは、やっぱりカークス騎士団の団長を目指すのかな?」
「はいっ!ゆくゆくはお父さんみたく巓騎士になって、お父さんがそうしていたように、お母さんやこの国を守りたいです!」
「頑張るといい。私が思うに、貴女ならマクシミリアンを越えられそうな気がするからね。」
「本当ですかっ!?」
「あくまでも感覚的に、だけどね。私は彼の実力を正確には知らないから。」
「それでも、先生にそう言ってもらえるのはすっごく嬉しいですっ!私、これからもメチャクチャ頑張りますねっ!」
「メチャクチャ頑張るのは良くないよ。適度に体は休めなさい。」
「はいっ!」
シャーリィの目は非常に輝いている。これは、やらかしてしまっただろうか?今後一層彼女は努力を重ねて実力をつけていきそうな気がする。
クラウス、テミー、ディン、済まない。シャーリィを振り向かせる難易度が、急激に上昇してしまったかもしれない。
そんなこんなで29日までの4日間、実に有意義でゆったりとしていながらも毎日が新鮮な気持ちで生活する事が出来た。
たったの4日間、されど4日間。この4日間だけでも人間の生活圏に来てよかったと思えるぐらいには充実した日々を送る事が出来た。
そして30日。いよいよ滞在最終日である。世話になった者達や気に掛けている相手に挨拶をして、"楽園"に、家に帰るとしよう。
お別れの際にはしっかりと挨拶をして帰ります。




