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第61話 歓迎の証

しばらくするとさっきのドラゴンと一緒に、同じくらいの大きさの小さい真っ黒のドラゴンが建物から出てきた。

『まだ他にもドラゴンはいたのか。あれは黒いから違う種類か。』

『主殿。あの黒い者はドラゴンではありません。私と同類の闇属性の者のようですよ。』

『霊獣か?俺には相変わらず霊獣と魔物の気配の違いが分からんよ。』

『話の通じる者であれば良いのですが。キャノンさんのような方だったら私は逃げますよ。』


黒いドラゴンの霊獣は俺達の前に降り立った。

『主殿、こちらの方は久しぶりに酒を飲んだそうで、大変満足していらっしゃるようです。もっと酒が欲しいそうですよ。』

『手持ちがもうほとんどない。契約してくれたら、酒を造ってる所に案内すると伝えてくれ。』

俺は契約魔法使用と念じてみた。

黒いドラゴンの霊獣は考えているようだ。すると大きなグリーンドラゴンが行って来いというような感じで、黒いドラゴン霊獣に頭を押し付けていた。

そして、聞き慣れない低い声が念話で届いた。

『人族の集落に行くのは気が進まぬが、美味い酒の礼だ。しばらく力を貸してやるとしよう。』

『契約してくれたのか。ありがとう。よろしく頼むよ。しかし、ここを離れても良かったのか?あの建物に住んでいるようだったが。』

『構わぬ。昔の人族の建造物を利用していただけだ。このグリーンドラゴンも大きくなったし、もう心配はあるまい。』

『このグリーンドラゴンは何なんだ?魔物にしては妙に大人しいが。』

『グリーンドラゴンは元々穏やかな者が多い種だ。中には例外的に好戦的な者もいるし、ダンジョンなどにいる者は普通に襲ってくるがな。この大きい者はまだ幼かった頃に我が拾って面倒をみてやったのだ。敵意を向けぬ限りは襲ってくることはない。』

『分かった。人間側の偉い人にもここのドラゴンに危害を加えないようにお願いしてみるよ。このままだといつか開拓が進んで、この場所が見つかってしまう可能性があるんだよ。』

『そうしてくれ。この場所はこの者らにとっては住みやすい場所なのだ。』

『そうだ。名前を決めないといけないな。どうするかな・・・』

シュバルツとデュンケルは黒ビールの名前で付けたんだよな。黒ビールシリーズだとポーター、スタウト、ミュンヒナー、うーん、どれも似合わないな。

ドラゴン霊獣は金色の眼をこちらに向けて見ている。シュバルツのような明るい金色の目ではなく、深みのある金色の目だ。この金色はどこかの国の伝統的なあのビールの色によく似ているな。

『よし、お前の名前はウルケルだ。』


ステータス

名前:ルノ

性別:男

年齢:26歳

職業:商人

種族:人間

スキル:忍び足Lv5、気配希薄Lv5、精神耐性Lv4、契約魔法Lv4(契約霊獣『シュバルツ』『デュンケル』『ウルケル』)、筋力強化Lv4、クリーンLv5、暗視Lv5(Lv10:霊獣補正)、隠蔽Lv5(Lv10:霊獣補正)、気配察知Lv5、身体強化Lv5、俊足Lv3、直感Lv3、杖術Lv4、体術Lv4、金属魔法Lv5(Lv10:霊獣補正)、魔道具作成Lv5、引力Lv4、解体Lv2、危険察知Lv5、回避Lv3、料理Lv2、闇属性魔法Lv4(Lv9:霊獣補正)(中級)、斥力Lv3、念動力Lv4、器用Lv4、方向感覚Lv4、地図作成Lv3、強打Lv4(打撃武器専用)、跳躍Lv3

固有スキル:潜影Lv4(Lv9:霊獣補正)、障壁Lv4(Lv9:霊獣補正)

称号:次元の狭間を超えし者、霊獣の契約者


新たな霊獣補正はなしか。でもスキルレベル結構上がってるな。ダンジョンで狩りまくったからなあ。Lv5の壁を越えるスキルが果たしてどれだけあるか。


その後は遺跡跡を見て回ることにした。綺麗な建物だが、材質がよく分からない。形も整っており技術の高さが伺える。ウルケルによると百年以上前にここに来た時から既に廃墟だったらしい。こんな森の中にどうしてこんな建物を建てたのだろうか。中央に大きな建物があり、その周りにいくつか小さい建物がある。集落と言うには建物が少なすぎる。神殿か、緊急時の避難所か?当時は森ではなかったのだろうか。

建物の中は何もないようだ。家具のような物さえない。

『主よ。こちらに地下への階段があるのだ。』

地下室まであるのか。中央の大きな建物の奥に案内された。

『魔物がいたりしないのか?』

『グリーンドラゴンの気配を恐れてこの辺りは魔物は寄り付かんのだ。』

大きな階段があった。霊獣達も通れそうな大きさだ。

真っ暗だが暗視スキルがあるので、問題なく見える。階段を降りた先には大きな扉があった。すごく重い扉だったが、今の俺なら開けることができた。

部屋の奥には棺のような物があった。しかし、その大きさが普通ではなかった。すごく大きいのだ。そして気付いた。普通の人間が利用するには大きすぎる建物。さっき降りた階段も段差が大きく普通の人間には降りにくいものだった。

