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第十五章 ナメてた。全くと言っていいほどに。(中)

すみません…月一言うてたのに月をまたいでしまいました…。



 サイラスがその急報を受け作業場に駆け付けたのは、綾子が倒れてから10分ほどあとのことだった。

 見るとそこには床に仰向けで横たわる綾子。そして右側には必死に術を展開するライラと、向かいには……おそらく分身体だろう。ポルタ村で見た時よりはるかに幼い姿のトト様とネネ様がおられ、その補佐をしているようだった。床には複雑な紋様の魔法陣が広がり、青白い光を放っている。ときおり、そこからギャリンギャリン……と金属から火花が散るような、ものすごい音がしていた。

「来たか、サイラス」

 ライラは目もくれぬまま、サイラスに声をかけた。

「一体何が」

 と聞くサイラスに、

「くそ……私としたことが……」

 ライラ、全く答になっていない。

「落ち着け、ディズリーの娘よ。心を乱せば、アヤコの魂を見失うぞ」

 少年の姿のトト様が声をかける。

「そうじゃ。そなたはようアヤコを守った……しかし魔王の血族は伊達ではなかったのじゃ。あ奴は魔王の手で屠られたその刹那……火事場の馬鹿力が出た。結果そなたの強力な結界にひびが入り、侵入を許した。それだけのこと」

 ネネ様も綾子の胸元から手を放さず、術の展開を助けている。そして、サイラスに向かいこう言ったものだ。

「サイラス。時間が無い。こちらへおいで……その陣は踏んでもかまわぬ。」

 サイラスは意識の無い綾子の元へと向かった。






 ネネ様の口から語られたのは、予想通りだった。


『アヤコはフリードリヒの魂の残滓によって魂を引き抜かれ、死後の世界へと連れていかれようとしている』


 最悪だ。


「安心いたせ。今、三人がかりで引き戻しをかけておる。それにアヤコも必死で、奴と戦っておる。あとは、そなたが頼りじゃ。」

「俺が……」

「うむ。これを見よ……アヤコは今、この世界に逃げ込んでおる。全くの異世界でな……探し当てるのに苦労をしたわい」

 言うとネネ様は綾子にかざしていた手を、上に返した。

 すると、そこに大きな水晶玉のようなものがあらわれた。ふわふわと浮いている。

 その中に、こちらの光景ではない全くの別の映像があらわれた。

 金属の箱に大量のの人間が乗せられ、運ばれている。道と言う道は黒いもので慣らされ、そこをこれまた変わった形をした金属の箱が沢山、走っていた。馬車の比ではない。とんでもないスピードだった。

 ライラには、全く見たことのない光景だった。

「これは、アヤコが元いた世界じゃ。この子が元々別の世界からここに落ちてきた、というのは聞いておろう?」

「はい……トト様が、教えてくださいましたね」

()()()()()()()()()()()()()()()()

「!!!」

 サイラスの表情がまるで、絵に張り付いたかのように固まった。

「あの子はあ奴からの精神攻撃に耐えきれず、とっさに元いた世界に逃げ込んだようじゃ。そして、この『元いた世界』へは、『元いた世界にかつて居たことがある者』にしか、行くことは出来ぬ。つまり……そなたしか行くことは出来ぬのじゃ」

「サイラス、お前……そうだったのか。」

 ライラは思わず、声をかけた。

「……。」

 サイラスは、うなだれている。

 すると、ネネ様はそのがっくりとしたサイラスの肩に手を置き、こう言ったものだ。


「今度こそ、救い出しておいで。」


「……はい。」


 サイラスは頷いてみせた。






 ふと目を覚ますと、綾子は古びた木製の椅子に座っていた。

 サイラスと住んでいる一軒家だ。()()()()()()()()()()

 目の前にはテーブルと……年のころは同じくらいの女性が一人。金髪ブロンドを三つ編みにまとめているのだが、その色はくすみ、どこかくたびれている。荒んだような印象の女性だ。そしてその隣には4歳くらいの男の子が座って、こちらはつまんなそうに足をぶらぶらとさせている。

 するとその女性がこう言った。「サイラスを返してください。」

「!!」

「この子は私とサイラスの間に出来た子なの。お願い。もうこんなバカげた夫婦ごっこはやめて。サイラスも迷惑がってるわ。」

 見ると、その男の子は確かに女性とは似ても似つかぬような栗色のくせ毛で、温和な顔立ちもどこかサイラスに似ているように思えた。

「第一、おかしいと思わなかったの?貴方。ナスカヴァルに来てからあの人、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私とこの子と、三人イブライムで幸せにやってたのよ。それを貴方が無茶苦茶にして……」

 憎々し気に女性は言った。

 すると男の子がこう聞いてくる。

「ねえ、パパは……?」

「もう直ぐ会えるわよ。この人からママが取り返してあげるからね」

「そっか。じゃあこの人、盗っ人なんだね!」

 男の子は残酷なことを言ってにっこりと笑っている。

 そこへ、扉が開いた。

 仕事から帰ってきた、サイラスだった。

 女性の姿をみとめたサイラスの顔がみるみる、青ざめた。鞄など、どさりと落してしまっている。そして呆然と、こう言った。

「モニカ……なんでここに」

 綾子はその瞬間、悟った。そして。

「この子、貴方の子なの……?」


 と、その時だった。


「だから別れろって言ってんだろこのクズ女!!殺してやる!!!!」


 女が突然金切声を上げてテーブルに乗りあがり、上から綾子に掴みかかってきた。

 もみあいになった。綾子の座っていた椅子が後ろざまに倒れる。そして。



 ガツン。



 後頭部に激しい衝撃が走った。



 うわあああん!!……サイラス、違うのよ、こんなはずじゃ……クズはお前だ!あの時おろせと言ったのに!!ママ!!ママ!!盗っ人のおねえさんから血が出てる!!!こわいよ!!!アヤコ、アヤコしっかりしろ……


 意識が真っ暗闇に呑まれていく。

 その間際。


((これはそなたの、10日後の未来……))




 そんな声がした。




 そして……。




 次に綾子が目を開くとそこは、懐かしい我が家だった。

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