『ウルケル、大昔にはこんなに大きな人族がいたのか?』

『我はかなり長い時を生きたが、そのような者は見たことがない。人族の成人は皆、主のような大きさだった。もし存在していたとしたら我が生まれるよりもっと古い時になる。』

『この墓場は古代人のものなのか。すごく貴重な遺跡だな。』

『主殿、ここは墓場ではない。』

『ん?違うのか?そこにあるのは棺だと思ったんだが。』

『その棺は封印スキルが使用された形跡があるのだ。ここには封ぜられた何かがいたのだ。我がここに来た時、既にもぬけの殻であった。』

『封印?そんなスキルがあるのか。封印しないといけないような存在が、封印解いて抜け出しちゃったのか。どこ行ったんだろうな。』

『分からぬ。この世界は長く生きた我でも分からぬことがあるようなのだ。実に興味深い。』


その日の夜はグリーンドラゴンの近くでバーベキューすることにした。ドラゴンの近くは魔物は寄ってこないということなので大丈夫だろう。大量にあるダンジョン産の肉をバーベキューコンロ三台で焼いていく。グリーンドラゴンも欲しそうだったので焼いてあげた。でかい塊のまま表面だけ焼いただけでほとんどレアだけどおいしそうに食っていた。ダンジョン産肉は珍しかったのかもしれない。おかげで肉の在庫が結構減った。やばい、フィデルさんになんて説明しよう。

ネクタルの酒場製のビール樽はもうないので、無限物資の缶ビールを頑張ってたくさん空けた。デュンケルが大きな金属皿をドラゴン数分作ってくれていたので注ぎまくった。

『しかし、本当にこのドラゴン達は無害なんだな。』

『我が危険のない人間は襲わないようにと、幼い頃にマインドコントロールを使ったのだ。ドラゴンは知能が高いから覚えも早かった。元々、温厚な種類のドラゴンだから、放って置いても問題なかったかもしれないがな。』

『俺達はドラゴンを見るのが目的だったから、こんなに間近で見れて良かったよ。』

『念を押して言っておくが、主よ。この者たち以外のドラゴンは極めて危険な存在だ。ドラゴンを見に行くなど正気の沙汰ではないぞ。努努忘れぬようにな。』

『ああ、反省してるよ。見るだけなら大丈夫と思ってたのは甘かったよ。俺達は弱いからなあ。そういえば、ウルケルはドラゴンブレスで攻撃したりできるのか?』

『我はドラゴン型の霊獣であって、ドラゴンではない。ブレスはドラゴン族の固有スキル故、我は使えぬ。我にできるのはシュバルツと大して変わらぬと思ってもらって良い。違いがあるのは飛行スキルくらいではないか?』

ウルケルはまさかの非戦闘員だった。結構期待してたんだけどな。まあ、影空間がもう一つ増えたと思っておこう。ウルケルが入ったらかなりの広さを専有しそうだけど。


その夜、影の中に入るとウルケルが翼を広げ、口を開けたまま固まっていた。

『何やってるんだ?』

『この者がこのまま動くなと言うのだが、いつまでこうしていればいいのだ?』

『ああ、早速作品を作ってるのか。まあ、付き合ってやってくれ。しかし、俺の影の中は狭いからシュバルツの影の中にアトリエを移したらどうだ?』

デュンケルはこれが完成したら一部移動すると言っている。一部じゃなくて全部移動して欲しいんだがな。

今回作っているのは小型の作品のようだ。すぐ出来上がるだろう。おそらく本気の作品はグリーンドラゴンを題材にするつもりだろうな。

『そういえばウルケルの従魔登録はどうするかなあ。登録できたとしても国から目をつけられそうだ。開き直ってこれは霊獣なんですって言うかな。』

『うむ。我が人族の集落を避けていたのも問題を起こさないためだ。過去に結構な騒ぎになったことがあるからな。』

『その時は何しに行ったんだ?』

『もう数百年は前になるか。海を渡りたいと言った人族がおったのだ。背に乗せて海を超えて集落まで運んでやったら騒ぎになっておった。懐かしいものだ。あの時の人族も主と同じ契約魔法の使い手であったな。』

『契約魔法の使い手がいたのか!?数百年前は一般的な魔法だったのかな。今は契約魔法使いだと名乗っただけで鼻で笑われるぞ。』

『いや、霊獣はそんなにたくさんはおらぬから、使い手は昔も少なかったと思うぞ。ただ、あの時の人族は四体も霊獣を契約しておったな。よく見つけたものだ。我とは属性が合わなかったから契約できなんだがな。』

『霊獣四体?それって火と水と風と土の霊獣か?』

『確かそうであったな。主も知っておる者なのか?あの者はとうに死んでおると思うのだが。』

『伝承でその人の物語が残ってるんだよ。でもウルケルは登場してなかったな。』

『語られるようなことは我は何もしていない。背に乗せてやっただけだからな。対価として酒をもらったくらいで、大して付き合いもなかった。』

デュンケルの作品が完成したようだ。途中で何のために作っているのか分かってしまった。

『でも俺達には付き合ってくれるんだろ?俺は語られるような人間ではないが、だからこそお前の力を貸してくれ。』

俺はデュンケルから完成したばかりのウルケルの像を受け取っていつもの作業台に置いた。

『歓迎するよ、ウルケル。お前は俺達の仲間だ。改めてよろしく頼むよ。』


作業台には俺と三体の霊獣の像が並んだ。

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